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25.オリビアを救ってくれ
しおりを挟むオリビアが部屋を抜け出しているとも知らずに、レオは馬小屋にいた。
「気をつけてな。」
馬に乗ったレオにアダムスが声をかける。
「ああ。」
普段、皇太子であるレオが外出することは滅多に無い。
命を守るために、王の間に内側から鍵をかけて籠もっていることが多い。だが、今日だけは、外出せざるを得なかった。
今日は、レオの実の母親であるローラの命日だった。この日だけは、毎日墓参りをすると決めているのだ。
母の墓は、馬を走らせて1時間ほどの小さな丘に立っている。
◇◇◇
お墓にたどり着いたレオはピンク色の花を供え、手を合わせた。
(母上、もうすぐ、貴方のところに行くかもしれません。)
明日、オリビアを城から追い出すと、決めている。どうせ二度と会えないのだから。そんな想いがレオの行動を振り切らせていた。
父はレオに戦えと言った。
だがフローレンスとレオが戦えば、多くの人間が巻き込まれることになる。ジョシュアや、アダムズのような大切な人が命を落としてしまうかもしれない。
(きっと、俺はいなくなるべきですよね。母上。)
もちろん、墓からはなんの声も聞こえない。だが、母は同意してくれるに違いないとレオは信じていた。
ガサッ
手を合わせるレオの背中で、何か物音がした。
(殺気、、、。)
レオは森の中に隠れ、レオの命を狙う何者かに気づかれぬよう右手を剣に添える。
「皇太子レオ!!」
白衣を着た若い男が武器も持たずにレオを睨みつけて叫んだ。
(医者、、、?)
「オリビアの仇!!」
その男は叫び、ゆったりとした動きでレオの顔面を狙う。
「お前は何者だ?」
これまで幾度となく命を狙われてきたレオにとって、その男の攻撃から逃れることは容易なことであった。
「皇太子レオ、、!お前に言うことはない!!さっさと俺を殺して、オリビアのところに連れて行ってくれ!!」
その男はレオを睨みつけて叫ぶ。
(医者、、、。この男が、オリビアを助けてくれた男なのか、、、?)
「殺されたくなければ、俺の質問に答えろ。」
レオは男の腕を片手でねじりあげ、暴れる男を押さえつけた。
「な!!お前の質問になど、答えない!」
気にせず、レオは続けた。
「お前は、最後までオリビアを守ると誓えるか?」
「は、、、?」
予想外の質問だったのか男の力が抜けた。
「どうなんだ?」
白衣の男は戸惑った顔で言う。
「なにを、、言っているんだ、、、?オリビアは死んだんだろ、、、?」
レオは男の耳元に口を寄せた。
「オリビアは生きている。頼むから、お前が救ってくれ、、、。」
◇◇◇
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