異世界からめちゃくちゃモンスターが転生されてくるんだけど、いい加減誰かなんとかしてください

ゆみのり

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10 戦える者が弱者を守る。それが勇者だろ?

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 二時限目の授業が始まり、さすがに皆慣れてきたのか、今回は普通に授業が進行した。そして休み時間となり再び運動場へ出る。すると、すでに冒険部の人達は来ていた。何故か今回も花林がいる。そんなにこの部活に魅力があるのか?僕にはよくわからない。

 雲野さんは僕たちの顔を見て、「行くぞ」と目で合図をする。そして、皆は一斉にコカトリスに向かい走り出した。僕はそんな彼らの後姿をボーっと突っ立って見ている。すると花林が僕に言う。

「勇次も行かなきゃ」

「え?なんで?」

「いや、援護するように言われてたじゃん!」

 そこで、「あ!」と僕は思い出した。そういえば煙幕を五個受け取っている。これでコカトリスの視界を奪えと言われていた。う~ん……やるしかないかぁ……と僕は遅れて皆を追う。

 そして、試しに一個、コカトリスに向かって投げた。煙幕はコカトリスの前で落ちて、破裂音と共に煙がコカトリスの視界を奪う。そして、雲野さん達が自分たちの持つ必殺技を披露した。僕は遠くにいるので彼らがどんな技名を叫んでいるのかわからないが、隆太くんはきっとグルグルスラッシュを発動しているのだろう。なんか、クルクルと槍を振り回しながら回っている。

 コカトリスはダメージを負い、不明瞭な視界のなかで我武者羅に反撃を試みる。しかし、その攻撃は当たらなかった。皆、ヒット&アウェイで必殺技を当てては離れている。そろそろ煙幕の効果が切れそうになってきて、雲野さんが僕の方を見た。

「勇次くん!お願い!」

 僕は指示に従い、ポケットから煙幕をもう一個取り出す。そして投げた。再び煙幕はコカトリスの視界を奪い、皆が必殺技をお見舞いしている。煙幕のせいで遠くからだとどんな攻防が繰り広げられているのかわからないが、コカトリスの悲鳴が聞こえているので、こちらが勝っているのだろう。

 それにしても……と僕は疑問が浮かんだ。ここまで劣勢なのに、どうしてコカトリスは逃げようとしないのだろうか?

 再び煙幕の効果が切れそうになり、今度は隆太くんが僕を見る。

「勇次!!頼む!!」

「あ……うん」と僕は煙幕を取り出すが、ポロっと地面に落としてしまった。その瞬間、煙幕が自分の足元で弾ける。僕は慌てて煙幕の外に出た。煙たくてむせてしまう。目も痛い。

「勇次!!何やってんだ!」

 隆太くんはそう叫び、こちらを振り向く。すると、煙幕の効果が切れたコカトリスは、隆太くんに向かって尻尾を振った。僕は「危ない!!」と叫び、隆太くんは間一髪で攻撃を避ける。

 いや、あんなの当たったらタダじゃすまないだろう……これは部活でやる事なのか?こういうのは自衛隊とか、警察に任せるべきではないのか?

「いったん離れろ!!」

 雲野さんはそう指示を出し、皆はコカトリスから距離を取った。そして、雲野さんは隆太くんのほうに駆け寄る。

「大丈夫か?」

 と言った雲野さんに、隆太くんは腕を見せる。

「ちょっとカスっただけです」

 僕も隆太くんに近寄って、腕を見てみる。すると、制服がパックリと切れており、少し血が滲んでいた。

「ご、ごめん」

 自分がミスをしたせいで、隆太くんを怪我させてしまった……しかし、謝る僕に隆太くんは言う。

「いや、敵から目を逸らした俺が悪いよ」

「でも、僕が落とさなければ……ごめん」

「気にすんなって」

 隆太くんは笑顔を見せて平気だという事をアピールする。僕は雲野さん達を見て口を開いた。

「もう、やめませんか?これは部活でやる事じゃない!命がけだ!あとは国に任せれば……」

 正直、ナメてた。今までモンスターを討伐する人をゲーム感覚でやっているという風にしか思っていなかったが、結構命がけだ。そもそもこれまで出会ってきたのが雑魚モンスターばかりだったから……モンスターなんて楽勝なんだろうと思っていたし、害虫程度の存在としてしか認識が無かった。

 ニュースでモンスターが暴れていたとかやっていても、映画を見ている感覚でしかなかった。でもこれは他人事ではない……こんな事に今頃気付くなんて、なんて自分は愚かなのだろうか……

「国に任せていたら、手遅れになる」

 ネガティブモードに入っている僕に、雲野さんがそう言った。

「戦える者が弱者を守る。それが勇者だろ?」

 真理さんは隆太くんの腕に手の平をかざす。そして、ブツブツと何かを唱えた。その瞬間、手の平が光って隆太くんのキズが治ったのである。回復魔法?すごい……

 しかし、真理さんは直後にその場に座り込んだ。息切れしている。魔法を使うのも楽じゃないようだ。

「ありがとうございます」

 と隆太くんは言い、コカトリスの方を見る。しかし、雲野さんが制止する。

「もうやめときなさい」

「でも……まだ必殺技は使えます!あと二回は……」

 隆太くんがそうアピールすると、やり取りを見守っていた羽田さんが口を開く。

「いや、無理だ。コカトリスは回復している。全員の火力を合わせても、もう一気に倒す事はできない。これは一度撤退したほうがいいだろう」

「僕のせいですか?」

 僕がそう言うと、羽田さんは「まさか」と言ってくれる。そして、離れた所で見ていた所峰先生が僕の方に寄ってきて言葉をくれる。

「よくあることじゃ、気にするな。そろそろ次の授業が始まる。この辺で切り上げたほうが良さそうじゃな。あとは国の対応を待つとしよう……手遅れになる前に、退治してくれるといいんだが……」

 何だか皆が気を使ってくれている……この部活を小馬鹿にしていた自分が恥ずかしい……
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