私に告白してきた奴はだいたい事故で死ぬけど、こいつだけはなかなか死なない

ゆみのり

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4 桃野百々子の思考回路

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 ターゲットに連絡先を渡せて、私は上機嫌でアパートへと帰っていった。出会いのキッカケというのが凄く難しくて、今回は凄く自然に出来たと思う。我ながらあっぱれだ。

 アパートに着くと、大家さんがタバコを吹かしながら掃き掃除をしていた。そして、「ポイ捨て禁止だよ」とぶっきら坊に言う。

 大家さんは70歳を超えた女性で、身なりはお世辞にも綺麗とは言えない。

「あ、今日から宜しくお願いします」

 私は大家さんに改めて挨拶をした。来たときにも一応挨拶はしたが、印象を良くするためにもう一度。

「あー?」と大家さんは私に近寄り、タバコの煙を顔にかけて、「よーろーしーく」と笑った。

 私は煙を手で祓い、「えへへ」と苦笑いをする。あまり関わりたくない……早く依頼を終わらせて、ここから出て行ってやる。

 コツコツコツと階段を上り、自分の部屋の前で立ち止まりバッグから鍵を取り出す。そして、玄関扉を開けて中に入った。ムワッと鼻にカビ臭さがコンニチハってしてくる。改めて見ると汚い部屋だ……

「よーし、やりますか」

 と、私は気合を入れて袖をまくる。そして、台所でバケツと雑巾を用意して、部屋を隅々まで拭くことにした。これからターゲットが部屋に来るかもしれないのだ、これぐらいはしておかないと!

 ついでに言うと、私は料理もそこそこできる。無駄遣いもしない。私のそんな姿を見たら男性はイチコロだ!文字通り、告白させたら死んじゃうんだけどね。

 このタイミングで掃除をする理由は他にもあった。それは、連絡を待っている時間が凄くもどかしいからだ。ソワソワして、スマホばかり確認してしまう。まるで、好きな子に連絡先を渡した乙女のように……

 1時間後、部屋は驚くほど綺麗になっていた。カビ臭さも消えている。ミッションをクリアした達成感を噛み締めたあと、私のお腹がグ~っと悲鳴をあげた。

「何かあったかな?」

 そう言いながら冷蔵庫に向かうが、何も無いのは分かり切っていた。出かける前に唯一の食料であるパンは食べてしまったし……

 ガチャン、と冷蔵庫を開けるが思った通り何も無い。私は少し考えて、「スーパー行くか」と再び部屋を出た。帰ってきた時は夕方だったので、今はすっかり暗くなっている。

 田舎だから街灯は少なく、スマホのライトで道を照らし歩いた。都会なら何人かの人とすれ違うが、ほんと誰もいない。まぁ、長閑で良いけど。

 初めての道に迷いながら歩くこと1時間、ようやくスーパーに到着する。さすがに疲れた。不便すぎる……

 私は店内に入り、何を買おうか考えた。とりあえず、今現在安い食材を見て、その食材から何を作るか思案しよう。ってことで、ふむふむ、今日はジャガイモと玉ねぎが安い日なのか!よし、コロッケにしようかな。

 ジャガイモと玉ねぎは買う。肉はいらない。パン粉も買って……白ご飯は……と思い、米の袋を見て悩む。重たそうなので止めておこう。調味料は一通り部屋にあるし、まぁ、こんなもんで十分だろう。

 作り置きして、明日の朝もコロッケにしよう。あ、キャベツも買わなきゃ。もう、こうなると米も欲しい!1番少ない量の米を買って帰るとしよう。

 こうして、私は汗をかきながらアパートへ戻ってきた。大人しくコンビニで弁当でも買えば良かったが、それはなんか嫌だったのである。

 そして、予定通りコロッケを作り、食す。味はまぁまぁだ。やっぱり肉も買うべきだったか……と後悔しつつ、お風呂を沸かす。そして、お風呂から出て布団の中に入って眠る準備に入る。

 いや、ちょっとまて。

「連絡、来ねーじゃん!」

 思わず私は何もない部屋で叫んでいた。

「なんかイケそうな雰囲気だったじゃん!なんで来ないの?!忘れてる?!一言ぐらい、何かあってもいいじゃん!」

 私はスマホを睨みつけて独り言を連ねる。こんな事は初めてだった。だいたいの男はその日のうちに連絡をくれたし、連絡をくれなかった人は、私に興味無いフリをして駆け引きをしようとしてた人だ。

 でも、あんな女慣れしてなさそうな人が、駆け引きなんてするはずがない!それは偏見だけど……それにしても、なんで?!

「まさか……」と私は可能性を探った。「柿木和樹は、奥手?」

 そうか……そうかもしれない。だとしたら、失敗した!あの時、私が強引にでもターゲットの連絡先を聞くべきだったのだ!やらかした!

 作戦を練り直す必要があるな……と思いながら、私はスマホの画面を消し、眠りにつく体勢に入った。また明日考えよう……きっと今頃、夜のバイトに行っているのだろう。
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