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異界を渡るマレビト
渡り鏡②
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目のはれは冷やしたらなんとか治まった。
泣いてひと眠りしたおかげか、気持ちは落ち着いてる。
だから今日も普段通りに登校したんだけれど……。
「はぁ……」
気持ちは落ち着いても不安がなくなったわけじゃないからため息は出ちゃう。
病気に関してはお母さんとお医者さんに頑張ってもらうしかないし、私に出来ることはない。
ため息ばっかりついてないで、私がお母さんのためになにが出来るかを考えた方がいい……って、分かってるんだけどね。
「はぁ……」
分かってても、元気は出てこなくて、やっぱりため息ばっかりついちゃうよ。
「おっはよう!」
机とにらめっこしながらため息ばっかりついてた私に、明るいあいさつがかけられた。
顔をあげると、肩までのフワフワした茶髪とキレイな青い目をしているとってもかわいい笑顔が目に飛び込んでくる。
「あ、おはよ……カンナ」
「ラナ? どーしたの? 元気ないなんてめずらしい。今日雨ふらないよね?」
小動物系なかわいさがある自慢の親友であるカンナ。
そのかわいさとは裏腹に思ったことをすぐに口にすることがあって、たまに辛辣。
そういうところも面白いなって思ってるんだけど……今はいつもみたいに笑って突っ込んであげられない。
「今日は晴れ時々くもりだよ。雨は降らないから大丈夫」
「ラナ? 本当に大丈夫?」
いつもの元気がない私の様子を見て本気で心配させちゃったみたい。
「うん、大丈夫……多分」
「話せる事なら聞くよ?……聞くことしか出来ないかもだけど」
たまに辛辣でもちゃんと親友思いのやさしい子。
カンナのやさしさがうれしくて、ちょっとだけ元気が出た。
「ありがとう。でも大丈夫、ちょっと今日は落ち込みたい気分ってだけ」
「落ち込みたい気分って……まあわかった。今日は大人しくすごそ」
ちょっとは元気が出たけれど、まだ話せるほど心の整理は出来てなくて。
私は合わせてくれるカンナに「ありがとう」って返した。
***
一日落ち着いてすごしたけれど、やっぱり心の整理まではつかなかった。
放課後になって、部活に行こうかちょっと迷う。
気分じゃなかったけど、だからと言って家に帰ってもなおさら悶々としそうだし。
今日はカンナも部活だから、一緒に遊んだりして気をまぎらわせることも出来ないし。
もしかしたら気分転換になるかもしれないしって、私は神秘学研究部の部室に向かった。
でも、思ったほどの気分転換にはならなかった。
気を紛らわせてくれそうなスバル先輩は今日は休みみたいだし。
いつもは楽しく読んでた資料とかも、何回もページをめくる手が止まってボーっとしちゃう。
見かねたアキラ先輩に心配されちゃった。
「ラナさん? 大丈夫? 体調でも悪い?」
「え!? あ、大丈夫です」
ぼーっとしてアキラ先輩の顔を見てなかったから、聞こえてきたイケボにドキッとした。
とっさに大丈夫って言ったけど、よけい様子がおかしいって思われちゃったみたい。
心配そうな顔をされて、ついちょっとだけ事情を話しちゃった。
「その、ちょっと家のことで心配なことがあって」
「心配事? 良かったら聞こうか? 少しは力になれるかもしれないし」
「アキラ先輩……」
ぴょんぴょんはねた髪と大きな眼鏡のアキラ先輩はオタクっぽいけど、素顔のときとは違ってホッとする。
そんな安心出来る先輩にやさしい言葉をかけられて、どうしたらいいのかもわからなかったのもあって昨日の夜のことを全部話しちゃった。
「……それで、お母さんのために何が出来るかなとか、病気は治らないのかなとか、色々考えちゃってっ……」
話しているうちに悲しい気持ちまで思い出しちゃって涙ぐんできた。
そんな私の背中をアキラ先輩はなでて落ち着かせてくれる。
「それは、悲しいね」
聞こえるイケボもゆったりとしててやさしくて、私は少しずつ落ち着いてきた。
「すみません、ありがとうございます」
落ち着けたからって伝えると、アキラ先輩は私からはなれて向かい側に座る。
そして私の話をちゃんと考えてどうすればいいのか方針をしめしてくれた。
「まずはちゃんと確認してみよう? 昨日の夜話を聞いたって言えば、きっとちゃんと話してくれると思うよ? ちゃんと聞かないと、病気が本当なのかとかどれくらい深刻なのかってことは分からないから」
「……はい、そうですね」
「それでもし本当に深刻な状態だったら……」
アキラ先輩はそこで一度言葉を止めて、制服のポケットから巾着袋を取り出す。
中には青銅っていうのかな? ちょっと青みがかった装飾がついた手のひら大の鏡が入っていた。
「お母さんに、この鏡をさわってもらって。もしかしたら助けられるかもしれないから」
「はぁ……」
見た目的に何かオカルト的なアイテムかな?
神秘学研究部の部長らしいって言えばらしいけど……。
こんなときにそういうものを当てにするのもどうかと思ったけれど、藁にも縋る思いっていうのかな?
ものは試しってことでその鏡を貸してもらった。
泣いてひと眠りしたおかげか、気持ちは落ち着いてる。
だから今日も普段通りに登校したんだけれど……。
「はぁ……」
気持ちは落ち着いても不安がなくなったわけじゃないからため息は出ちゃう。
病気に関してはお母さんとお医者さんに頑張ってもらうしかないし、私に出来ることはない。
ため息ばっかりついてないで、私がお母さんのためになにが出来るかを考えた方がいい……って、分かってるんだけどね。
「はぁ……」
分かってても、元気は出てこなくて、やっぱりため息ばっかりついちゃうよ。
「おっはよう!」
机とにらめっこしながらため息ばっかりついてた私に、明るいあいさつがかけられた。
顔をあげると、肩までのフワフワした茶髪とキレイな青い目をしているとってもかわいい笑顔が目に飛び込んでくる。
「あ、おはよ……カンナ」
「ラナ? どーしたの? 元気ないなんてめずらしい。今日雨ふらないよね?」
小動物系なかわいさがある自慢の親友であるカンナ。
そのかわいさとは裏腹に思ったことをすぐに口にすることがあって、たまに辛辣。
そういうところも面白いなって思ってるんだけど……今はいつもみたいに笑って突っ込んであげられない。
「今日は晴れ時々くもりだよ。雨は降らないから大丈夫」
「ラナ? 本当に大丈夫?」
いつもの元気がない私の様子を見て本気で心配させちゃったみたい。
「うん、大丈夫……多分」
「話せる事なら聞くよ?……聞くことしか出来ないかもだけど」
たまに辛辣でもちゃんと親友思いのやさしい子。
カンナのやさしさがうれしくて、ちょっとだけ元気が出た。
「ありがとう。でも大丈夫、ちょっと今日は落ち込みたい気分ってだけ」
「落ち込みたい気分って……まあわかった。今日は大人しくすごそ」
ちょっとは元気が出たけれど、まだ話せるほど心の整理は出来てなくて。
私は合わせてくれるカンナに「ありがとう」って返した。
***
一日落ち着いてすごしたけれど、やっぱり心の整理まではつかなかった。
放課後になって、部活に行こうかちょっと迷う。
気分じゃなかったけど、だからと言って家に帰ってもなおさら悶々としそうだし。
今日はカンナも部活だから、一緒に遊んだりして気をまぎらわせることも出来ないし。
もしかしたら気分転換になるかもしれないしって、私は神秘学研究部の部室に向かった。
でも、思ったほどの気分転換にはならなかった。
気を紛らわせてくれそうなスバル先輩は今日は休みみたいだし。
いつもは楽しく読んでた資料とかも、何回もページをめくる手が止まってボーっとしちゃう。
見かねたアキラ先輩に心配されちゃった。
「ラナさん? 大丈夫? 体調でも悪い?」
「え!? あ、大丈夫です」
ぼーっとしてアキラ先輩の顔を見てなかったから、聞こえてきたイケボにドキッとした。
とっさに大丈夫って言ったけど、よけい様子がおかしいって思われちゃったみたい。
心配そうな顔をされて、ついちょっとだけ事情を話しちゃった。
「その、ちょっと家のことで心配なことがあって」
「心配事? 良かったら聞こうか? 少しは力になれるかもしれないし」
「アキラ先輩……」
ぴょんぴょんはねた髪と大きな眼鏡のアキラ先輩はオタクっぽいけど、素顔のときとは違ってホッとする。
そんな安心出来る先輩にやさしい言葉をかけられて、どうしたらいいのかもわからなかったのもあって昨日の夜のことを全部話しちゃった。
「……それで、お母さんのために何が出来るかなとか、病気は治らないのかなとか、色々考えちゃってっ……」
話しているうちに悲しい気持ちまで思い出しちゃって涙ぐんできた。
そんな私の背中をアキラ先輩はなでて落ち着かせてくれる。
「それは、悲しいね」
聞こえるイケボもゆったりとしててやさしくて、私は少しずつ落ち着いてきた。
「すみません、ありがとうございます」
落ち着けたからって伝えると、アキラ先輩は私からはなれて向かい側に座る。
そして私の話をちゃんと考えてどうすればいいのか方針をしめしてくれた。
「まずはちゃんと確認してみよう? 昨日の夜話を聞いたって言えば、きっとちゃんと話してくれると思うよ? ちゃんと聞かないと、病気が本当なのかとかどれくらい深刻なのかってことは分からないから」
「……はい、そうですね」
「それでもし本当に深刻な状態だったら……」
アキラ先輩はそこで一度言葉を止めて、制服のポケットから巾着袋を取り出す。
中には青銅っていうのかな? ちょっと青みがかった装飾がついた手のひら大の鏡が入っていた。
「お母さんに、この鏡をさわってもらって。もしかしたら助けられるかもしれないから」
「はぁ……」
見た目的に何かオカルト的なアイテムかな?
神秘学研究部の部長らしいって言えばらしいけど……。
こんなときにそういうものを当てにするのもどうかと思ったけれど、藁にも縋る思いっていうのかな?
ものは試しってことでその鏡を貸してもらった。
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