【完結】聖女の妊娠で王子と婚約破棄することになりました。私の場所だった王子の隣は聖女様のものに変わるそうです。

五月ふう

文字の大きさ
8 / 14

8 牢屋生活?

しおりを挟む
(これから牢屋生活ってわけね、、、。)

兵に拘束され、牢屋に連れて行かれる私を城のみんながちらちらと見ていた。みんな、アトラス以外の男と浮気したとでも思ってるんだろうか。

(でも、もう何も構わないわ。)

だって、もう私は終わってるんだから。

「サクラ。」

そんな私に声をかけたのは、レブロムだった。ねぇ、レブロム。貴方がまだ逃げれると言ってくれたときに、逃げるべきだったのかな。最後まで私は馬鹿で、全部を失うまで気づけなかったよ。

「レブロム、、私、もう、全部無くなっちゃった、。」

「いいや。」

レブロムは強く首を振った。

「まだサクラはなにも無くしていない。サクラが残してきたものは、確かにこの城に残ってる。」

「何を言っているの、、、?」

レブロムは私をじっと見つめて言った。

「まだ誰も兄のことを信じていない。皆、兄のことを恐れているだけだ。」

「え、、、?」

「ラビーン城の人間は、誰もサクラが浮気したとは思っていないんだよ。」 

そう言ったレブロムの後ろには大勢の騎士やメイドがいて、私のことを見つめていた。

「どういうこと?」 

「詳しいことは牢屋で説明するよ。」

レブロムがにっこりと笑って答えた。いやいや、笑っていうことじゃないからね?

  ◇◇◇


案内された牢屋を見て、私は目を疑った。

「え、、、?ここは、、、?」

清潔そうなベットに柔らかそうなソファー。広さも私の部屋と同じくらい広々している。さり気なく鉄格子で囲まれているものの、あまりにも快適そうな空間だ。え?なんか、、、ここは牢屋というより貴族の休憩室じゃない、、、?

「サクラのために最高級のベットと毛布を準備した。」

レブロムが自慢げにその牢屋を見ていった。

「ええ?!」

さっから、頭が追いつかないんだけど?私、アトラスに婚約破棄されて不貞を疑われた挙げ句の果に牢屋に打ち込まれるはずだったよね。

「サクラに言われたから、兄上には真実を伝えなかった。だけど、兄上以外の人間にはサクラが何一つ悪くないことをみんなに伝えたんだよ。それと、ついでに兄上の悪行も全て噂で流しといた。」

レブロムが私のために椅子を引きながら、楽しそうに答えました。レブロムの周りにいる騎士やメイドは皆、深く頷いて笑顔で私を見つめた。

「噓、、、!みんな信じてくれたの?」

これから、私は誰からも信じて貰えず一人ぼっちで生きていくんだとばかり思っていた。だけど、城の人達の私を見る目は優しくて、疑問に思っていたのだ。

「もちろんです!サクラ様!」

メイドの一人がはっきりとした口調で言った。大きな目にお下げ髪。確かこの子は先月まで私の世話を担当してくれていたプリンだ。

「あの最低な皇太子の言葉なんて、まともな人間は誰も信じてません!」

「そうなんだ。サクラ。僕がみんなに本当のことを伝える前から、みんなアトラスの言葉を疑っていたんだよ。」

信じられない。嬉しくて、心の中が温かくなるのを感じた。

「なぜ、私のことを信じてくれたの?」

「だって、サクラ様はずっと、皇太子の癇癪から私達使用人を守ってくれていたじゃないですか!私も、サクラ様のお陰で、罰を受けずに済んだんですよ!」

アトラスの評判を下げないために、あれこれフォローしてきたことが、こんなところで実を結ぶなんて思わなかったわ。

その日の夜は、最近で一番良く眠れた。牢屋の中にも関わらず、暖房がついていて快適だし、布団は柔らかいし、、なによりーー

(無駄じゃなかったのね。)

心が温かくて、幸せで気がついたときにはぐっすり眠っていた。



   ◇◇◇

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

嘘を信じ私を切り落とした者とその国の末路は……。

四季
恋愛
「レミリア・レモネード! 君との婚約を今ここで破棄する!」 第一王子ブランジズ・ブブロ・ブロロブアは晩餐会の最中突然宣言した。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

私は王子の婚約者にはなりたくありません。

黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。 愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。 いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。 そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。 父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。 しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。 なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。 さっさと留学先に戻りたいメリッサ。 そこへ聖女があらわれて――   婚約破棄のその後に起きる物語

【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?

恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。 しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。 追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。 フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。 ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。 記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。 一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた── ※小説家になろうにも投稿しています いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!

殿下、私の身体だけが目当てなんですね!

石河 翠
恋愛
「片付け」の加護を持つ聖女アンネマリーは、出来損ないの聖女として蔑まれつつ、毎日楽しく過ごしている。「治癒」「結界」「武運」など、利益の大きい加護持ちの聖女たちに辛く当たられたところで、一切気にしていない。 それどころか彼女は毎日嬉々として、王太子にファンサを求める始末。王太子にポンコツ扱いされても、王太子と会話を交わせるだけでアンネマリーは満足なのだ。そんなある日、お城でアンネマリー以外の聖女たちが決闘騒ぎを引き起こして……。 ちゃらんぽらんで何も考えていないように見えて、実は意外と真面目なヒロインと、おバカな言動と行動に頭を痛めているはずなのに、どうしてもヒロインから目を離すことができないヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID29505542)をお借りしております。

出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね

猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」 広間に高らかに響く声。 私の婚約者であり、この国の王子である。 「そうですか」 「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」 「… … …」 「よって、婚約は破棄だ!」 私は、周りを見渡す。 私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。 「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」 私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。 なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。

婚約破棄された聖女は、愛する恋人との思い出を消すことにした。

石河 翠
恋愛
婚約者である王太子に興味がないと評判の聖女ダナは、冷たい女との結婚は無理だと婚約破棄されてしまう。国外追放となった彼女を助けたのは、美貌の魔術師サリバンだった。 やがて恋人同士になった二人。ある夜、改まったサリバンに呼び出され求婚かと期待したが、彼はダナに自分の願いを叶えてほしいと言ってきた。彼は、ダナが大事な思い出と引き換えに願いを叶えることができる聖女だと知っていたのだ。 失望したダナは思い出を捨てるためにサリバンの願いを叶えることにする。ところがサリバンの願いの内容を知った彼女は彼を幸せにするため賭けに出る。 愛するひとの幸せを願ったヒロインと、世界の平和を願ったヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(写真のID:4463267)をお借りしています。

処理中です...