ハーレムでハブられてるけど、一番愛してる自信ある!

珈琲きの子

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小話

11月22日はいい夫婦の日

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間に合わなかったけどせっかくなので投稿するよ!


――――――――――――――――――



「おい、ベルネ。出かけるぞ」
「はぁい!」

 と景気よく返事をしたものの、ヒロとハルナの準備が全然できてない。二人の荷物が入った大きなトートバッグを手に取ろうとして、ハヤト様がそれを遮った。

「今日は二人」

 伸ばした手をひょいとハヤト様に握られて、優しく引かれる。

「そ、そうなんですか?」

 と僕は引かれるままに早足でついて行って、玄関に行けば、ショウコ様とアヤコ様がヒロとハルナを抱っこして立っていた。

「頼んだから」
「「はいはい、いってらっしゃーい」」
 
 ハヤト様が一言かければ、お二人は全てを把握しているらしく、手をひらひらと振って僕たちを見送った。アヤコ様がこそりとハヤト様に「報告よろしくね」と言っていたけれど、何の報告だろう。
 
 外に出れば、車の助手席にエスコートされて、なんだか気恥ずかしいまま車に乗り込んだ。ハヤト様が車を発進させれば、どこかぎこちない空気が漂う。

「……久しぶりですね。二人って…」
「そうだな」
「え、っと、どこに行くんですか?」
「さぁな」

 黙ってついてこい、と言う事らしい。僕は頷いてハヤト様にすべて任せることにした。

 近所の道は何となく覚えたけれど、車に乗って移動すれば全く方向感覚がなくなってしまう。ひらがなはやっと読める様になったけれど、漢字はさっぱりだから、道にある標識は読めないものばかりだ。

 ハヤト様はコインパーキングに駐車すると、僕を外に出る様に促した。

「散歩するからな」
「散歩ですか…?」
「ほら、行くぞ」

 住宅街を抜ければ、徐々に道を行き交う人が増えていく。道の端には元の世界にもあった露店のようなお店が立ち並び、掛け声が上がっていた。甘かったり辛かったり色んないい匂いが漂っている。お腹がぐぅとなったのを耳聡くハヤト様に気付かれてしまった。
 ハヤト様は僕が最近嵌っているたこ焼きを買って手渡してくれる。僕の口の中には唾が湧き出てきていた。
 こういう場で食べるときは座る必要がないらしい。皆立ったまま食べ物を口に運んでいる。僕もやっと使えるようになったお箸で何とかたこ焼きを半分に割って、口に放り込んだ。

「ーーっ!!!」

 熱い! 熱い!
 口に入れたものを出すわけにもいかず、涙目になりながらも熱さに耐えていると、ハヤト様は若干呆れ顔ながらも冷たい飲み物を買ってきてくれた。

「バカ…冷ましてから食えよ」
「すみません…」

 次は何度もふーふーと息を吹きかけた。もう食べれる、と口を開いてたこ焼きを迎え入れようとすると「ベルネ」と呼ばれて、ハヤト様を仰いだ。なんだろう。
 ハヤト様の顔が近づいてくるのをじっと見ているとハヤト様の口が開いて……ぱくり、と僕が大事に冷ましたたこ焼きを口に収めてしまった。

「あっ!」
「…ん、んまぃ」

 抗議しようとしたけれど、ハヤト様が目を細めて嬉しそうに笑っているものだから、そんなことできるはずがない。それに、これはかの「あーん」と言われるやつなのでは、と考えて反対に頬が火照ってしまう。

「お、おいしいですね」

 真ん中で割ったたこ焼きの半分をハヤト様、残り半分を僕、と交互に食べた。口を開けるハヤト様にドキドキしながらも、何となく餌付けしてるようで心がほんわかした。

「ん。…腹ごしらえもしたし、行くか」
「はい!」

 屋台の間を縫うように歩くと、そこには大きな二本の赤い柱とそれを繋ぐように渡された太い棒が二本。これを鳥居と呼ぶらしく、ここから先は神様を祭っている場所なのだという。そんな神聖な場所に入っていいのだろうか。

 恐る恐る足を踏み入れるけれど、ハヤト様は何事もないようにさっさと通り過ぎた。
 
「こっち」

 ハヤト様が進む方向を指す。人が一層多くなり、小股で歩くような感じになる。

「ほら、見ろよ、ベルネ」

 足元ばかりを気にしていた僕にハヤト様が声をかけた。ハヤト様の顔を見て、ハヤト様の視線が向く方に顔を向ければ、そこは真っ赤だった。
 木々が真っ赤に染まった葉に覆われている。下に広がる池にもその姿が映り、その空間は赤に埋め尽くされていた。
 少し目を上げれば、雲一つない青い空。そのコントラストにぐっと胸を締め付けられる。

「綺麗…」
「な」
「…はい」
「せっかくこっちに来たんだしよ、いいとこ見てもらわねぇと」
「ハヤト様…ありがとうございます…っ…」

 僕はそれからずっと「綺麗」「すごい」とハヤト様の袖を引っ張って同意を求めつつ、馬鹿みたい上を見ながら歩いた。何度か躓きそうになったけれど、ハヤト様が支えてくれる。目が合う度にハヤト様は少し頬を赤くして気まずそうな顔をしていたのは、僕がはしゃぎすぎて、ハヤト様に恥ずかしい思いをさせてしまったからだと思う。
 申し訳ないと思いながらも、この興奮は抑えきれなかった。

「ベルネ」

 少し人気の途切れたところで、ハヤト様が僕の手をぐいと引いた。あっという間もなく、ハヤト様の腕の中に収まってしまう。
 髪を撫でる様に降りてきた指に顎を持ち上げられて、ハヤト様の穏やかに細められた瞼の奥の熱を持った瞳と視線がかち合う。ふ、と唇が触れて、ジワリとハヤト様の体温が伝わってくる。強めに押し付けられた
それは一瞬で離れて行ってしまった。

「…ぁ…」

 名残惜しい。身体の芯がわずかに熱を持ち始めてしまって、ハヤト様の体が離れていくのを服を掴んで阻止してしまった。その手をやんわりと外され、強く握られる。

「あとでな」

 と耳元で囁かれれば昂るばかりなのに。
 縋るように見上げた僕にふっと笑いを漏らしたハヤト様はとっても意地悪だ。

「もう少しデートな?」

 そうか。ハヤト様は僕と二人になれる機会を作ってくれたんだ。全然そんな素振りも見せず、何も言ってくれないから、僕はいつも振り回されてばかりだ。
 でも、それが嬉しい。
 僕はもう一度ハヤト様の胸に飛びついて、背中に腕を回した。少しふらついたけれど、ギュっと包み込んでくれるハヤト様。

「この、バカやろーが…」

 とため息交じりに降ってきた言葉が優しくて、僕はハヤト様の胸に頬を擦りつけた。


 後で知ったのだけれど、ハヤト様とデートした日は11月22日で『いい夫婦の日』といわれる日だったらしい。ハヤト様が気にしてくれていたなんて嬉しくて、その日はずっと頬が緩んで仕方がなかった。



 その数か月後、「異世界から嫁を持ち帰りました」という題の本がこたつの上に置いてあるのを発見した。手に取ろうとしたけれど、サッとハヤト様に隠されてしまった。
 気になる。後でアヤコ様に聞いてみよう。

 そして後悔するのはまた別の話…。
 
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