6 / 7
6.国王が戻ってきた
しおりを挟む
隣国アザール国の娼館。
トラストル国"元"国王リリックは、マリィナという娼婦に怒鳴りつけられていた。
「さあ、リリック!!金がなくなったんだろう!!なら、さっさと出ていって!」
「ま、待ってくれ。僕たち愛し合っていただろ?俺は国に帰りたくないんだ!」
リリックは情けない顔で、マリィナにすり寄った。
「ふふふっ。あたしの言葉を真に受けたのかい?世間知らずの男だねぇ。ここはお店だよ。もらったお金分のサービスはするけどそれ以上は無いのさ。」
マリィナはリリックを振り払って、彼を見下した。
「ぼ、僕は国王だぞ!」
リリックは愚かにもマリィナが彼を愛していると信じていた。トラストル国で育ったリリックは、娼館の仕組みについてよく理解していなかったのだ。
「まだその冗談を続けるのかい?もう聞き飽きたよ。さっさと荷物まとめて、あんたのお城にでも帰ったらどうだい?」
マリィナはリリックを馬鹿にして笑った。
「くっそ!今に痛い目を見せてやる!!」
そう言って、リリックは娼館を飛び出した。
(ふん!城にある宝石を売れば金はいくらでも手にはいるんだ!)
◇◇◇
リリックがトラストル国にたどり着いたとき、彼が城を出てから5ヶ月が過ぎていた。
(ふん。どうせフィリナいれば、僕がいなくとも何も変わらないだろ。国宝を手に入れたら、すぐアザール国に戻ろう。)
自らの女遊びが原因で評判を落としているにもかからわず、リリックはフィリナを憎んでいた。
国民は皆、自分ではなく王妃フィリナばかりを慕っていたからだ。
(相変わらず、田舎臭い国だ。)
夕方で人通りが多いにもかからわず、リリックの姿に気づくものは誰もいなかった。
(久しぶりに王が城に帰ってきたんだ。もっと歓迎したらどうなんだ?)
リリックはイライラしながら、城に向かう。
「あぁ?!」
城を遠目から見つめたリリックは怒りの声をあげた。なぜか平民達が城からぞろぞろと出て来るのだ。
(フィリナは何をしている?!)
そして平民たちは城を出ると城門を締め、外側から鍵をかけた。
「おい!!城門を開けろ!!」
思わずリリックは城門に駆け寄り、ドアを締めた平民達に向かって叫んだ。
平民たちは顔をしかめて、リリックを見る。
「なんだその顔は!!僕は王だぞ!!門を開けろ!!」
「ああ、"元"国王のリリックか。盗人がわざわざ戻ってきたんだな。おい!だれか!警備兵を呼んできてくれ!!」
「国王を盗人呼ばわりするとは・・・!無礼者が!!」
リリックは顔を真っ赤にして、男を怒鳴りつけた。彼はまだ、自分がもう国王では無いことを知らない。
「お前こそ、よくこの国に帰ってこれたな!!フィリナを散々傷つけやがって!」
大柄で黒髪の平民の男は、リリックを睨みつけた。
(フィリナ、だと?人の妻を馴れ馴れしく呼びやがって!)
当然、リリックはフィリナが彼と離縁していることを知らない。
「なんだお前は!!とにかくフィリナを連れてこい!!あの女は自分の夫が帰ってきたのに、迎えにも来ないのか!!」
(どうせあの女は、文句をつけながらも俺には逆らえない。僕が国王である限り、あいつは僕を守り続けるんだ!)
だがフィリナはもうすでに、リリックの支配下から抜け出している。
「リリック・・・帰ってきたのね。」
「フィリナ!」
騒ぎを聞きつけて、城門に駆けつけたフィリナはリリックを睨みつけた。
(この女は本当にフィリナか? )
その姿はリリックが覚えている、従順なフィリナでは無かった。
「あの盗人を捕まえなさい!」
フィリナは後ろに引き連れた警備兵達に、リリックを捕まえるよう命じた。
「な、なにをする!!僕は国王だぞ!!」
「"元"国王よ。リリック。貴方はもう2ヶ月も前に、国王ではなくなっているの。」
「そんなこと許されるわけないだろう!!」
フィリナはため息をついて首を振った。
「2ヶ月間国王が特別な事情無く城を留守にした場合、王妃が国王代理として就任するの。
私は国王代理として、貴方が国王にふさわしくないと判断した。正式に、国王リリックは退位してるわ。」
「僕が認めていない!!僕が!!」
どんなにリリックが喚き散らそうとも、もうフィリナは彼を見ていなかった。
平民男に肩を抱かれ、歩き出したフィリナに向かってリリックが叫ぶ。
「お願いだ!!フィリナ!!城門を開けてくれ!!僕は君を愛している!!」
フィリナは振り返ることなく、こう言った。
「残念ね。私はもう貴方を愛していないの。」
◇◇◇
そうして元国王リリックは国宝を盗んだ罪で逮捕された。
リリックには、売った宝石の金額分を返済しなければ、牢屋から出ることは許されなかった。だが、その代金は莫大で彼は何十年もの間、牢屋から出ることは叶わなかった。
一方のフィリナは、元王妃としてその後もトラストル国の繁栄に尽力し、皆から慕われたという。
◇◇◇
トラストル国"元"国王リリックは、マリィナという娼婦に怒鳴りつけられていた。
「さあ、リリック!!金がなくなったんだろう!!なら、さっさと出ていって!」
「ま、待ってくれ。僕たち愛し合っていただろ?俺は国に帰りたくないんだ!」
リリックは情けない顔で、マリィナにすり寄った。
「ふふふっ。あたしの言葉を真に受けたのかい?世間知らずの男だねぇ。ここはお店だよ。もらったお金分のサービスはするけどそれ以上は無いのさ。」
マリィナはリリックを振り払って、彼を見下した。
「ぼ、僕は国王だぞ!」
リリックは愚かにもマリィナが彼を愛していると信じていた。トラストル国で育ったリリックは、娼館の仕組みについてよく理解していなかったのだ。
「まだその冗談を続けるのかい?もう聞き飽きたよ。さっさと荷物まとめて、あんたのお城にでも帰ったらどうだい?」
マリィナはリリックを馬鹿にして笑った。
「くっそ!今に痛い目を見せてやる!!」
そう言って、リリックは娼館を飛び出した。
(ふん!城にある宝石を売れば金はいくらでも手にはいるんだ!)
◇◇◇
リリックがトラストル国にたどり着いたとき、彼が城を出てから5ヶ月が過ぎていた。
(ふん。どうせフィリナいれば、僕がいなくとも何も変わらないだろ。国宝を手に入れたら、すぐアザール国に戻ろう。)
自らの女遊びが原因で評判を落としているにもかからわず、リリックはフィリナを憎んでいた。
国民は皆、自分ではなく王妃フィリナばかりを慕っていたからだ。
(相変わらず、田舎臭い国だ。)
夕方で人通りが多いにもかからわず、リリックの姿に気づくものは誰もいなかった。
(久しぶりに王が城に帰ってきたんだ。もっと歓迎したらどうなんだ?)
リリックはイライラしながら、城に向かう。
「あぁ?!」
城を遠目から見つめたリリックは怒りの声をあげた。なぜか平民達が城からぞろぞろと出て来るのだ。
(フィリナは何をしている?!)
そして平民たちは城を出ると城門を締め、外側から鍵をかけた。
「おい!!城門を開けろ!!」
思わずリリックは城門に駆け寄り、ドアを締めた平民達に向かって叫んだ。
平民たちは顔をしかめて、リリックを見る。
「なんだその顔は!!僕は王だぞ!!門を開けろ!!」
「ああ、"元"国王のリリックか。盗人がわざわざ戻ってきたんだな。おい!だれか!警備兵を呼んできてくれ!!」
「国王を盗人呼ばわりするとは・・・!無礼者が!!」
リリックは顔を真っ赤にして、男を怒鳴りつけた。彼はまだ、自分がもう国王では無いことを知らない。
「お前こそ、よくこの国に帰ってこれたな!!フィリナを散々傷つけやがって!」
大柄で黒髪の平民の男は、リリックを睨みつけた。
(フィリナ、だと?人の妻を馴れ馴れしく呼びやがって!)
当然、リリックはフィリナが彼と離縁していることを知らない。
「なんだお前は!!とにかくフィリナを連れてこい!!あの女は自分の夫が帰ってきたのに、迎えにも来ないのか!!」
(どうせあの女は、文句をつけながらも俺には逆らえない。僕が国王である限り、あいつは僕を守り続けるんだ!)
だがフィリナはもうすでに、リリックの支配下から抜け出している。
「リリック・・・帰ってきたのね。」
「フィリナ!」
騒ぎを聞きつけて、城門に駆けつけたフィリナはリリックを睨みつけた。
(この女は本当にフィリナか? )
その姿はリリックが覚えている、従順なフィリナでは無かった。
「あの盗人を捕まえなさい!」
フィリナは後ろに引き連れた警備兵達に、リリックを捕まえるよう命じた。
「な、なにをする!!僕は国王だぞ!!」
「"元"国王よ。リリック。貴方はもう2ヶ月も前に、国王ではなくなっているの。」
「そんなこと許されるわけないだろう!!」
フィリナはため息をついて首を振った。
「2ヶ月間国王が特別な事情無く城を留守にした場合、王妃が国王代理として就任するの。
私は国王代理として、貴方が国王にふさわしくないと判断した。正式に、国王リリックは退位してるわ。」
「僕が認めていない!!僕が!!」
どんなにリリックが喚き散らそうとも、もうフィリナは彼を見ていなかった。
平民男に肩を抱かれ、歩き出したフィリナに向かってリリックが叫ぶ。
「お願いだ!!フィリナ!!城門を開けてくれ!!僕は君を愛している!!」
フィリナは振り返ることなく、こう言った。
「残念ね。私はもう貴方を愛していないの。」
◇◇◇
そうして元国王リリックは国宝を盗んだ罪で逮捕された。
リリックには、売った宝石の金額分を返済しなければ、牢屋から出ることは許されなかった。だが、その代金は莫大で彼は何十年もの間、牢屋から出ることは叶わなかった。
一方のフィリナは、元王妃としてその後もトラストル国の繁栄に尽力し、皆から慕われたという。
◇◇◇
278
あなたにおすすめの小説
花嫁に「君を愛することはできない」と伝えた結果
藍田ひびき
恋愛
「アンジェリカ、君を愛することはできない」
結婚式の後、侯爵家の騎士のレナード・フォーブズは妻へそう告げた。彼は主君の娘、キャロライン・リンスコット侯爵令嬢を愛していたのだ。
アンジェリカの言葉には耳を貸さず、キャロラインへの『真実の愛』を貫こうとするレナードだったが――。
※ 他サイトにも投稿しています。
【完結】結婚前から愛人を囲う男の種などいりません!
つくも茄子
ファンタジー
伯爵令嬢のフアナは、結婚式の一ヶ月前に婚約者の恋人から「私達愛し合っているから婚約を破棄しろ」と怒鳴り込まれた。この赤毛の女性は誰?え?婚約者のジョアンの恋人?初耳です。ジョアンとは従兄妹同士の幼馴染。ジョアンの父親である侯爵はフアナの伯父でもあった。怒り心頭の伯父。されどフアナは夫に愛人がいても一向に構わない。というよりも、結婚一ヶ月前に破棄など常識に考えて無理である。無事に結婚は済ませたものの、夫は新妻を蔑ろにする。何か勘違いしているようですが、伯爵家の世継ぎは私から生まれた子供がなるんですよ?父親?別に書類上の夫である必要はありません。そんな、フアナに最高の「種」がやってきた。
他サイトにも公開中。
【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。
西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。
それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。
大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。
だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。
・・・なのに。
貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。
貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって?
愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。
そう、申し上げたら貴方様は―――
白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
愚か者は幸せを捨てた
矢野りと
恋愛
相思相愛で結ばれた二人がある日、分かれることになった。夫を愛しているサラは別れを拒んだが、夫であるマキタは非情な手段でサラとの婚姻関係そのものをなかったことにしてしまった。
だがそれは男の本意ではなかった…。
魅了の呪縛から解き放たれた男が我に返った時、そこに幸せはなかった。
最愛の人を失った男が必死に幸せを取り戻そうとするが…。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる