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9 さようならへのカウントダウン
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公園でデートをしてから、数日が経過した。その間、カズ君のバイトが忙しくてなかなか会う機会は無かったけれど、ラインや電話では毎日やり取りをしていた。
「おはよう」と朝にはラインして、眠るときには「おやすみなさい」と言って布団に入る。
友達以上恋人未満とはこういう事だろうか?と思いつつ、早く私に告白してきて欲しいなと、私は切実に願っていた。……と言うのも、手元にあるお金が月日が経つにつれてどんどん減っていくからだ。銀行口座は持っておらず、いつも手渡しで報酬を受け取る。そのために私は常に現金を持ち歩いているのだ。凄く危険な行為だとは思うが……仕事柄口座を持つと色々とマズい気がする。
依頼が完了するまで収入はないので、お金は減る一方だ。それでも、まぁ、切り詰めればあと二年ぐらいは生活できるからいいけど。
「そろそろかな」
と、昼食を食べ終えた私は呟き、スマホでダークウェブに入り、殺し屋と依頼者を繋ぐサイトにログインした。そろそろこの依頼は片付きそうなので、次の依頼が来ていないか確認する。すると、数件の依頼が入っており、ターゲットの個人情報などが記されていた。皆、そんなに死んでほしい人がいるんだなと、私は心を無にしてサイトを閉じる。また、あとでじっくりと見よう。
私は食べ終えたあとの食器を洗い、布団の上に座る。そして、その場に寝ころび、「なんでこんな生活してんだろ……」と言葉を漏らしていた。無意識に出た言葉から、無意識に過去の出来事が思い起こさせられる。
私がこの能力を最初に発動させてしまったのは、小学校6年生の時だ。幼馴染の男友達が居て、その子とは中学校が別々になることが分かっていた。いつもなら他の友達と複数人で遊ぶのだが、卒業間近になり、その幼馴染の男の子と二人だけで遊ぶことになる。誘ってきたのはその子で、きっと誘った時から私に告白する事を決めていたのだろう。
その子と近くのデパートに行ったりして、楽しい思い出を作った。そして夕方になり、いつも遊ぶ公園で私たちは将来の事について会話をする。それから帰る時間となり、別れ際に彼は……
昔の事を思い返していると、突然スマホが鳴った。電話の相手はカズ君だ。私はビックリしながらも電話に出る。
「もしもし、モモちゃん?」
「もしもし、お疲れ様。バイト終わったの?」
「ううん。今は休憩中」
そう話すカズ君の後ろから、恐らくバイト仲間と思われる人達の声が聞こえる。微かに聞こえるその声に集中すると、何となく何を言ってるのかが聞き取れた。
“ほら、誘っちゃえよ”
“男を見せろ!”
“ぜったい上手くいくって!”
“今日は早めに上がっていいから!”
“脈ありだって!ぜったい付き合える!”
あぁ、なるほど、と私は思った。きっと、私の事をバイト仲間に話して、バイト仲間はカズ君の背中を押しているのだろう。まぁ、向こうは面白がっているだけだろうけど、私にとっては都合が良い。
「どうしたの?電話、なんで?」
私が何も気付いてない調子でそう言うと、カズ君は出会った時のように、「あ……あ……」と言葉を詰まらせた。
「昼飯は食べたの?」
という問いかけに、「今食べてる途中」と返す。
「食べてる途中に電話してくれたんだ。ありがとう」
私がそう言って笑うと、カズ君も釣られて笑った。そして、咳払いをしてカズ君は言う。
「あの……バイト終わってから、会えないかな?」
ついにキタ……これはもう間違いないだろう。私に告白するつもりだ。私は少し間を置いて、返事をする。
「うん、いいよ。じゃあ、バイトが終わったら連絡ちょうだい」
「あ……うん!」とカズ君は力強く頷き、「じゃ、またね」と続ける。
「うん、またね。バイト、頑張ってね!」
「あ、ありがとう!じゃ、切るね」
「うん。連絡待ってる」
と言って、私は再び「またね」と言葉を放ち、電話を切った。
またね、カズ君。
さようなら
「おはよう」と朝にはラインして、眠るときには「おやすみなさい」と言って布団に入る。
友達以上恋人未満とはこういう事だろうか?と思いつつ、早く私に告白してきて欲しいなと、私は切実に願っていた。……と言うのも、手元にあるお金が月日が経つにつれてどんどん減っていくからだ。銀行口座は持っておらず、いつも手渡しで報酬を受け取る。そのために私は常に現金を持ち歩いているのだ。凄く危険な行為だとは思うが……仕事柄口座を持つと色々とマズい気がする。
依頼が完了するまで収入はないので、お金は減る一方だ。それでも、まぁ、切り詰めればあと二年ぐらいは生活できるからいいけど。
「そろそろかな」
と、昼食を食べ終えた私は呟き、スマホでダークウェブに入り、殺し屋と依頼者を繋ぐサイトにログインした。そろそろこの依頼は片付きそうなので、次の依頼が来ていないか確認する。すると、数件の依頼が入っており、ターゲットの個人情報などが記されていた。皆、そんなに死んでほしい人がいるんだなと、私は心を無にしてサイトを閉じる。また、あとでじっくりと見よう。
私は食べ終えたあとの食器を洗い、布団の上に座る。そして、その場に寝ころび、「なんでこんな生活してんだろ……」と言葉を漏らしていた。無意識に出た言葉から、無意識に過去の出来事が思い起こさせられる。
私がこの能力を最初に発動させてしまったのは、小学校6年生の時だ。幼馴染の男友達が居て、その子とは中学校が別々になることが分かっていた。いつもなら他の友達と複数人で遊ぶのだが、卒業間近になり、その幼馴染の男の子と二人だけで遊ぶことになる。誘ってきたのはその子で、きっと誘った時から私に告白する事を決めていたのだろう。
その子と近くのデパートに行ったりして、楽しい思い出を作った。そして夕方になり、いつも遊ぶ公園で私たちは将来の事について会話をする。それから帰る時間となり、別れ際に彼は……
昔の事を思い返していると、突然スマホが鳴った。電話の相手はカズ君だ。私はビックリしながらも電話に出る。
「もしもし、モモちゃん?」
「もしもし、お疲れ様。バイト終わったの?」
「ううん。今は休憩中」
そう話すカズ君の後ろから、恐らくバイト仲間と思われる人達の声が聞こえる。微かに聞こえるその声に集中すると、何となく何を言ってるのかが聞き取れた。
“ほら、誘っちゃえよ”
“男を見せろ!”
“ぜったい上手くいくって!”
“今日は早めに上がっていいから!”
“脈ありだって!ぜったい付き合える!”
あぁ、なるほど、と私は思った。きっと、私の事をバイト仲間に話して、バイト仲間はカズ君の背中を押しているのだろう。まぁ、向こうは面白がっているだけだろうけど、私にとっては都合が良い。
「どうしたの?電話、なんで?」
私が何も気付いてない調子でそう言うと、カズ君は出会った時のように、「あ……あ……」と言葉を詰まらせた。
「昼飯は食べたの?」
という問いかけに、「今食べてる途中」と返す。
「食べてる途中に電話してくれたんだ。ありがとう」
私がそう言って笑うと、カズ君も釣られて笑った。そして、咳払いをしてカズ君は言う。
「あの……バイト終わってから、会えないかな?」
ついにキタ……これはもう間違いないだろう。私に告白するつもりだ。私は少し間を置いて、返事をする。
「うん、いいよ。じゃあ、バイトが終わったら連絡ちょうだい」
「あ……うん!」とカズ君は力強く頷き、「じゃ、またね」と続ける。
「うん、またね。バイト、頑張ってね!」
「あ、ありがとう!じゃ、切るね」
「うん。連絡待ってる」
と言って、私は再び「またね」と言葉を放ち、電話を切った。
またね、カズ君。
さようなら
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