私に告白してきた奴はだいたい事故で死ぬけど、こいつだけはなかなか死なない

ゆみのり

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5 生真面目シンドローム

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 私は懐かしい公園に立っていた。産まれ故郷の公園だ。こんな感じだったっけ?と若干の違和感を覚える。すると、背後から声をかけられて、私は振り向いた。

 その瞬間、聞き慣れたメロディが頭の中に繰り返す。あぁ、朝を告げる音だ。朝?朝って、いつの朝?

「あ……」と、私はヨダレを垂らしながらスマホを見る。もう朝の8時だ。

 私の頭はまだ覚醒しておらず、トロンとした目で部屋を見渡す。ここはどこだ?あ……そうか、と私は思い出した。仕事で何も無い田舎町に来たのだ。

 私は頭をクシャクシャとかき、洗面所へ向かい顔を洗う。なんか、夢を見てたけど、何だったっけ?

 まぁいいや、と私は昨日作り置きしておいたコロッケをチンして食べた。その間もスマホをチェックするが、何の連絡もない。

 どうなってんだ?まさか、連絡先を書いたメモを失くしたとか?でも、そうなると……どうしたものか?再びこちらから出会いに行くべきか?

「う~ん……」と私は腕を組み、悩む。「あんまりガツガツしたら、逆に遠ざかるかもしれない……」

 私は独り言を放ち、今日は何もしないように決めた。このまま連絡が来なければ、日を改めて再び偶然を装い会いに行くとしよう。コンビニでバイトしているみたいだし、それは容易いだろう。客として行くのもいいが、あざとい気がして良い印象を持たれないかも?

 考え出したらキリがないが、まずは友達になれるように、ゆっくりと計画を進めていこう。というわけで、これから二度寝に突入する。慣れない場所での疲れがまだ残っており、まだまだ眠たい。

 私は再び布団に入り、目を閉じた。ウトウトと眠気がやってきて、意識を失いそうになる。まさにその瞬間だ。スマホからメロディが流れてきた。

 なんというタイミング……誰だよ……と、番号を確認しないまま電話に出る。

「もしもし……」と私が言うと、相手は「あの……」と言葉を発する。

 この声、もしかしてターゲットの柿木和樹か?

 二度寝を邪魔されたストレスを感じながらも、私は声を出す。

「もしもし?え?もしかして、昨日の……?」

「あ……はい。すいません。朝から……」

「いえ、あの、昨日は本当に申し訳なかったです。お怪我の方は大丈夫ですか?」

「あ……」とターゲットは言い、「はい、大丈夫です」と続ける。

 何だか緊張しているのだろうか?本当、女性に対して免疫がないようだ。

「連絡もらえて良かった~」

 私はターゲットの緊張をほぐすために、明るい調子で話す。

「連絡来ないのかと思ってました。ちゃんと謝罪したかったのに」

「いえ」とターゲットは言い、「こちらこそです」と電話の向こうでペコペコしている姿が想像できた。

「本当は、昨日のうちに連絡入れようと思ってたんですが……最初はラインにしようかと、友だちに追加しようとしたんですが、何だかそれでは誠意がないかと思いまして……悩んでいる内に夜になって、さすがに夜中に電話するのは悪いし、朝にでもと……」

 なんか、色々と難しく考えて連絡が出来なかったようだ。そこまで真剣に考える必要あるのだろうか?いや、奥手男子にとってはそういうものなのかな?何にせよ、この柿木和樹……柿木さんは真面目な人なのだろう。

「そうだったんですか。そんな事、私は気にしないのに。ラインでも良かったんですよ」

「いや、そういうわけにはいきませんよ!怪我は無かったかもしれませんが、ぶつかったのは事実ですし、後から痛みが出てくるかもしれない……」

「私はぜんぜん大丈夫です」

「良かった」と柿木さんはホッとした様子で言葉を続ける。「もしかして、寝てました?」

 まぁ、二度寝しようとはしていたが……私は「いえ」と言い、「起きてましたよ」と答える。

「それは良かったです。何か、寝起きみたいな声だったもんで……」

 バレている……これから気持ち良い眠りに入ろうとした瞬間だった。寝起きと言ってもいいだろう。ここは、そうだな……ちょっとこの堅い感じを何とかしよう。

「ごめんなさい、実は二度寝しようとしてました」と私は笑う。

「あああ……!度重なる無礼をお許しください!」

 これは冗談か?それとも本気か?

「許しません」

「ええええ!!ど、どうすればいいですか?」

「じゃあ、そうだな」と私は考える。「ご飯、奢ってくれませんか?」

「わ、わかりました」と言った柿木さんは、「どうしようかな……」と呟き、私に訊ねてくる。

「今日は、お昼とか空いてますか?」

 お……!向こうからのお誘いか。こりゃあ、良い。

「はい。今日は一日中空いてます」

「じゃあ、お昼ご飯を奢ります!」と勢いよく言った柿木さんは「あまりお金ないけど……」と弱弱しく付け加える。

「ふふ」と思わず私は笑ってしまった。それは演技ではなく本物の笑いだった。こういうタイプは初めてで、ちょっと楽しい。

「わかりました。じゃあ、お昼ご飯奢ってもらおうかな」

「りょ……了解です」

「それで、どこで何時に待ち合わせしますか?」

「そうだな……」と考えた柿木さんは、しばらく唸った末に「どこがいいですか?」と聞いてきた。

 どうやら優柔不断で決断力が無いようだ。そういう人は割といるから珍しくない。まぁでも、だいたいの男性は私をリードするために決断をするのだが、こっちに聞いて来たのは初めてだ。

「どこって言われてもなぁ……」と私は悩む。実際、まだどこに何があるかわからない。「まだ引っ越して来たばかりだし……」

「そうなんですか」と言った柿木さんは、「じゃあ、十二時に市役所前とかどうですか?」と提案してきた。

 市役所前って……何だかムードも何もないけど……まぁいいか、と私は承諾する。市役所なら手続きの時に行ったし、場所は知っている。

 こうして柿木さんとの食事の約束を取り付け、私は身支度を始めた。
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