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VI
優等生は魔法使い?!
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「有栖川れな…?聞いたことない。違うクラスに居るの?」
藤堂梨々香は有栖川れなの存在を知らない…?
「え、このクラス…。」
「居ないし。疲れてるんじゃん?最近。よく寝たら?」
有栖川れなは…居ない?有り得ない。居ない訳無い。
「ところで…、今日うちで遊ばない?」
しばらくの沈黙の中、最初に話を再開したのは藤堂梨々香だった。
「良いの?じゃあ、あさやんも!」
「うん、呼ぼっ。」
「え、テスト一位の天才は、美玲でしょ?」
藤堂梨々香の家に着いて、単刀直入にれなの話になった。しかし、藤堂梨々香の家は豪邸で、そんな話をするき
「?!」
「私じゃない…。れなだよ…。」
「さっきから…誰なのそれ。そんな人うちの学校居ないって。」
「同感。美玲、何か変わった事、最近無かった?」
あ、この前の電車の…。
「そういえば…この前、早田駅にいつの間にか…居た…ような…。」
「ただそれは美玲が不注意だっただけでしょ。」
「俺もそう思う。」
二人に言われてしまった。…となると…不審な事は…。
「あ!そういえば!小泉市三十ってどこにあるかなぁ…?」
「??…ここの近くだけど?」
小泉市小泉町三十の七。そこは、誰が見たとしても、空き地としか言いようがなかった。
確かに住所は合っているはず。間違っているはず無いのに…。
魔法の力なのか現実なのか分からない!
「美玲…?どうした?なんかいつもと違う?大丈夫?」
余計心配させてしまう。いつも通りに…。
「大丈夫!私は。きっと…。…きょ、今日はちょっと疲れてるみたい、家に帰ってす、すぐ寝るね、バイバイ。また、明日…。」
「??!…本当に平気なの?ダメならうちで休んでいっ…」
私は、二人の顔もろくに見ずに、その場を後にした。
私の部屋。ここなら、誰も来ない。一人。落ち着ける。
「私はただの人間。魔法など、使えな…。」
「使えるでしょ?」
「ひぃぃぃ?!」
「やっほ、久しぶり。種明かしの時間だよ。」
「れ、れな…??!な、何でここに…?!」
そこには、髪が長く、私のようにどこかいつもと違う少女が居た。
「美玲はいつも私と遊んでくれた…。私も美玲と遊んだ…。でも、私は居ない。」
「どういう事?!居ないって…?!」
「有栖川はもう居ない…。私は実在しない…。私は美玲。美玲は私…。ふふふ。これで分かったかなぁ?」
「え…?!れなが私…?」
「そう、転校生など、居ない。私は美玲。美玲は私。魔法使いは、私。有栖川れな、つまり私は美玲の理想の存在で今ここに在る。…今はね。」
「…。」
状況が全く読めない…。れな…は私…?そんな訳…無い…私は…あれ…私の名前、何だっけ…?
「魔法使いは努力を知らない。人間は努力をして成長する。魔法使いは、何でも簡単に成し遂げる。その魔法使いが、「努力をする世界」に居てはいけない。」
「!!!?私をこの世界から追い出したいの…?」
「ふふふ。…私を助けてくれるよね…。まぁ何でも良いや…。さぁ、この世界に別れを告げて!…さぁ!!!」
「俺、美玲が好きだよ。付き合ってくれる?」
「西園寺さん、いや、美玲っ!もし付き合うんだったら、きちんと、女の子らしくね!………頑張れ!」
あさやん…!
梨々香ちゃん…!
「嫌だぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!」
私はこの二年間、誰よりも頑張ったような気がする。気づけば、もう、トップ校の高校生になっていた。努力すれば、報われるんだなぁ…。
今日は入学式で、私が入る高校の一学年は、八十人という、少人数の学年だった。
「生徒、呼名!」
私の名字は西園寺なので、比較的早く呼ばれる。声が出るか心配だ。
「青木拓!」
「はい!」
「明石麻帆!」
「はい!」
「有栖川れな!」
「はい!」
…嘘…。れな…?
どこから見てもれなだった。
れなは、私の空想の人物じゃ…?
「西園寺美玲!」
「…は…い…。」
私の声だけは体育館に響かなかった。
「れな…?」
その日の帰り、私はれなに声を掛けた。
「?…始めまして!んん?どこかで会った…?」
「み、美玲、私だよ?!」
「…うーん、ごめんね、分からない…。えーっと…うーんと…。」
「わ、私こそごめんね、人違いだったかな…。」
「じゃ、じゃあね!」
「うん、また明日!」
*
あの日から、一ヶ月が経とうとしていた。
今日も果物を持って、親友が治療を受けている病院に見舞いに行く。
「れな!…どうか…どうか!…助かって…。また一緒にどこにでも遊びに行きたい!…神様…!」
「いつも来てくれて、ありがとうね。れなは、いつも美玲ちゃんの話をしてくれたよ。」
れなのお母さんは今日も優しい声をしていた。
「そんな…してくれた…って…過去形にしなくたって…。」
「うう…そうだね…美玲ちゃん、今日もありがとう。また明日…、明日も…。うう…。」
「はい、また明日も…!明後日も…!毎日、来ます!」
「果物…欲しい…。」
れなは、最近少しずく良くなっている。このまま、元気になれば良いのだが。
「れな?!分かった、はい、今日はオレンジだよ!」
しかし、れなは何もかも思い出すことは出来なくなった。
有栖川れなと西園寺美玲は、ある事件に巻き込まれた。
「お嬢ちゃん達、僕と一緒に遊ばない?」
いかにも怪しい人物が、小泉駅の手前、緑川駅に電車が停車した瞬間、車内で声を掛けて来た。その瞬間、周りの人達が、心配そうにこちらを見た。
「嫌です。」
れなは、きっぱり言った。尊敬する。そして、ここで一旦緑川駅で降りれば、問題無かったのかもしれない。
「良い度胸してるねぇ、じゃあここで殺してあげるよ…。」
犯人は、常に睡眠薬を常備しており、私はそれに反抗する前に、大人しく飲まされていた。れなは、恐怖で声も体も動かなくなっていた。
「何やってるんですか?!大人しく、その少女から、離れなさい!」
周りの人が、声を掛けてくれたようで、れなは少し安心していた。
しかし、最悪なタイミングだった。
小泉駅に着いて、ドアが開いた時だった。
「分かった。良いだろう。」
そう言って、れなの胸ぐらを掴み、駅のホームに出た。その瞬間、ドアが閉まった。
「じゃあな。命は助けてやるよ。」
れなは、思い切り柱に投げられた。
人が集まる。そして、大きなニュースとして、世の中に報道された。
有栖川れなは、記憶喪失になった。
何もかも覚えてない。私のことも。どうすれば助けられるだろう。
魔法を使えば…!
「れな、どうか治って…!」
しかし、私は魔法をかけることはしなかった。いや、出来なかった。魔法をかけて、記憶が戻っても、私との思い出を全て無くしてしまうことになる。何故なら、この世界では魔法使いという正体を明かしてはいけないからだ。もちろん、この魔法をかけたところで、れなのお母さんの記憶からも、私、「西園寺美玲」は消滅する。
魔法は、使ってはいけない、この手で、れなを救ってみせる…!
*
私は変なプライドはすてた。私は魔法使い。そして、人間。
私は今この世界に居る。「努力をする世界」。ここに居るのは悪くない。むしろここが好き。
有栖川れなは、復活した。
れなにとっての「西園寺美玲」という記憶と引き換えに…。
私は努力する。
努力すればいつか報われる。
いつか、また、親友として、ライバルとして、一緒に笑える時が来るまで。
私は塾講師になった。きちんと就職した訳では無い。
親戚、友達に趣味として、塾の教室を開いている。
もちろん私の大好きな町、小泉町で…!
藤堂梨々香は有栖川れなの存在を知らない…?
「え、このクラス…。」
「居ないし。疲れてるんじゃん?最近。よく寝たら?」
有栖川れなは…居ない?有り得ない。居ない訳無い。
「ところで…、今日うちで遊ばない?」
しばらくの沈黙の中、最初に話を再開したのは藤堂梨々香だった。
「良いの?じゃあ、あさやんも!」
「うん、呼ぼっ。」
「え、テスト一位の天才は、美玲でしょ?」
藤堂梨々香の家に着いて、単刀直入にれなの話になった。しかし、藤堂梨々香の家は豪邸で、そんな話をするき
「?!」
「私じゃない…。れなだよ…。」
「さっきから…誰なのそれ。そんな人うちの学校居ないって。」
「同感。美玲、何か変わった事、最近無かった?」
あ、この前の電車の…。
「そういえば…この前、早田駅にいつの間にか…居た…ような…。」
「ただそれは美玲が不注意だっただけでしょ。」
「俺もそう思う。」
二人に言われてしまった。…となると…不審な事は…。
「あ!そういえば!小泉市三十ってどこにあるかなぁ…?」
「??…ここの近くだけど?」
小泉市小泉町三十の七。そこは、誰が見たとしても、空き地としか言いようがなかった。
確かに住所は合っているはず。間違っているはず無いのに…。
魔法の力なのか現実なのか分からない!
「美玲…?どうした?なんかいつもと違う?大丈夫?」
余計心配させてしまう。いつも通りに…。
「大丈夫!私は。きっと…。…きょ、今日はちょっと疲れてるみたい、家に帰ってす、すぐ寝るね、バイバイ。また、明日…。」
「??!…本当に平気なの?ダメならうちで休んでいっ…」
私は、二人の顔もろくに見ずに、その場を後にした。
私の部屋。ここなら、誰も来ない。一人。落ち着ける。
「私はただの人間。魔法など、使えな…。」
「使えるでしょ?」
「ひぃぃぃ?!」
「やっほ、久しぶり。種明かしの時間だよ。」
「れ、れな…??!な、何でここに…?!」
そこには、髪が長く、私のようにどこかいつもと違う少女が居た。
「美玲はいつも私と遊んでくれた…。私も美玲と遊んだ…。でも、私は居ない。」
「どういう事?!居ないって…?!」
「有栖川はもう居ない…。私は実在しない…。私は美玲。美玲は私…。ふふふ。これで分かったかなぁ?」
「え…?!れなが私…?」
「そう、転校生など、居ない。私は美玲。美玲は私。魔法使いは、私。有栖川れな、つまり私は美玲の理想の存在で今ここに在る。…今はね。」
「…。」
状況が全く読めない…。れな…は私…?そんな訳…無い…私は…あれ…私の名前、何だっけ…?
「魔法使いは努力を知らない。人間は努力をして成長する。魔法使いは、何でも簡単に成し遂げる。その魔法使いが、「努力をする世界」に居てはいけない。」
「!!!?私をこの世界から追い出したいの…?」
「ふふふ。…私を助けてくれるよね…。まぁ何でも良いや…。さぁ、この世界に別れを告げて!…さぁ!!!」
「俺、美玲が好きだよ。付き合ってくれる?」
「西園寺さん、いや、美玲っ!もし付き合うんだったら、きちんと、女の子らしくね!………頑張れ!」
あさやん…!
梨々香ちゃん…!
「嫌だぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!」
私はこの二年間、誰よりも頑張ったような気がする。気づけば、もう、トップ校の高校生になっていた。努力すれば、報われるんだなぁ…。
今日は入学式で、私が入る高校の一学年は、八十人という、少人数の学年だった。
「生徒、呼名!」
私の名字は西園寺なので、比較的早く呼ばれる。声が出るか心配だ。
「青木拓!」
「はい!」
「明石麻帆!」
「はい!」
「有栖川れな!」
「はい!」
…嘘…。れな…?
どこから見てもれなだった。
れなは、私の空想の人物じゃ…?
「西園寺美玲!」
「…は…い…。」
私の声だけは体育館に響かなかった。
「れな…?」
その日の帰り、私はれなに声を掛けた。
「?…始めまして!んん?どこかで会った…?」
「み、美玲、私だよ?!」
「…うーん、ごめんね、分からない…。えーっと…うーんと…。」
「わ、私こそごめんね、人違いだったかな…。」
「じゃ、じゃあね!」
「うん、また明日!」
*
あの日から、一ヶ月が経とうとしていた。
今日も果物を持って、親友が治療を受けている病院に見舞いに行く。
「れな!…どうか…どうか!…助かって…。また一緒にどこにでも遊びに行きたい!…神様…!」
「いつも来てくれて、ありがとうね。れなは、いつも美玲ちゃんの話をしてくれたよ。」
れなのお母さんは今日も優しい声をしていた。
「そんな…してくれた…って…過去形にしなくたって…。」
「うう…そうだね…美玲ちゃん、今日もありがとう。また明日…、明日も…。うう…。」
「はい、また明日も…!明後日も…!毎日、来ます!」
「果物…欲しい…。」
れなは、最近少しずく良くなっている。このまま、元気になれば良いのだが。
「れな?!分かった、はい、今日はオレンジだよ!」
しかし、れなは何もかも思い出すことは出来なくなった。
有栖川れなと西園寺美玲は、ある事件に巻き込まれた。
「お嬢ちゃん達、僕と一緒に遊ばない?」
いかにも怪しい人物が、小泉駅の手前、緑川駅に電車が停車した瞬間、車内で声を掛けて来た。その瞬間、周りの人達が、心配そうにこちらを見た。
「嫌です。」
れなは、きっぱり言った。尊敬する。そして、ここで一旦緑川駅で降りれば、問題無かったのかもしれない。
「良い度胸してるねぇ、じゃあここで殺してあげるよ…。」
犯人は、常に睡眠薬を常備しており、私はそれに反抗する前に、大人しく飲まされていた。れなは、恐怖で声も体も動かなくなっていた。
「何やってるんですか?!大人しく、その少女から、離れなさい!」
周りの人が、声を掛けてくれたようで、れなは少し安心していた。
しかし、最悪なタイミングだった。
小泉駅に着いて、ドアが開いた時だった。
「分かった。良いだろう。」
そう言って、れなの胸ぐらを掴み、駅のホームに出た。その瞬間、ドアが閉まった。
「じゃあな。命は助けてやるよ。」
れなは、思い切り柱に投げられた。
人が集まる。そして、大きなニュースとして、世の中に報道された。
有栖川れなは、記憶喪失になった。
何もかも覚えてない。私のことも。どうすれば助けられるだろう。
魔法を使えば…!
「れな、どうか治って…!」
しかし、私は魔法をかけることはしなかった。いや、出来なかった。魔法をかけて、記憶が戻っても、私との思い出を全て無くしてしまうことになる。何故なら、この世界では魔法使いという正体を明かしてはいけないからだ。もちろん、この魔法をかけたところで、れなのお母さんの記憶からも、私、「西園寺美玲」は消滅する。
魔法は、使ってはいけない、この手で、れなを救ってみせる…!
*
私は変なプライドはすてた。私は魔法使い。そして、人間。
私は今この世界に居る。「努力をする世界」。ここに居るのは悪くない。むしろここが好き。
有栖川れなは、復活した。
れなにとっての「西園寺美玲」という記憶と引き換えに…。
私は努力する。
努力すればいつか報われる。
いつか、また、親友として、ライバルとして、一緒に笑える時が来るまで。
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