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11 隠し通路
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そして、私は隠し通路の中にいた。ドノバル王を助けるためには、まずはドノバル王に会わなくてはいけない。
私はそのための隠し通路を知っていた。アトラスやヒィナに見つかったら危険だから一人で行こうと思っていたのだが、レブロムがついてきてしまった。
「レブロムは着いてくること無かったのに。」
「サクラを一人で行かせられるわけ無いだろ。」
狭い隠し通路の中を、レブロムは身をかがめて歩いている。この隠し通路は私が今は亡き王妃様のカノル様に教えてもらった道だ。この通路は、ドノバル様の部屋にも通じている。
結婚前夜、私はこの隠し通路を使って外に出ようとしていたのだ。
「ドノバル様は、私の言葉を信じてくださるかしら?」
私はこれから、アトラスとヒィナを陥れるための策を講じる。だが、それにはドノバル様の協力と私を信じてもらうことが必要だった。
"アトラスとヒィナがドノバル王に毒を入れていたとしたら"絶対に私が食い止めてやる。
「信じてくれるよ。父上は、本当にサクラを娘のようにかわいがっているんだから。」
私もドノバル様を本当の父親のように思っているんだ。ドノバル様をこのままアトラスとヒィナに殺されてしまうわけにはいかない。
「この上が、ドノバル様の寝室よ。」
私はアトラスの耳元で囁いた。私は耳をすまして、部屋の様子をうかがった。どうかアトラスとヒィナに見つかりませんように。
私はゆっくり、秘密扉を開けた。
◇◇◇
「ドノバル様。」
私はドノバル様の枕元に顔を寄せて囁いた。ドノバル様は微かに身じろぎをすると、薄く目を開けた。
「サ、サクラ、。」
ドノバル様は見る影もなくやつれている。これがアトラスとヒィナのせいだとしたら、絶対に許せない。
「私が絶対にドノバル様を助けます。そのために、一つだけ、お頼みしたいことがあるのですー。」
◇◇◇
ドノバル様の部屋から戻った私はアトラスの食事担当のメイドを呼び、一つ頼み事をした。
「アトラスの食事を出すのを、ドノバル様より少し遅らせてくれないかしら?」
「わかりました。サクラ様の頼みならば。」
「ありがとう。」
◇◇◇
そして、私の作戦が始まった。ドノバル様を救うための、私の作戦。
「ドノバル様の食事と、アトラスの食事を入れ替える。」
私はゆっくりとレブロムに言った。
「ドノバル様が体調を崩されたタイミングを考えても、ヒィナがドノバル様に毒を持っている可能性が高いわ。少しづつ体を蝕むような毒よ。」
ドノバル様がどれほど体調が悪くとも、王の食事は誰よりも豪華にしなくてはならない習わしだった。他の貴族と、ドノバル様の食事を入れ替えることはできない。だが、皇太子であるアトラスの食事とドノバル様の食事は同一のものである。
「ヒィナが一人になって、毒を盛った後に食事を入れ替えるのよ。」
「そんなことできるのか?」
「もちろん、全ての食事を入れ替えることなんてできないわ。ただ、お汁物だけ、ならどうかしら?」
ドノバル様はお汁物だけしか、ほとんど口にすることができていないとメイドが言っていた。ならば、そこにヒィナが毒を含ませている可能性は高い。隠し通路からならば、ドノバル様とアトラスの食事を入れ替えることは可能だ。
「やってみせるわ。ドノバル様を救うためだもの。」
私はあくまでドノバル様の食事とアトラスの食事を入れ替えるだけで、アトラスに毒を盛るわけではない。
この作戦が失敗するならば、アトラスとヒィナはドノバル王に毒を持っていなかったっていう、証明になるだけ。それが失敗したら、また次の作戦を考えればいいのよ。
◇◇◇
私はそのための隠し通路を知っていた。アトラスやヒィナに見つかったら危険だから一人で行こうと思っていたのだが、レブロムがついてきてしまった。
「レブロムは着いてくること無かったのに。」
「サクラを一人で行かせられるわけ無いだろ。」
狭い隠し通路の中を、レブロムは身をかがめて歩いている。この隠し通路は私が今は亡き王妃様のカノル様に教えてもらった道だ。この通路は、ドノバル様の部屋にも通じている。
結婚前夜、私はこの隠し通路を使って外に出ようとしていたのだ。
「ドノバル様は、私の言葉を信じてくださるかしら?」
私はこれから、アトラスとヒィナを陥れるための策を講じる。だが、それにはドノバル様の協力と私を信じてもらうことが必要だった。
"アトラスとヒィナがドノバル王に毒を入れていたとしたら"絶対に私が食い止めてやる。
「信じてくれるよ。父上は、本当にサクラを娘のようにかわいがっているんだから。」
私もドノバル様を本当の父親のように思っているんだ。ドノバル様をこのままアトラスとヒィナに殺されてしまうわけにはいかない。
「この上が、ドノバル様の寝室よ。」
私はアトラスの耳元で囁いた。私は耳をすまして、部屋の様子をうかがった。どうかアトラスとヒィナに見つかりませんように。
私はゆっくり、秘密扉を開けた。
◇◇◇
「ドノバル様。」
私はドノバル様の枕元に顔を寄せて囁いた。ドノバル様は微かに身じろぎをすると、薄く目を開けた。
「サ、サクラ、。」
ドノバル様は見る影もなくやつれている。これがアトラスとヒィナのせいだとしたら、絶対に許せない。
「私が絶対にドノバル様を助けます。そのために、一つだけ、お頼みしたいことがあるのですー。」
◇◇◇
ドノバル様の部屋から戻った私はアトラスの食事担当のメイドを呼び、一つ頼み事をした。
「アトラスの食事を出すのを、ドノバル様より少し遅らせてくれないかしら?」
「わかりました。サクラ様の頼みならば。」
「ありがとう。」
◇◇◇
そして、私の作戦が始まった。ドノバル様を救うための、私の作戦。
「ドノバル様の食事と、アトラスの食事を入れ替える。」
私はゆっくりとレブロムに言った。
「ドノバル様が体調を崩されたタイミングを考えても、ヒィナがドノバル様に毒を持っている可能性が高いわ。少しづつ体を蝕むような毒よ。」
ドノバル様がどれほど体調が悪くとも、王の食事は誰よりも豪華にしなくてはならない習わしだった。他の貴族と、ドノバル様の食事を入れ替えることはできない。だが、皇太子であるアトラスの食事とドノバル様の食事は同一のものである。
「ヒィナが一人になって、毒を盛った後に食事を入れ替えるのよ。」
「そんなことできるのか?」
「もちろん、全ての食事を入れ替えることなんてできないわ。ただ、お汁物だけ、ならどうかしら?」
ドノバル様はお汁物だけしか、ほとんど口にすることができていないとメイドが言っていた。ならば、そこにヒィナが毒を含ませている可能性は高い。隠し通路からならば、ドノバル様とアトラスの食事を入れ替えることは可能だ。
「やってみせるわ。ドノバル様を救うためだもの。」
私はあくまでドノバル様の食事とアトラスの食事を入れ替えるだけで、アトラスに毒を盛るわけではない。
この作戦が失敗するならば、アトラスとヒィナはドノバル王に毒を持っていなかったっていう、証明になるだけ。それが失敗したら、また次の作戦を考えればいいのよ。
◇◇◇
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