前世知識は最強!異世界改革!

namisan

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第30話 王都の拠点と、空飛ぶ専用機(プライベート・ワイバーン)

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 陞爵(しょうしゃく)パーティーから数日後。
 俺たちは王都の高級宿の一室で、今後の作戦会議を開いていた。
「……ふぅ。背中が痛い」
 ロイドが硬いソファで腰をさすっている。
 彼はこれまで、商務次官としての公務があるたびに王都へ来ては、定宿に泊まったり、狭い借家で寝泊まりしていた。
 子爵時代ならそれでもよかった。だが、今は違う。
「父上。そろそろ限界ですね」
「ああ。伯爵ともなれば、面会客も増える。この狭い宿の応接室では、相手に失礼になってしまうし、何より機密保持が難しい」
 俺は頷き、一枚の地図をテーブルに広げた。王都の不動産情報だ。
「買いましょう、屋敷を。それも、王城に近くて箔がつく一等地の物件を」
「買うって……王都の屋敷は高いぞ? 金貨数千枚は下らん」
「今のエルガレア商会の利益なら、ポケットマネーで買えますよ」
 俺は指先で地図の一点を叩いた。
 
「狙いはここ。かつての名門公爵家が手放した、王城の真裏にある広大な空き屋敷です」
 ***
 即断即決。俺とロイドはすぐにその屋敷を買い取った。
 長年放置されていたため庭は荒れ、外壁は蔦に覆われていたが、骨組みはしっかりしている。
 何より立地が最高だ。王城へ徒歩で登城できる距離にある。
「セバス、リフォームだ。エルガレアの新都心と同じスペックにするよ」
「承知いたしました。『劇的ビフォーアフター』をお見せしましょう」
 俺たちの魔法が唸りを上げた。
 古びた石壁は研磨されて白く輝き、窓はすべて最新の「透明ガラス」に入れ替えられる。
 もちろん、上下水道を完備し、ボイラー室を設置して24時間いつでも入れる「大浴場」と「水洗トイレ」を実装した。
 さらに、執務室には最新の通信魔道具(高価なアーティファクト)を設置。
 わずか3日で、お化け屋敷は『エルガレア伯爵王都邸』という名の、最新鋭オフィス兼迎賓館へと生まれ変わった。
 完成した屋敷に、早速、遊びに来たバーノンやガリウスたちが目を丸くする。
「なんじゃこの快適さは! 冬なのに部屋が暖かいだと?(床暖房完備)」
「このトイレ……我が家のより立派ではないか!」
 ロイドは広々とした執務室の革張りの椅子に座り、満足げに頷いた。
「これで、腰を据えて国政に取り組める。……大臣たちとの密談も、ここなら誰にも邪魔されん」
 王都に確固たる「城」を持ったことで、ロイドの発言力と活動範囲は飛躍的に向上した。
 エルガレア邸は、夜な夜な国の重鎮が集まる「影の会議室」としての機能を持ち始めたのだ。
 ***
 だが、問題はまだある。
 王都と領地の「距離」だ。
 馬車で数日の距離は、多忙な俺たちにとって致命的なタイムロスだ。
「父上。もう一つ、買い物をしました」
 俺は屋敷の裏庭――広大な芝生の庭園に、ロイドを案内した。
 そこには、3つの巨大な影が降り立っていた。
「グルルル……ッ」
 鋼鉄のような鱗を持つ、翼ある竜。ワイバーンだ。
 それも、レンタル用の痩せた個体ではない。筋肉質で、艶のある最高級種だ。
「なっ……! これは軍用種じゃないか! どこで手に入れた!?」
「騎士団長のゼガード伯爵に口利きしてもらいました。『リバーシ』の特別指南と引き換えにね」
 俺はワイバーンの首を撫でた。
「エルガレア伯爵家専用の『プライベート・ワイバーン』です。これで、王都と領地をいつでも自由に、わずか数時間で行き来できます」
 これまではギルドで予約し、空きを待つ必要があった。
 だがこれからは、思い立った瞬間に飛べる。
 俺は3頭にそれぞれ名前をつけた。
 * 1号機『ハヤテ』: ロイド専用の高速移動用。
 * 2号機『カゴ』: 荷物輸送用。緊急の物資輸送に使う。
 * 3号機『クロ』: 俺とセバスの移動用。
「屋敷の裏庭を『発着場(ポート)』として登録も済ませました。……父上、これで平日は王都で公務、週末は領地で家族サービス、という生活が可能です」
「お前なぁ……。王族だって、こんな贅沢な使い方はしてないぞ」
 ロイドは呆れつつも、ハヤテの鞍に手を置いた。
 その顔には、新しい翼を手に入れた少年のような高揚感があった。
「だが、助かる。これで、私は二つの場所で全力を尽くせる」
 王都の「拠点」と、空の「足」。
 この二つを手に入れたことで、エルガレア伯爵家は物理的にも政治的にも、王国の中心へと躍り出た。
 ロイド・フォン・エルガレア。
 国を動かす「空飛ぶ伯爵」の伝説は、ここから加速していく。


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