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5 背負っている大剣の柄を握り、鞘から抜こうとするが、腕の長さ的に上手く抜けなかった

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 学校に着くと、すでに隆太くんは教室の中にいた。教室の中ではモンスターの話をしているクラスメイトが沢山いる。昨日は蛇のモンスターを倒したとか、大きいガのモンスターを倒したとか、いや、もうそれモンスターじゃなくて普通の動物では?とか思いつつも、僕は隆太くんに話しかけた。

「おはよう。入部届っていつ出すの?」

 僕がそう言うと、隆太くんは鞄から入部届を出して机に置く。

「今から行こうぜ!」

「今から?部活はまだじゃないの?」

「いや、冒険部は朝から活動しているんだ。朝練ってやつだな」

 何の練習?と思いつつ、まぁそういう事なら朝の会が始まるまで時間はあるし……と、僕と隆太くんは教室を出た。

 冒険部の部室は一階の使われていない教室で、戸のガラス部分に“冒険部!!”と大きな字で書かれている。僕たちはノックもせずにガラガラと扉を開けて、顔を覗かせた。そこには奇抜な恰好をした生徒が三人と、定年間近のお爺ちゃんみたいな顧問の先生がいて、こっちを見る。

「おはようございます」

 僕と隆太くんが揃ってそう言うと、背中に大きな剣を背負ってマントをつけた体格のいい男子生徒が「おはよう」と返してくれた。他の二人はこっちを見るだけで特に挨拶はない。二人の方の一人は女子生徒で、魔女のような黒いローブに身を包んでいる。もう一人は武闘家のような恰好をした男子生徒で、腕を組んで目を瞑っていた。

「何の用だ?」

 と体格のいい男子生徒……名札には雲野と書かれている。三年生のようだ。その雲野さんが、僕たちを睨む。

「俺たちは今、放課後の冒険に向けてミーティング中だ。用が無いなら出て行け」

 僕は彼らの恰好を見て、ちょっとこの人たちと距離を取りたくなっていた。しかし、隆太くんはそうではなく、寧ろ目を輝かせて興奮を言葉にする。

「カッケーーー!!!」

 雲野さんの眉がピクリと動く。なんか嬉しそうだけど笑うのを我慢している気がする。

「か、カッコ良さはどうでもいい。俺たちは人類の平和のために戦っているだけだ。そのために装備を身にまとっているにすぎない!」

 雲野さんは背負っている大剣の柄を握り、鞘から抜こうとするが、腕の長さ的に上手く抜けなかったのだろう。一旦背負っている鞘を下ろして改めて抜いた。そして、大剣を掲げて言う。

「魔王を倒すのは、俺たちだ」

 そこまで言ったところで顧問の先生が言う。

「これこれ。校舎内で剣を抜いちゃいかん。没収じゃな」

 先生のその発言に雲野さんはピシっと頭を下げて、「勘弁してください」と訴える。

「今回は特別じゃぞ」

 この部室で普通なのはこの先生と僕かもしれない……と思っていると、先生は続けて言う。

「力は自慢するためのものではない、誰かを守るためにあるものだ。ヒヨッコ達よ。高みを目指したいのなら、それを心得、精進するのじゃな。フォフォフォ」

 あぁ、この先生も大概な気がしてきた。この人たちの師匠みたいなポジションだろうか?イベントで死にそうな感じがする……

 早くこの場から去りたいな……と思っていると、隣にいる隆太くんが床に手をつき土下座みたいな事をする。

「お……俺を弟子にしてください!!師匠!!」

 いやいや、そこまでする?

「ほほぉ、おぬしら、このパーティに加わりたいという事か?」

 その先生の言葉に雲野さんと他二人も反応する。何か三人とも嬉しそうだけど笑うのを堪えている。きっと、入部希望で訪れた人はこの人たちの恰好やノリを見て去って行ったのだろう。だから、仲間を探していたのかもしれない。僕たちのこともただの冷やかしとか、すぐに出て行く生徒だと思っていたが、隆太くんがこんな反応をしたものだから、きっと今めちゃくちゃ嬉しいに違いない。

「お、は、うん。え?入部き……パーティに加わりたい?そうなんだ!そ、そうか!だが、冒険はキツイぞ?お前らが足手まといにならなければいいがな」

 雲野さんはアタフタしながらそう言った。入部希望って言いかけてたじゃん!とか思いつつ、僕と隆太くんは入部届を先生に渡す。先生はそれを受け取り、この瞬間から僕たちは冒険部の一員となった。

 どうなることやら……
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