人間になりたい妖精さんは機械仕掛けの騎士〈ギアット〉で世界を旅する。

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妖精さん、山の麓へ行く

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「おうおう、一つずつ答えるからしっかりと聞くんじゃぞ。まず、ワシらの寿命じゃが……わからんのじゃ」
「えっ……と?」
「というのもな。ワシは長いこと生きとるが、寿命が尽きるのが早い者もおるんじゃよ。かといって子供の頃に死ぬものはおらん。全員、大人になってからじゃな」

 (妖精と言うくらいだから、もっと長生きするんだと思ってたけど……)

 セイツのイメージとしては、日本にいた頃の童話に出てくる精霊だった。不確かな存在で人に悪戯をする生き物。
 だが、この世界の妖精はそうではないようだった。

 だからこそ、口伝という不安定な方法で後世に伝えられる為、先祖の時代の事が詳しくわからなかった。尤も、この禁所にはそれが文字で記録されている。だが、母の仔以外が入ることは基本的に許されないため、伝わることはなかった。


「では、僕も妖精なんですよね? ということは急に死んだりする……と?」
「ふーむ。ワシも詳しくは知らんが……母の仔は普通の妖精種とは存在が違うみたいでのぅ。しかも羽なしじゃ。例外になるんじゃとワシは思っとる」
「例外……」

(そういえは羽なしだっけ、僕。なんで羽がないんだろう。明らかに不便じゃないか?)

 元来、妖精種はその背中に生えている一対の羽に魔力を分け与え、浮遊することによって高い機動力を得ていた。これは外敵から身を守るため、もしくは便利に生活を送るためにと、母なる木スヒャーリからの贈り物……というのが妖精たちに伝わっている伝説だった。

 だが、その母なる木スヒャーリから直接生まれたセイツには羽がなかった。 稀に妖精種の中に羽がない状態で生まれる者も存在していたが、特に蔑まれたりはされていない。

 ただ、不便なだけだった。基本的に高い木の上に住居を作るのな妖精だ。そのため羽なしが生まれると妖精種たちは力を合わせ、その不幸な妖精を世話するのだが……残念なことに大半は早死にしてしまう。これも原因は不明だが、妖精たちは特に気にしてはいなかった。



「母の仔がいつ死ぬのかワシにはわからんの。あまり村には詳しい事が伝わっておらんのじゃ。わかっておるのは、昨日も教えた通り母の仔が何か大きなことを為す。それだけじゃな」
「そうですか……」
「すまんのぅ。ワシたちも今まで碌に調べておらんのじゃ。情けないじゃろう?」
「そ、そんなことないですよ! 今だって食事を持ってきてくれてるし、住む家までくれたし……十分です!」

 センスイが沈んだ顔でセイツにそう言ったが、セイツは反射的にそう答えた。
 その言葉でセンスイはいつもの顔に戻り、「ありがたいもんじゃわい」とお礼を言った。


センスイは仕事があると言って帰っていった。「また夜に食事を持ってくる」と言っていたためセイツは今からとても楽しみだった。


 「……整理もあらかた終わったかな。……そういえばここらで一番高い山を教えてもらうのを忘れてたけど、まぁいっか」

 (それもまぁ、探しながら行けばいいかーークライツさんの日記に書かれていた場所に)


 ……出来れば夜までには戻りたいな。そんなことを考えながらセイツは小屋からランタンを持ち出し、一応とばかりに貰った水色の魔石を服のポッケにしまい込む。

 ーー目指すは、山の麓。そこに何が待っているのかわからない。だが、セイツは期待を胸にーー感情は不安を。二つのモノを抱いてセイツは森の中へ足を踏み出した。
 
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