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一人ぼっちには慣れません

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その日の夜は、サルティ国のホテルに泊まり明日の山登りに向けて準備を整えることにしました。お金は大事に使いたいですが、ホテル代くらいケチらず使うべきだと思いました。明日のために体力を回復しなくてはなりません。

ホテルに寝転がり、天井を見上げると自然と涙が溢れてきました。昨日、今日とあまりに多くの出来事が起こりすぎて、悲しむ暇すらなかったのです。

(わたしは、一人ぼっちですね。)

家でも学校でも、私は一人ぼっちでした。人と関わることがとても苦手です。いつもなにを話したらいいか分からなくなるのです。

でも、一人ぼっちには今だに慣れていません。だから、あんなにも簡単にロペスに騙されてしまったのでしょう。



  ◇◇◇



(なめて、いました、、山登り、、、。)

歩き初めてそれほど経たないうちに、私はヘトヘトになってしまいました。

日頃外に出かけず、椅子の上にばかりいたからでしょうか。自分の体力の無さを強く感じます。

(もう、だめかもしれません、、、。)

私は目の前が真っ白になって、ぐらりと体が傾きました。

「ちょっと!!あんた!だいじょうぶ?!水飲みな!!水!!」

見知らぬ女性が私の腕を掴んで支えてくれました。ポニーテールがよく似合う大柄な女性です。

「ありがとう、、ございます、、。」

水を飲んだら、少しずつ意識がはっきりしてきました。

「少し休みな。私がそばにいてあげるから。」

女性は私の腕を掴み、日陰に連れて行ってくれました。なんと優しい人なのでしょう。

「あたしの名前はアイリ。あんたは?」

「レイニャといいます。」

「あんたもトット国に行くつもりか?」

「そうです。」

「あたしと一緒だな。あたしはさ、暴力を振るう両親から逃げるためにトット国に行くんだ。詳しくは聞かないけど、レイニャもきっと事情があってトット国にいくんだろ?」

両親から、暴力を振るわれていたのですか。アイリさんの明るい雰囲気からは想像できません。大変な境遇にいたのですね。

「はい。」

「せっかく、こうして出会えたんだし、きっとなんかの縁があるんだ。あたしと一緒にトット国に行かないか?」

アイリさんはにっこりと笑って、私を誘ってくれました。一人では、トット国に辿り着けないかもしれないと思っていました。断る理由は、一つもありません。

「喜んで!!よろしくお願いします!アイリさん。」


   ◇◇◇

アイリさんはよく喋り、自分のことを隠すことなく話す人でした。アイリさんにつられるように、私はこれまでのことを話していました。

「そりゃあ、大変だったね。」

アイリさんは、私の話を真剣に聞いてくれました。不思議なことに、アイリさんに話していると、辛い気持ちが少しずつ和らいでいきます。

こんなふうに、自分のことを長く話すのは初めての経験でした。

今日は山の三合目まで登ることができました。三合目には山小屋があり、登山者が眠れるようになっています。私とアイリさんは二人並んで寝袋に入りました。

「レイニャのおかげで、旅が楽しいよ。」

「私こそです。アイリさん。」


   

  ◇◇◇

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