蝶と共に

珈琲きの子

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第二部 第一章

心地いい劣情

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 ベッドに降ろされるのと同時にキスが降って来る。ゆったりと重ね合わせられた唇が離れると、アルが再び額にキスを落としながら、

「ティーロ、いい?」

 と聞く。
 毎回セックスをする前に聞かれるけれど、実は少し返事をするのが恥ずかしい。俺を想ってくれてのことだとは分かっているけれど、アルとなるべく視線を合わさずに小さく「うん」と答えるのが精いっぱい。
 そんな俺を見てアルはふわりと笑う。その微笑みがちらりと視界の端にうつると、アルが愛しくて愛しくて胸が切なくなる。お互いにボタンに手をかけ外すときに心臓が嬉しそうにトクトクと弾んでしまうのは、もう条件反射になってしまった。
 若干強張った体を唇と指でゆっくりと解されて息が上がり始めれば、アルは俺の陰茎の先端に指を這わせる。

「アル……俺も」

 身を起こして体を寄せる。アルのものに手を添えると、アルは俺のものと一緒に包み込むように手を置いた。
 アルの手の動きに促されるように動かせば、全身を巡る様な快感が溜息を吐かせる。

「ティーロ」

 少し掠れた声が俺を呼んで、腰の奥に痺れるような感覚が走る。目を合わせれば、惹かれるように唇を触れ合わせた。

「ん、ふ……は、」

 息を継げば、アルが俺の後ろ髪を指で梳き上げるようにして引き寄せる。いつもは優しいアルのわずかな強引さ。アルに求められている気がして昂る気持ちが抑えられなくなる。
 陰茎を擦る力が強くなると、全身を埋め尽くすような快感に頭の芯が熱に浮かされた。

「ティ、かわいい」

 そっと囁かれつつ、力の抜けた体を横たえられる。枕元に置いていた瓶の中にある琥珀色の液体を指に纏わせて、アルは俺の後孔を丹念に解し始める。
 ここ最近、セックスをしていて痛いという感覚を味わったことがない。体中にキスをされ、その口からは「かわいい、きれい」という言葉が何度も零れる。入れて欲しいと泣きだしそうになるまで、アルに体も心も解きほぐし尽くされてしまうのだ。

「……入れるね」

 髪を掻き上げつつ問うてくるアルには色気が溢れていて、その姿に胸が締め付けられてキュンと音が鳴りそうだった。
 押し当てられた先端は火傷しそうなほどに熱く、アルが我慢してくれていたのだとわかる。

「アル、早く……」
「ティーロ、」

 思わず漏れてしまった科白にアルの目がギラリと光った気がした。口を塞がれるのと同時に、ぐっと先端が押し込められる。丁寧に解されて焦らされていた内部がゆっくりと掻き分けるように入って来るアルのものを締め付けるように絡む。

「ん、んー……っ」
 
 奥に到達してもすぐには動かず、馴染ませてくれているだけなのに体が痙攣をおこしているみたいに跳ねた。

「……アル……ゃ……ぃく……」

 何度も快感の波が襲って、しまいにはアルの腕を掴みながら、仰け反って達してしまった。いつもは呼吸が治まるまで待っていてくれるのに、それを待たずにアルが腰を揺らめかせ始めてしまう。俺は首を振って、アルに縋った。

「ぁ、ぁ、アルっ、……今は、っ」
「ティ、ごめん……ちょっと無理かも」

 アルの声が上ずっている。興奮して、息も荒くて……。
 俺で感じてくれてるんだ。アルもちゃんと気持ちいと感じてくれてるんだ。ポツリと肌を打った汗さえも愛しく感じる。
 腕を伸ばしてアルの首にしがみ付いて「好き」と耳元で囁けば、アルがぴたりと動きを止めた。

「知らないからね」

 その声は少し怒りを含んでいた。

 その日こんなに激しく感情を出すことがあるのかと驚くほど、アルは俺を離さなかった。何度も何度も絶頂を味わう羽目になり、気が付けば気を失っていた。
 アルがこんなにも俺を求めてきたのは初めてかもしれない。
 いつも優しくて、穏やかで、余裕があって……俺のことを一番に考えてくれる。でも、こんなふうに求められるのも酷く心地いい。劣情を覗かせた瞳を思い出して、顔に熱が集まるのがわかった。
 横に眠る愛しい人の銀色の髪を指で弄びながら、アルの事をもっと知りたいと思った瞬間だった。
 
 
  

 
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