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第47話 飽和する領都と、新農業都市アリアの誕生
しおりを挟む王都での百貨店オープンから数ヶ月。
エルガレア領都は、前例のない「成長痛」に苦しんでいた。
「若様、また移民です! 仕事を求めて他領から流れてきた人々で、宿場が溢れかえっています!」
「住宅が足りません! 家賃が高騰し始めています!」
執務室で報告を聞きながら、俺は窓の外を見下ろした。
かつては閑散としていた領都の通りは、人で溢れかえっている。
経済が回るのは良いことだが、インフラが追いついていない。
一方、食料事情も逼迫(ひっぱく)していた。
既存の農業拠点である「レストバレイク」は、村長ガンツの尽力でフル稼働しているが、物理的な距離があり、これ以上の急激な拡張は難しい。
「……人が余っている領都。食料が足りない市場。……答えは一つだ」
俺は地図を広げ、領都のすぐ東側に広がる未開拓の平原を指差した。
「ここに作るぞ。領都と双子になるような、新しい都市を」
***
翌日、俺は土木部隊とセバスを引き連れ、東の平原に立っていた。
広大な荒れ地だ。だが、土壌は悪くない。
「ここを『大規模農業都市アリア』とする」
「農業……都市、ですか? 村ではなく?」
測量係が尋ねる。
「ああ。村レベルの規模じゃない。最初から数万人規模が住める『都市』として設計する」
俺の構想はこうだ。
領都に隣接させることで、あふれた人口を吸収する「ベッドタウン」としての機能を持たせる。
そして、住人たちにはそのまま、目の前に広がる広大な農地で働いてもらう。
「職住近接」の巨大農業コンビナートだ。
「セバス、やるぞ。地形を変える」
「承知いたしました。……大規模な整地ですな」
俺とセバスは杖を地面に突き立てた。
『アース・フラット(大地よ、平らになれ)』
『クリエイト・ロード(道よ、刻まれろ)』
ズズズズズ……!!
地響きと共に、荒れ地が水平にならされ、碁盤の目状に区画整理されていく。
これまでの自然発生的な農村とは違う、最初から計算された「グリッド(格子)状」の農地だ。
「一区画を大きく取れ! 将来的に大型機械(トラクター)を入れることを想定してだ!」
俺は指示を飛ばす。
中央には居住区と商業区。その周囲を放射状に広大な農地が取り囲む。
水路も直線的に引き、効率的な灌漑(かんがい)システムを構築する。
***
数週間後。
領都の広場に、一枚の立札が掲げられた。
【新都市アリア、入植者募集】
・住居完備(新築アパート)
・農地貸与
・農業指導あり
・領都への通勤馬車あり
この条件は、職と家を求めていた移民たちにとって、蜘蛛の糸どころか黄金の綱だった。
「家があるだって!? しかも仕事も!」
「領都のすぐ隣なら、買い物にも困らねえぞ!」
応募は殺到した。
俺は彼らを面接し、即座にアリアへと送り込んだ。
彼らはやる気に満ちている。自分たちの新しい街を作るのだから当然だ。
***
建設中のアリアの仮設庁舎にて。
俺は集まった代表者たちを前に宣言した。
「この農業都市アリアのトップ(市長)は、当面の間、私リック・フォン・エルガレアが兼任する!」
どよめきが起きる。
領主の息子であり、商会の実質的なトップである俺が、直接指揮を執るというのだ。
「レストバレイクはガンツ村長に任せているが、ここはゼロからのスタートだ。私の持つ『新しい農業知識』を、ダイレクトに反映させる」
俺は黒板に、今後の生産計画を書き出した。
* 小麦の増産: パンとケーキの原料確保。
* 甜菜(てんさい)の大量栽培: 砂糖の自給率100%を目指す。
* 大規模酪農: 牛乳プラントの建設。
「いいか、ここはただの農村じゃない。エルガレアの胃袋を支え、世界へ食料を輸出する『戦略基地』だ。……君たちの働きが、国の食卓を変えるんだ!」
「「「おおおおおっ!!」」」
歓声が上がる。
こうして、領都の隣に巨大な弟分が生まれた。
農業都市アリア。
それは、リックが直接管理する、近代化された農業の実験場であり、最強の食料庫となる場所だった。
俺は窓から、開拓されゆく大地を見渡した。
春になれば、ここは緑の海になるだろう。
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