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2 お墓の前で渡さないでください
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小林幸三の死から数日後。小林幸三の葬式も終わり、私は小林家からは距離を取るようになった。しばらくの間、彼氏を亡くした可哀想な人を演じて自由に暮らしている。
今日は依頼人から報酬を受け取る日だ。私が報酬を受け取る時は、いつも決まった場所を指定している。その場所とは、墓地だ。小林幸三……つまりはターゲットの墓である。私がそこに行っても怪しまれない場所で、依頼人が来ていても不思議じゃない場所だ。何故なら依頼人も小林幸三の知り合いだから……
墓参りをしていて偶然会ったという事にすれば、誰も違和感を覚えないだろう。だから私は、いつもお墓の前で報酬を受け取る事にしている。
電車で小林幸三の墓地へ向かう。手には目印となる花束を持ち、お墓の前で手を合わせる。指定した時間となり、一人の男が歩いて来た。その男も同じ花束を持っている。依頼人と直接会うのは、この時が初めてだ。男は小林幸三と同い年のように思える。同級生とか?友達?まぁ、どうでもいいか……何か恨みがあり、私に依頼してきたのだろう。
男は私の隣に来て、「ありがとうございました」とボソっと言った。
「すいません。お線香、ありますか?」と私が言うと、男は鞄から線香を入れる長方形の箱を出し、私に渡してくれる。
「どうぞ、それ、全部差し上げます」
「ありがとう」と言って、私はその箱を受け取る。明らかに線香ではない何かが入っていて、私はそれを自分のバッグへ入れた。そして、「お先に」と墓地をあとにする。
依頼人の男がその後どうしたのか知らないが、まぁ私が気にする事でもないだろう。どうせ私はこの場所を離れるし、電話番号も変更する。ショックで引っ越した事にすれば、私がいなくても誰も怪しまない。
私は帰りの電車に乗りながら、流れる景色を眺めていた。そして、小林幸三との思い出を振り返る。
「あっ」と思い出し、私はスマホを見た。そして、スマホに収められている思い出を全て消していく。半年の付き合いだった。友達としてだが、小林幸三と色んな場所へ行き、遊び、色んな感情を共有した記録が、スマホに保存されている。
メールやライン、電話の履歴、そして一緒に撮った写真も消していく。写真の中で小林幸三はいつも笑っており、自分に対して優しくしてくれた思い出が溢れ出してくる。彼が依頼人からどんな恨みを買い、殺しを頼まれたのかはわからない。もしかしたら、極悪非道な人だったのかもしれない。
でも、楽しかった思い出は、揺ぎ無い事実で、殺す目的とはいえターゲットと過ごした日々は凄く充実していた。それこそ、本当の友達のように……思えていたのだ。
「まだまだ甘いなぁ……」と私は涙を零す。「ごめんなさい……幸三さん……」
私はスマホの思い出を泣きながら全て消し、そして涙を拭う。いつもこうだ。自分の特殊能力を利用して殺し屋を始めたはずなのに、ターゲットに感情移入してしまっていつも寂しい気持ちになる。
それなら普通の生活をすればいいではないかと思われるが、そうではないのだ。普通の生活をしていても、告白されたら相手が死んでしまう。逆に私がプロポーズして相手がオッケーしてくれても、相手が事故に遭い死んでしまうのだ。
私が彼氏を作るのを拒むように、世界は動いている。私には一生恋人が出来ない呪いのようなものが掛けられているのだろう。
「大丈夫」と私は自分に言い聞かせる。「これは仕事。どうせすぐに忘れるから……」
そうだ。新しい人が出来たらそちらに感情が移り、すぐに忘れる。だから、次の依頼を受けないといけない。実は次の依頼はすでに私の元に来ている。人を殺して欲しい弱い奴らが私にどんどん依頼してくるのだ。でも、同時進行は無理なので、優先順位を決めて順番に行っている。
「次のターゲットは……」と私は分厚いメモ帳を取り出し、名前を確認した。
「柿木和樹。21歳か……」
私と同い年だ。次はこの人に近付き、友達となり、そして告白させる。まずは電話番号を変更して、それから依頼人に確認の電話をしてみよう。
今日は依頼人から報酬を受け取る日だ。私が報酬を受け取る時は、いつも決まった場所を指定している。その場所とは、墓地だ。小林幸三……つまりはターゲットの墓である。私がそこに行っても怪しまれない場所で、依頼人が来ていても不思議じゃない場所だ。何故なら依頼人も小林幸三の知り合いだから……
墓参りをしていて偶然会ったという事にすれば、誰も違和感を覚えないだろう。だから私は、いつもお墓の前で報酬を受け取る事にしている。
電車で小林幸三の墓地へ向かう。手には目印となる花束を持ち、お墓の前で手を合わせる。指定した時間となり、一人の男が歩いて来た。その男も同じ花束を持っている。依頼人と直接会うのは、この時が初めてだ。男は小林幸三と同い年のように思える。同級生とか?友達?まぁ、どうでもいいか……何か恨みがあり、私に依頼してきたのだろう。
男は私の隣に来て、「ありがとうございました」とボソっと言った。
「すいません。お線香、ありますか?」と私が言うと、男は鞄から線香を入れる長方形の箱を出し、私に渡してくれる。
「どうぞ、それ、全部差し上げます」
「ありがとう」と言って、私はその箱を受け取る。明らかに線香ではない何かが入っていて、私はそれを自分のバッグへ入れた。そして、「お先に」と墓地をあとにする。
依頼人の男がその後どうしたのか知らないが、まぁ私が気にする事でもないだろう。どうせ私はこの場所を離れるし、電話番号も変更する。ショックで引っ越した事にすれば、私がいなくても誰も怪しまない。
私は帰りの電車に乗りながら、流れる景色を眺めていた。そして、小林幸三との思い出を振り返る。
「あっ」と思い出し、私はスマホを見た。そして、スマホに収められている思い出を全て消していく。半年の付き合いだった。友達としてだが、小林幸三と色んな場所へ行き、遊び、色んな感情を共有した記録が、スマホに保存されている。
メールやライン、電話の履歴、そして一緒に撮った写真も消していく。写真の中で小林幸三はいつも笑っており、自分に対して優しくしてくれた思い出が溢れ出してくる。彼が依頼人からどんな恨みを買い、殺しを頼まれたのかはわからない。もしかしたら、極悪非道な人だったのかもしれない。
でも、楽しかった思い出は、揺ぎ無い事実で、殺す目的とはいえターゲットと過ごした日々は凄く充実していた。それこそ、本当の友達のように……思えていたのだ。
「まだまだ甘いなぁ……」と私は涙を零す。「ごめんなさい……幸三さん……」
私はスマホの思い出を泣きながら全て消し、そして涙を拭う。いつもこうだ。自分の特殊能力を利用して殺し屋を始めたはずなのに、ターゲットに感情移入してしまっていつも寂しい気持ちになる。
それなら普通の生活をすればいいではないかと思われるが、そうではないのだ。普通の生活をしていても、告白されたら相手が死んでしまう。逆に私がプロポーズして相手がオッケーしてくれても、相手が事故に遭い死んでしまうのだ。
私が彼氏を作るのを拒むように、世界は動いている。私には一生恋人が出来ない呪いのようなものが掛けられているのだろう。
「大丈夫」と私は自分に言い聞かせる。「これは仕事。どうせすぐに忘れるから……」
そうだ。新しい人が出来たらそちらに感情が移り、すぐに忘れる。だから、次の依頼を受けないといけない。実は次の依頼はすでに私の元に来ている。人を殺して欲しい弱い奴らが私にどんどん依頼してくるのだ。でも、同時進行は無理なので、優先順位を決めて順番に行っている。
「次のターゲットは……」と私は分厚いメモ帳を取り出し、名前を確認した。
「柿木和樹。21歳か……」
私と同い年だ。次はこの人に近付き、友達となり、そして告白させる。まずは電話番号を変更して、それから依頼人に確認の電話をしてみよう。
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