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7 聖女なんかじゃないわよ!
しおりを挟む「ヒィナが聖女の力で、ドノバル様を救った、ですって?!」
偉そうに王の玉座に座ったアトラスは私を見下ろしてにやりと笑った。私は両腕を騎士に掴まれ、罪人のように座らされていた。
「ああ。そうだ。ヒィナのお陰で、父は一命を取り留めたのだ。」
意識は戻ったもののドノバル王の体調は戻り切っていないと聞く。それを利用してアトラスが国王代理を続けているのだ。
アトラスは隣で笑うヒィナに軽くキスをした。ヒィナは胸元を大きく開けたピンク色のドレスを着て、自慢げに笑った。
「私自身、私の持つ聖女の力に驚きましたわ。誠心誠意、陛下のお世話をしていただけですのに。」
皆はドノバル王が回復ことが嬉しくて忘れているかもしれないが、これまでヒィナに特殊な力は無かった。
アトラスと組んでヒィナが策を講じたとしか考えられ無かった。ドノバル王は元々風邪一つ引かない元気な方だったのに、ここ半年体を崩されるようになった。それはちょうど、ヒィナが使用人として働き出した時期と重なる。
「納得できないわ!ヒィナに怪しいところがないか、もう一度調べてみるべきよ!!」
「サクラ!お前は俺を侮辱しただけでなく、聖女のことも侮辱するのか?!」
(侮辱、、、。侮辱ですって?)
婚約破棄、その言葉を聞いたとき私の中で何かが壊れるのを感じた。もう、私には何も残らないなら、言うべきことは全部言おうと決めていた。
「私は貴方達がずっと浮気していたことを知っているのよ!!それなのに今更、聖女?!ふざけるんじゃないわよ!」
もう、いいの。この際全部言ってしまおう。私が失った、王妃になるための時間は返ってこないんだろうし。
「アトラス!貴方、ドノバル様が倒れたときも、ずっと笑っていたわよね?!さてはヒィナを聖女に仕立て上げるために、ドノバル様に毒を盛ったんじゃないの?!」
私とアトラスの様子をうかがっていた周りの兵がどよめいた。
「黙れ!!この無礼者め!!」
「貴方こそ、父親の危篤を喜ぶ親不孝者よ!!」
私がアトラスを怒鳴りつけると、なぜかヒィナは高い声で笑った。
「なによ?!」
「アトラス様。サクラは可哀想な人なのよ。アトラス様の優しさで彼女を許してあげましょう?」
「はあ?!」
アトラスはヒィナを撫でるとにっこりと笑った。
「よく聞け!!サクラ。お前とは婚約破棄することに決まった。ヒィナが俺の子供を妊娠したのだ!」
恥ずかしげもなく、アトラスはそう言い放った。ああ!もうよくこんなことが言えるわね!!本当に信じらんないわ!!
「この破廉恥!!愛人が妊娠したから、結婚式の日に慌てて聖女に仕立て上げたんでしょう!」
「この女を地下牢に連れて行け!!!」
抵抗虚しく、私は兵に拘束されてしまった。城の人々は遠巻きに私を見るばかりで、ちっとも助けてくれない。
「みんな気がついて!!その女は聖女なんかじゃ無いわよ!!ねぇ!!」
私は牢屋から必死で叫んだ。誰に何と言われようと構わない。あの女が聖女だなんて、絶対になにかの間違いだ!!
喚き散らす私は醜いんだろうと分かっていたけれど、心の中の怒りを留めることなんてできなかった。"王妃になるため"という、最後の枷が無くなってしまったんだから。
◇◇◇
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