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1 殺し屋“桃野百々子”
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「桃野百々子さん!僕と付き合ってください!!」
目の前にいる男、小林幸三はいつもデートで立ち寄る喫茶店で私に告白してきた。きっと、このレトロな雰囲気の喫茶店で告白したら、オッケーを貰えると思ったのだろう。ちょろい男だ。
私は返事を焦らし、注文したコーヒーを一口すする。そして、「嬉しい」と言った。その瞬間、幸三の目が輝く。
「じゃあ……」と小林幸三は私の手を握り、「オッケーってこと?」と聞いて来た。
私は「はい」と返事をして、照れたフリをする。「よろしくお願いします」
「あ、ありがとう!やった!」
小林幸三は人目も気にせずに嬉しさを身体で表現した。ガッツポーズをして、嬉しさを噛みしめる。ここまで嬉しさを表現してくれる人も珍しいが……私は仕事を終えたので、トイレへ行こうと立ち上がった。
「すいません。ちょっとトイレに行ってもいいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」と小林幸三は笑顔で言い、改めて喜びを湧きあがらせる。「あーー……嬉しいなぁ」
私はトイレへと入り、スマホを取り出す。そして、依頼者に電話をした。呼び出し音が鳴ったと同時に相手は電話に出る。どうやらずっと連絡を待っていたようだ。
「終わりました」
と私が言うと、依頼者は「本当か?」と驚いた声を出す。「証拠は?」
「今にわかるかと……」
「じゃあ、死んだのが確認できたら、金を払う」
「ありがとう。じゃあ、最後の仕上げにとりかかりますね」
それだけ言って、私は電話を切った。次の瞬間、店内から轟音が聞こえる。そして人の悲鳴。私はトイレから出て店内を確認する。すると、大型トラックが喫茶店の壁とガラスを破り突っ込んできていた。店員さんが救急車に電話をして、周りにいるお客さんが瓦礫の下敷きになっている人を助けようとしている。
まさにその助け出されようとしている人物が、今回のターゲットである小林幸三だった。私は驚いた表情を作り、小林幸三に駆け寄る。
「幸三さん……!」と目に涙を溜めながら顔を確認する。「誰か!!早く救急車!!」
トラックの運転手は気絶しているようで、外に出てこない。店員さんは「もうすぐ来ます!」と私に教えてくれる。
「あぁ……」と私は絶望したフリをして小林幸三の顔を見る。目は開いているが、両目とも上を向いていて、そこに生気は感じられなかった。瓦礫の隙間から出ている小林幸三の手を握って手首を触る。脈は無い。こりゃ、死んでいるな……と思いながら、私は泣き崩れる。
「いや!!死なないで!!幸三さん!!」
周りの人が私の姿を見て哀れみの表情を浮かべる。小林幸三以外の被害者はいないようだ。遠くで見ていた夫婦は小さな声で言った。
「可哀想に……プロポーズしてたのに……」
私は何もしていない。ただ、告白させただけ。事故を起こしたのは運転手だし、座っていた席も小林幸三が選んだものだ。この場では私も被害者という立ち位置になる。私はただ、生まれ付き持っている自分の特殊能力を利用しただけだ。証拠の残らない殺し方。その特殊能力とは……
“私に告白してきた人は事故に遭い死亡する”
というものだ。しかも、告白した直後にそれは起こる。
私が涙を流し、悲しみの演技をしていると、救急車と消防車、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。店員さんは表に出て「こっちです!」と叫ぶ。
救急車と消防車が先に停まり、中から隊員さんが担架を持って数名出てくる。そして、警察官も降りてきて、小林幸三を助けるために瓦礫の撤去に取り掛かった。
「危ないので、離れてください!」
と消防隊員は私に言う。私は、隊員さんの身体を握りしめて、「私の彼氏なんです!助けてください!」と必死に訴えた。
「わかりました!」
と使命に燃える隊員さんは、私を安全な場所に連れて行く。そして、私の目を真っ直ぐに見て言葉を贈る。
「必ず助けてみせます!」
私は、「お願いします……!」と涙を流しながら隊員さんに言った。
もう、死んでるけどね。
目の前にいる男、小林幸三はいつもデートで立ち寄る喫茶店で私に告白してきた。きっと、このレトロな雰囲気の喫茶店で告白したら、オッケーを貰えると思ったのだろう。ちょろい男だ。
私は返事を焦らし、注文したコーヒーを一口すする。そして、「嬉しい」と言った。その瞬間、幸三の目が輝く。
「じゃあ……」と小林幸三は私の手を握り、「オッケーってこと?」と聞いて来た。
私は「はい」と返事をして、照れたフリをする。「よろしくお願いします」
「あ、ありがとう!やった!」
小林幸三は人目も気にせずに嬉しさを身体で表現した。ガッツポーズをして、嬉しさを噛みしめる。ここまで嬉しさを表現してくれる人も珍しいが……私は仕事を終えたので、トイレへ行こうと立ち上がった。
「すいません。ちょっとトイレに行ってもいいですか?」
「あ、どうぞどうぞ」と小林幸三は笑顔で言い、改めて喜びを湧きあがらせる。「あーー……嬉しいなぁ」
私はトイレへと入り、スマホを取り出す。そして、依頼者に電話をした。呼び出し音が鳴ったと同時に相手は電話に出る。どうやらずっと連絡を待っていたようだ。
「終わりました」
と私が言うと、依頼者は「本当か?」と驚いた声を出す。「証拠は?」
「今にわかるかと……」
「じゃあ、死んだのが確認できたら、金を払う」
「ありがとう。じゃあ、最後の仕上げにとりかかりますね」
それだけ言って、私は電話を切った。次の瞬間、店内から轟音が聞こえる。そして人の悲鳴。私はトイレから出て店内を確認する。すると、大型トラックが喫茶店の壁とガラスを破り突っ込んできていた。店員さんが救急車に電話をして、周りにいるお客さんが瓦礫の下敷きになっている人を助けようとしている。
まさにその助け出されようとしている人物が、今回のターゲットである小林幸三だった。私は驚いた表情を作り、小林幸三に駆け寄る。
「幸三さん……!」と目に涙を溜めながら顔を確認する。「誰か!!早く救急車!!」
トラックの運転手は気絶しているようで、外に出てこない。店員さんは「もうすぐ来ます!」と私に教えてくれる。
「あぁ……」と私は絶望したフリをして小林幸三の顔を見る。目は開いているが、両目とも上を向いていて、そこに生気は感じられなかった。瓦礫の隙間から出ている小林幸三の手を握って手首を触る。脈は無い。こりゃ、死んでいるな……と思いながら、私は泣き崩れる。
「いや!!死なないで!!幸三さん!!」
周りの人が私の姿を見て哀れみの表情を浮かべる。小林幸三以外の被害者はいないようだ。遠くで見ていた夫婦は小さな声で言った。
「可哀想に……プロポーズしてたのに……」
私は何もしていない。ただ、告白させただけ。事故を起こしたのは運転手だし、座っていた席も小林幸三が選んだものだ。この場では私も被害者という立ち位置になる。私はただ、生まれ付き持っている自分の特殊能力を利用しただけだ。証拠の残らない殺し方。その特殊能力とは……
“私に告白してきた人は事故に遭い死亡する”
というものだ。しかも、告白した直後にそれは起こる。
私が涙を流し、悲しみの演技をしていると、救急車と消防車、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。店員さんは表に出て「こっちです!」と叫ぶ。
救急車と消防車が先に停まり、中から隊員さんが担架を持って数名出てくる。そして、警察官も降りてきて、小林幸三を助けるために瓦礫の撤去に取り掛かった。
「危ないので、離れてください!」
と消防隊員は私に言う。私は、隊員さんの身体を握りしめて、「私の彼氏なんです!助けてください!」と必死に訴えた。
「わかりました!」
と使命に燃える隊員さんは、私を安全な場所に連れて行く。そして、私の目を真っ直ぐに見て言葉を贈る。
「必ず助けてみせます!」
私は、「お願いします……!」と涙を流しながら隊員さんに言った。
もう、死んでるけどね。
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