ソード・オブ・ホワイト–魔術至上主義の世界で最強剣士を目指す–

インドアな梨

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第2話 呼び出し

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 剣士差別が根強く残るナバス学園の洗礼を受けたアルバ。
 そんな中でナキは声をかけ、ラエルは机の文字を消そうと働きかけたりと2人の存在もあってアルバは孤独化を免れた。
 入学から1ヶ月程が経ち、ナキとは下校を共にしている中で親交が深まり、ラエルとも休憩時間に会話したりと良好な関係を築いていた。
 学園ではまだまだアルバへ対し軽蔑の目はあるものの、親交が深まった3人はその日、昼食を共にしていた。

「学校にも少しだけど慣れてきたね。最初はどうなっちゃうかと思ったけど……」
「そうですね。2人がいなかったら今頃もっと酷いことになってたかも」
「なんかあったら俺が守ってやるから安心しろよ!」

 ホッとした表情で話すラエルと、相変わらずコワモテの顔からは想像もできない爽やかな笑顔を見せるナキ。
 そんな2人にアルバは顔を掻き、若干苦笑いを浮かべながら返答を返していた。
 すると、会話を交わしている3人に見覚えのない生徒が声をかける。

「アルバ君だよね? ちょっと来てもらえるかな」

 艶のある黒髪にスラッとした体型からは、一目で貴族育ちと分かる雰囲気が滲み出している。
 腕を組み、アルバに裏のある笑みを浮かべながら立っている生徒。その態度に気に食わなかったナキが、若干苛立ちを見せた様子で詰め寄った。

「誰だお前? 見たことねえ顔だな」
「君に用はないんだ。ごめんね」
(何だこの低庶民のような見た目は。貧乏が移りそうだ)
「おい……!」

 まるで相手にしていないような生徒の振る舞いに更に腹を立てるナキ。
 感情まかせに生徒の胸ぐらを掴もうとするナキを腕で遮り止めたのは、他でもないアルバだった。

「ナキ。大丈夫」
「でっでもよお……」
「気持ちは嬉しいけど、僕に用があるみたいですし」

「話が早くて助かるよ」

 相変わらず裏のある笑顔を振り撒く生徒。
 ラエルはそんな様子を心配そうに見つめていた。
 アルバはラエルにも大丈夫と視線で伝えると、生徒と共に教室を出ていった。

――

「で、なんの用ですか」

 人気《ひとけ》のない校舎裏へと到着したアルバはさっそく本題へと切りこんだ。

「君さ、ラエルちゃんとどんな関係なの?」
「はい?」

 どこか気持ち悪い笑みを浮かべながら話す生徒。アルバは予想外の質問にキョトンとした表情を見せる。そんな反応が気に触ったのか、眉毛をつりあげ苛立ちを見せる生徒は、右手に紫色の魔力を注ぎはじめた。

「はい? じゃないよ。魔術が使えない雑魚なんだから、歯向かわない方がいいよ」

 笑みを崩さずに淡々と話す生徒は、右手に注いでいた魔力を球の形へと変化させ、アルバの全身を舐めるように確認した。

「えっどういう事ですか……」
「まあ、とぼけるなら吐かせるまでだ」

 そう吐き捨てると状況についていけず立ち尽くしていたアルバへと接近し、腹の辺りで右腕を引くとそのまま魔術球をアルバの腹へと強く押し込んだ。
 
「かはっ……!」

 不意の一撃に対応出来ず、全身に電流のような激痛が走ったアルバは意図せずに胃液を吐いた。
 押し込まれた魔力球はそのまま腹付近で弾けると衝撃波が発生し、アルバはくの字の体勢のまま後方のゴミ捨て場まで吹き飛ばされた。

「………………っっ!」
「あっごめんごめん。剣士さん相手に少し強くしすぎちゃったかも。生きてる?」

 ゴミの下敷きになっているアルバへ不敵な笑みを浮かべ近寄る生徒は続けて話した。

「地位のない剣士が魔術学園に来ると何も出来ないって事がこれでわかったかな?」
「…………黙れ」
「あ? 君、今なんて?」
「…………僕がいつか……こんな世界を変えてやるって言ったんだ……」
「君、本当にうざいな。1回死んでくれよ」

 地面に這いつくばり歯向かうような発言をするアルバに、生徒は退屈そうな表情浮かべ返答を返すとアルバを無表情のまま何度も踏み潰した。
 ゴミ捨て場周辺に低く鈍い音が繰り返し響く。

「ふう」

 生徒はアルバの応答の声がなくなるまで踏みつけると、汗を拭い血で汚れた靴をゴミ捨て場へ捨て、その場を去ろうと背を向けた。

「…………ラエルを……どうするつもりですか」

 激しく流血し、灰色の制服には血のシミが無数に確認できる。酸化している部分からは踏み潰され続けた時間を感じ取れる。
 そんなアルバは力なく生徒へと問いかける。

「きっ君まだ喋れるのか。まあ、俺も犯罪者になるつもりはないからさあ。せめてもの情けで教えてやるよ」

 アルバは何も出来なかった自分の無力さを知ると共に、目の前に立つ余裕綽々で話す生徒に激しい屈辱感を覚えた。
 既に気絶寸前のアルバ。不意をつかれたとはいえ、完膚無きまでに叩きのめされたその身体を地面へと倒しながら、生徒の発言へ耳を傾けた。

「あいつ可愛いだろ? 俺貴族の出身でさ、奴隷として買おうかなって。だから君と交際でもしていたらどうしようかと思ってね」
「…………」
(そんな事は絶対にさせない。今ここで僕が……くそっ、身体が、動かない……。意識も、朦朧として……)

 アルバは発声しているつもりだった。しかしその想いは声にはなっておらず――

(僕は……また守れないのか)

 アルバは自身の暗い過去を思い出すと、気を失い時を刻む。
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