ハーレムでハブられてるけど、一番愛してる自信ある!

珈琲きの子

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小話

ハヤト様が優しいんです。

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魔王討伐後、ベルネがハヤトの世界に行く前のお話し。



~~~~~~~~




 勇者ハヤト様が魔王を倒され、早3ヶ月。
 モンスターの活動も落ち着きを見せ、世界には平和が戻ってきていた。
 勇者ハーレムのメンバーは僕の知らない内に国へ帰ってしまったらしい。あれだけハヤト様のエクスカリバーに執着していたのに、どういう風の吹き回しだろう。
 
 ただ、僕は家に帰ることもできず、神殿の一室に軟禁状態になっている。
 というのも、僕に掛けられた呪いが全て解けていないからだ。一度外に出たいと漏らせば、ハヤト様に「モンスターが一斉に襲って来ても助けねぇからな」と言われて、自分の立場を理解した。結界の張られた神殿の中にいるからこそ、無事でいられるのだと。
 もちろん、その結界を張っているのはハヤト様だから、僕はハヤト様に感謝を述べると共に謝り倒した。
 機嫌を直してくれたけど、案の定その夜は色んな意味で虐め倒された。
 ハヤト様が貰ってくれないと、僕の嫁ぎ先がなくなってしまいそう。それこそ色んな意味で。
 
 けれど、家事しか能のない僕はいつか捨てられてしまうんだろうな…。胸が痛い。
 もしかすると、ハヤト様を助けたことで僕が瀕死状態になったから、その罪滅ぼしとして付き合ってくれてるのかもしれない。そんな風に考えてしまえば、気分は沈んでいく一方だ。
 恋をすると気持ちの浮き沈みが激しくて困る。幸福と絶望に挟まれて、忙しくてたまらない。

 体を重ねてしまえば、幸せだけを感じられるから、ハヤト様とする行為は恥ずかしくはあるけれど大好きだ。

「…ぁ…ああ…もう…ぅ…ん、あぁ…」

 ハヤト様の上で僕が乱れるのを、ハヤト様はだた眺めている。不規則に下から突かれ、その度に悶える僕をその漆黒の瞳に映して愉しんでいる。意地悪だ。
 行為の始めこそ、多少の羞恥心はあるけれど、熱く見つめられて優しくキスされて、ハヤト様が中に入ってくれば、僕の理性は軽く飛んでしまうのだ。
 自ら腰を振る淫乱な姿をハヤト様に見られて、ゾクゾクするようになった僕は既に新たな扉を解放済み。これもまた悩みのタネ。

「…ハヤト、さま…ぁ…」
「ベルネ」

 うっとりと髪を撫で梳かれて、熱っぽい眼差しで射抜かれれば、背中を快感が駆け上る。それだけで、中に在るハヤト様を締め付けながら、仰け反って達してしまう。
 荒く息を吐く口を塞がれて押し倒されて、ハヤト様のターン。ガツガツしたセックスではなくて、僕のイイところをじっくりと確実に責め立てる、濃厚なセックス。
 最奥に押し付けて、ゆっくりと揺らして、キスして、愛撫して。その甘さに僕は蕩けるだけ。幸せの絶頂が訪れるのだ。

 行為が終われば、心も体も満たされる。溢れんばかりの感情を伝えたくて、どうしても言いたくなってしまう。

 ――「大好き」
 
 って。
 これを言うと、ハヤト様は「バーカ」って言いながらも、ギュッと抱きしめてくれる。ハヤト様、大好き。


 けれど、後2つ呪いを解けば完全回復、というところでちょっとした事件が起きた。

「食欲がない!?」

 大声を上げて慌てふためいているのは、僕が滞在させてもらっている部屋を管理している神官のラスール様。食事とか日用品とかを持ってきてくださる有難いお方。

「はい…。胸が悪くて、食べられないのです」
「困ります! あの方に知れたら、なんと言われるか!」

 ラスール様はハヤト様シンパだ。ハヤト様の強さとカッコよさに惚れて、ハヤト様のためならと僕の世話まで担ってくれている。でも、少々僕に当たりがキツイ。理由は明白。僕が落ちこぼれだから。

「ハヤト様に心配をかけないように、まだ話していません」
「ならいいですが、あまり大事にしないでください。ようやく呪いも残り二つ。ハヤト様もやっと元の世界に戻れるのですから。このまま黙っているように」
「え…? 元の世界に?」
「ええ。元の世界に戻られる意志は固くていらっしゃいます。私としてはこちらにいて下さるならば、これほど光栄なことはありませんが、ハヤト様の意志は絶対です。それを貴方が引き留める形になっているのですから、くれぐれもこれ以上邪魔をなさらないで下さい」
 
 引き留める? 僕が先延ばしさせてしまっている?

「そんな…」

 魔王を倒してから、ハヤト様は元の世界に戻るなんて一言も言っていなかった。いや、僕に気を使って言わずにいたのかもしれない。解呪が終われば、帰郷されるなんて…。
 僕を置いて帰ってしまうのだろうか。愛されてると思っていたのは気のせいだったんだろうか。頭の中がグルグルする。それに合わせて景色までグルグルと回っているように感じる。気持ち悪い。
 なぜか平衡感覚まで失って、立っていられなくなった僕はその場に座り込んだ。冷や汗がでる。吐きそう。
 ラスール様が何やら悲鳴みたいなのを上げてたけれど、その声も遠くなる。

「ベルネ!」

 ハヤト様の声だけははっきりと聞こえて、僕を支えてくれた温かい腕を必死につかんだ。



 お願い。僕を置いて行かないで、ハヤト様…。





 
 ◆





「妊娠しているということです」
「え…」

 僕は倒れたらしい。しかもその原因は妊娠であり、悪阻を起こしていたからだという。寝耳に水である。
 でも当然と言えば当然。ヤルことをヤって、毎回中に聖液を注がれているのだし。
 ただ、わざわざハヤト様がいない時にその話をするということは、ハヤト様には言うなということなんだろう。どうしていいのかわからない。だって僕もまだ混乱の真っ最中なのだから。

 カチャリとドアが開き、ハヤト様が戻って来た。

 ラスール様は「くれぐれも内密に」と一言残してハヤト様と入れ替わりで部屋を出て行った。

「大丈夫か?」
「はい! ピンピンしています」
「バカ、嘘つくんじゃねぇよ。顔色わりぃんだから、まだ寝とけ」
「……はい…。ありがとうございます」

 僕の肩を軽く押してベッドに寝かせると、布団をかけてくれる。ハヤト様のちょっとした気遣いが何とも言えず嬉しい。

「今日はナシだな」

 ふぅとため息を吐きながら、額にポンとハヤト様の大きな手が乗せられる。何が『なし』なのかはわかりきっている。

「ハヤト様、大丈夫です。早く解呪してしまってください。僕はその後でゆっくり休めばいいですから」
「後の二つは大した呪いじゃない。せいぜい何もないところで躓くか、鳥の糞が降ってくるぐらいだ」

 うわ、地味に傷つく奴だ。でもひたすら続くと確実に病む。最後の最後まで痛いところを突いてくるのがさすが魔王というべきか…。

「でも、早く呪いを解いて、ハヤト様も早く元の世界に戻りたいですよね?」
「まぁ。特に急ぐこともねぇよ」
「でも…」
「おい、ベルネ。俺がおまえに無理させてまであっちに戻りたいと思うようなクズだ、って言いたいんだな?」
「違います! 決してそういう訳じゃなくて…」

 ちょっと前まではクズに片足を突っ込んでいたけれど、今のハヤト様はそんな人じゃないってわかってる。
 ただ、ハヤト様に妊娠したと知られるのが怖い。異世界の人間と作った子供なんていらないって言われてしまったら、知ったとしても置いて帰ると言われてしまったら…。
 それならハヤト様に打ち明けないまま、さよならを言った方が僕の心を守れそうな気がするのだ。国からもらった報奨金でなんとか一人でも育てられるはず。

「なら、そんなこと気にすんな」

 でも、ハヤト様がそう言ってくれるなら、最後に少しだけ甘えたい。少しだけハヤト様と過ごせる時間を増やしたい。大切にしたい。

「ハヤト様、……大好きです」
「…ったく。余計なこと気にしてんじゃねぇよ、バーカ」

 そう言いつつも僕の頭をガシガシと撫で、大きくため息をついてから、僕の手をギュっと握った。  


 それから二日三日と経っても僕の体調は一向に回復しない。当たり前だ。だってこれは悪阻で、これから徐々に酷くなる可能性が高いのだから。 

「おまえ、何隠してる」

 鋭いハヤト様は、食欲がなくて自分でもびっくりするほど青白い顔の僕を問い詰めてきた。ハヤト様が怒っているのは僕を心配してくれてるからだって言うのは分かる。でも、話せない。話したくない。

「ステータスがおかしいことになってんのと関係あんのか?」
「…おかしいこと、ですか?」

 僕にはハヤト様が見ているステータス画面というものを残念ながら目にすることができない。

「鑑定したら、おまえのステータスにカッコ書きで数字が追加されてるんだよ」
「数字がステータスに…?」
「…見えないんだったよな。なんて説明…」

 ハヤト様が何かを思いついたらしく、空中で何かを操作したかと思えば、ベッドに乗り上げて僕を脚の間に挟むようにして後ろに座った。

「これで見えるだろ」

 ふっとハヤト様の頬が僕の耳に触れる。後ろからハグされるような格好。触れた背中からトクトク心臓の音が伝わってくる。この体勢……幸せ過ぎる。顔に熱が集まってきて困る。

「おい、聞いてんのか?」
「え、は、はいッ! こ、これがステータス画面?」
「そ」

 確かに僕の目の前に半透明の四角い窓が浮いていた。すごい。他の人にも見せられるようにできるんだ。チートってどこまで凄いんだよ。

【ベルネ・シュミッツ(17)】
種族   人
職業   勇者の嫁
属性   尽くす系男子(OOS)
LV   1
HP   23/23 (320/320 458/458)
MP   5/5  (54/54 26/26)
STR  3   (6 10)
VIT  3   (7 8)
……

 勇者の嫁? 僕が? 

「ほら、ここな?」

 ハヤト様が同じ画面をのぞき込んで、問題の箇所を指さした。そう今はそこを気にしている場合じゃない…。
 で、でも、これって…明らかにお腹の子のステータスじゃ…。
 ひやりと背中に汗が伝う。気持ちの悪さもあるけれど、ハヤト様にバレたらどうしよう、という思いの方が強い。罪悪感と不安に苛まれる。
 でも、二人分? ま、まさか――双子!?

「ベルネ?」
「あ、いえ…なんでしょうね、これ。アハハ」
「…………隠してるよな?」
「うっ…」

 半目のハヤト様のこめかみには青筋が浮き出ている。答えようがなくて僕が黙っていれば、ハヤト様はいらいらとした空気を放ち始めてしまった。こわい、殺気こわい!

「……待てよ。これ、二人分のステータスにも見え……でもそんなわけ…」

 嫌な方向に考えを巡らしている。
 でも、ハヤト様はこの世界で男性が妊娠するって知らない。だから黙っていれば…。

「子供出来たとか、ありえないよな?」
「…………」

 『大当たり~』って心の中では叫んでしまっている。正解正解大正解!
 眉を寄せつつハヤト様はジーっと僕の横顔を覗き込んで、僕を窺っている。僕はその視線から逃げるように顔を逸らした。
 どうしよう。違いますって言えばいいのに、ハヤト様との間に子供ができたことを報告したい気持ちも心の片隅にあって、はっきり否定できない。それに、お腹にいるこの子たちに存在を否定したことが聞えてしまったら、と思うとできなかった。
 僕はもぞもぞとハヤト様の腕の中から出ると、ハヤト様と向かい合う様に座った。

「ベルネ?」
「………できました」
「…おい?」
「子どもが、出来たんです。ハヤト様の…」
「………は…?」
「ここはハヤト様の世界とは異なる法則が働いているんです。だから僕のお腹にはハヤト様の子供がいるんです!」

 もう覚悟は決めた。来るなら来い!
 膝の上で拳を握って、自分を鼓舞させつつ、ハヤト様をギンと見据えた。
 でも、ハヤト様は僕が思っているような顔はしていなかった。切れ長の目を目一杯縦に広げて、いつもは半分隠れている黒目をまるっと晒してしまっている。

「……マジかよ…」

 何やら考える様に口元を押さえたハヤト様。
 そう来たか…。予想はしていたけれど、実際反応されると辛い。

「…すみません。黙っていて」
「なんで、早く言わねぇんだよ…。おまえは肝心なことをいっつも…ったく」
「元の世界に戻るのに、今言ったら困られると…」
「…困ったも何も、できたもんは仕方ねぇだろ」
「はい…」

 やっぱり要らなかったんだ…。
 一気に身体の辛さが増した。クラクラと眩暈がし始める。

「辛いか?」
「え…?」

 一度離れた僕を引き寄せて、体を支えてくれる。

「無理すんなよ。大事な体なんだからな」

 どういうこと?、と呆然とハヤト様の目を見つめれば、ハヤト様は僕の頭を抱き込んで、僕のこめかみに唇を寄せた。

「妊娠したってことは、この体調の悪さは悪阻なんだろ? もうラスールは知ってんのか? 元の世界あっちで男が出産できる病院なんて聞いたことねぇから、こっちで産まねぇとな…」

 結局延期か、とハヤト様はぶつぶつ言っている。でも、あっちで出産、ってなんの事だろう。

「親父がうるせぇだろうから、言い返せるようにきっちり手順踏むぞ。まず産む前に式挙げて…」
「あ、あの…?」
「あ? まさか、子供産みたくないとか思ってんのか?」
「ち、違います! 産みます! 産みますけど、」
「なら、問題ねぇだろ。このステータス、要するに双子か」
「…ハヤト様、あの…」
「んぁ?」
「…こ、子供産んだ後は…どう、するんですか…?」
「そりゃ、帰るだろ。…あー、4人で飛べるか心配してんのか?」
「えっ…」
「これだけ魔力ありゃ平気だろ。怖がってたってしかたねぇからな」
「……あの…、僕もハヤト様と一緒に…?」
「当たり前…――」

 ハヤト様は何の躊躇もなくそう言った後、少し顔を上げてから僕を半目で見降ろした。確実に何かを怒っている顔だ。

「てめぇ…俺がおまえのこと、置いて帰ると思って妊娠したことも黙ってたんだな?」
「だって…」
「だってもくそもねぇ。どうしておまえは…」

 だって…だって…不安だったんだ。 
 呪いを解くためだけに僕を抱いていたとしたらどうしようって…。そうじゃないと思いながらも、心の片隅に憂いがあった。
 
「…わりぃ…。おまえが悪いわけじゃないな…」

 ハヤト様の指が下瞼を拭う。その指が優しくて、僕は堪らず嗚咽を漏らした。

「…あのな、おまえを連れて帰る準備はとっくに済んでる。実はおまえの実家にも行って、許可貰って来た」
「許可…?」
「多分、元の世界あっちに行ったら、こっちには戻って来れない。ベルネが嫌と言おうが連れて帰るつもりだった。魔王討伐の報酬だしな。でも、おまえの家族がどう思うかわからねぇし、会いに行った」

 結果は何となくわかる。家族として愛されていないとは思わない。ただ、多少の情はあったとしても、必要とされているかと言うと、それはなかったかもしれない。なんとも言えない気分だ。
 
「特に何も言わなかったでしょう?」
「……ああ。まぁ、俺からすれば、説得する必要がなくて良かった」
「…そう、ですね」

 僕の頭を肩口にギュっと抱き寄せて、ハヤト様は勢いよく息を吐いた。

「ベルネ、俺が家族になる…。それにあっちに行けば俺の家族もいるしよ。それがおまえの家族になる」
「…ハヤト様…」
「だから、おまえは余計なこと心配せずに、俺についてこればいいんだよ」

 あぁ。
 ハヤト様の声が優しい。優しくて甘い。
 余計に涙は止まらなくて、ハヤト様の服を濡らしてしまう。嬉しくて嬉しくて、堪らないんだ。

 僕の顔を覗き込んできたハヤト様がチュッと音を立てて僕の唇に吸い付いて、僕はそのままゆっくり押し倒された。角度を変えたキスが降ってきて、その度に鼻から吐息が漏れる。

「…激しくはしねぇから。…ただ、辛くなったら、すぐ言えよ」

 キスの合間に鼻先が触れる距離でハヤト様が囁く。頷けば、また唇を塞がれて、体中が暖かな幸せに満たされていく。うっとりと僕は目を瞑った。


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