【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?

五月ふう

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6.国王が戻ってきた

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隣国アザール国の娼館。
トラストル国"元"国王リリックは、マリィナという娼婦に怒鳴りつけられていた。

「さあ、リリック!!金がなくなったんだろう!!なら、さっさと出ていって!」

「ま、待ってくれ。僕たち愛し合っていただろ?俺は国に帰りたくないんだ!」

リリックは情けない顔で、マリィナにすり寄った。

「ふふふっ。あたしの言葉を真に受けたのかい?世間知らずの男だねぇ。ここはお店だよ。もらったお金分のサービスはするけどそれ以上は無いのさ。」

マリィナはリリックを振り払って、彼を見下した。

「ぼ、僕は国王だぞ!」

リリックは愚かにもマリィナが彼を愛していると信じていた。トラストル国で育ったリリックは、娼館の仕組みについてよく理解していなかったのだ。

「まだその冗談を続けるのかい?もう聞き飽きたよ。さっさと荷物まとめて、あんたのお城にでも帰ったらどうだい?」

マリィナはリリックを馬鹿にして笑った。

「くっそ!今に痛い目を見せてやる!!」

そう言って、リリックは娼館を飛び出した。

(ふん!城にある宝石を売れば金はいくらでも手にはいるんだ!)

  
   ◇◇◇

リリックがトラストル国にたどり着いたとき、彼が城を出てから5ヶ月が過ぎていた。

(ふん。どうせフィリナいれば、僕がいなくとも何も変わらないだろ。国宝を手に入れたら、すぐアザール国に戻ろう。)

自らの女遊びが原因で評判を落としているにもかからわず、リリックはフィリナを憎んでいた。

国民は皆、自分ではなく王妃フィリナばかりを慕っていたからだ。

(相変わらず、田舎臭い国だ。)

夕方で人通りが多いにもかからわず、リリックの姿に気づくものは誰もいなかった。

(久しぶりに王が城に帰ってきたんだ。もっと歓迎したらどうなんだ?)

リリックはイライラしながら、城に向かう。

「あぁ?!」

城を遠目から見つめたリリックは怒りの声をあげた。なぜか平民達が城からぞろぞろと出て来るのだ。

(フィリナは何をしている?!)

そして平民たちは城を出ると城門を締め、外側から鍵をかけた。

「おい!!城門を開けろ!!」

思わずリリックは城門に駆け寄り、ドアを締めた平民達に向かって叫んだ。

平民たちは顔をしかめて、リリックを見る。

「なんだその顔は!!僕は王だぞ!!門を開けろ!!」

「ああ、"元"国王のリリックか。盗人がわざわざ戻ってきたんだな。おい!だれか!警備兵を呼んできてくれ!!」

「国王を盗人呼ばわりするとは・・・!無礼者が!!」

リリックは顔を真っ赤にして、男を怒鳴りつけた。彼はまだ、自分がもう国王では無いことを知らない。

「お前こそ、よくこの国に帰ってこれたな!!フィリナを散々傷つけやがって!」

大柄で黒髪の平民の男は、リリックを睨みつけた。

(フィリナ、だと?人の妻を馴れ馴れしく呼びやがって!)

当然、リリックはフィリナが彼と離縁していることを知らない。

「なんだお前は!!とにかくフィリナを連れてこい!!あの女は自分の夫が帰ってきたのに、迎えにも来ないのか!!」

(どうせあの女は、文句をつけながらも俺には逆らえない。僕が国王である限り、あいつは僕を守り続けるんだ!)

だがフィリナはもうすでに、リリックの支配下から抜け出している。

「リリック・・・帰ってきたのね。」

「フィリナ!」

騒ぎを聞きつけて、城門に駆けつけたフィリナはリリックを睨みつけた。

(この女は本当にフィリナか? )

その姿はリリックが覚えている、従順なフィリナでは無かった。

「あの盗人を捕まえなさい!」

フィリナは後ろに引き連れた警備兵達に、リリックを捕まえるよう命じた。

「な、なにをする!!僕は国王だぞ!!」

「"元"国王よ。リリック。貴方はもう2ヶ月も前に、国王ではなくなっているの。」

「そんなこと許されるわけないだろう!!」

フィリナはため息をついて首を振った。

「2ヶ月間国王が特別な事情無く城を留守にした場合、王妃が国王代理として就任するの。

私は国王代理として、貴方が国王にふさわしくないと判断した。正式に、国王リリックは退位してるわ。」

「僕が認めていない!!僕が!!」

どんなにリリックが喚き散らそうとも、もうフィリナは彼を見ていなかった。

平民男に肩を抱かれ、歩き出したフィリナに向かってリリックが叫ぶ。

「お願いだ!!フィリナ!!城門を開けてくれ!!僕は君を愛している!!」

フィリナは振り返ることなく、こう言った。

「残念ね。私はもう貴方を愛していないの。」
 

   ◇◇◇

そうして元国王リリックは国宝を盗んだ罪で逮捕された。

リリックには、売った宝石の金額分を返済しなければ、牢屋から出ることは許されなかった。だが、その代金は莫大で彼は何十年もの間、牢屋から出ることは叶わなかった。


一方のフィリナは、元王妃としてその後もトラストル国の繁栄に尽力し、皆から慕われたという。

  
   ◇◇◇


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