24 / 39
第二部 第一章
幸せなひとときは……
しおりを挟む
「生まれたの?」
俺が聞くと、うん、とアルが返事をしながら、ローテーブルに紅茶を運んでくれる。
「今日騎士団にヴァリスが来ててね、やっとルーファの許可が出たって」
「良かった。ルーファさんの体調は? 成卵を生むのって大変なんだよね?」
「多分、大丈夫だと思う。実のところ知識としてしか俺も知らないんだ。王族では侍医が付き添うけど、一般家庭では二人だけでするもので、危険は伴わないと聞くからきっとルーファも無事だよ」
元の世界の出産とは随分と違うらしい。想像ができなくて首を傾げていると、アルがふふと笑った。
「ルーファにたくさん質問すればいいよ」
「うん。そうする」
「それでね、今度ユーエンの家に行った後にヴァリスとルーファのところに挨拶に寄ろうと思うんだけどいい?」
「もちろん。お祝い用意しなきゃ」
「そうだね、果物でも持っていこうか」
ルーファさんは大の果物好き。お土産に果物を持っていけば間違いないため、お祝いも当然そういう選択肢になる。
「赤ちゃんの服とかは持っていったりしないの?」
「赤ちゃんの服?」
「うん、服はたくさんあって困らないって……」
アルは目を瞬かせ、その後何かを思いついたように手を打った。
「そこから違うのか。ごめんね、ティーロ。ちゃんと説明するから」
そういって棚から絵本と取ってくると俺に手渡した。こちらに来たばっかりの時にアルが言葉を教えようと使っていた絵本で懐かしさを感じる。
それを膝の上で広げるとアルの講義が始まった。
卵で産まれてくるというのは知っていたけれど、それ以降のことは俺の予想外のものだった。
なんと孵化するまで一月かかるらしい。
妊娠してから出産するまでが短いと思ったのは勘違いじゃなかったみたい。
産んだ後は半日は卵を抱えて過ごし、寝るときも一緒。二人で分担しながら卵を一月育てるのだという。主に世話をする側の負担が大きいため、今回の場合ルーファさんの好物である果物を持っていくのが正解ということのよう。
それには納得したけれど、「割りそうで怖い」と言うと割れたなんて聞いたことないから大丈夫だ、とアルに慰められた。
そして孵化したら、正式なお披露目会が開かれ、そこでやっと日用品などを贈ることになる。それまで性別もわからないし、種族も何が産まれてくるかわからないかららしい。
というのも、この世界の人達は劣性としていろいろな種族が混ざってしまっていて、優性なのがヒトであるだけであって、他の種族の血が強くなるとそれが突然現れたりすることもあるのだととか。
ほとんど表に出ることはないけれど、体の一部に鱗があったり、耳が尖っていたりとほんの少しだけ体に変化があることが多いらしい。王都にも普通に住んでいると聞いて驚きが隠せなかった。身近ではヴァリスさんがそれに当たり、彼にはしっぽがあるらしい。
ちなみにアルにはヒト、エルフ、竜、魔獣の血が流れている。大抵の人は四つ以上の混血。遠い昔には純血もいたようだけど、垣根がなくなってからはずっと混ざりっぱなしなのだという。純血種が密かに暮らしてるというのはおとぎ話の中だけの話しだと考えられているようだった。
「ティーロのところにヒトしかいなかったのなら、見て驚くかもね。――っていうことは、ティはヒトの純血になるのか……このことは絶対口外しないように」
「……うん、なんだか危なそうだもんね」
多分このことは誰にも言わないだろうし、言う必要もないこと。だから、なんの心配もいらない。
でも、不安が顔にでていたのか、アルは大丈夫だよと俺の肩を抱き寄せてこめかみにキスを落とした。
そんなアルの顔を見上げて俺はほっと安堵のため息を吐く。
これまで色んな種族がいることを知らなくてよかったと思う。慣れてきた今だからこそ受け入れられるわけだし。きっとアルの外見が竜だったり魔獣だったりしたら、正気でいられなかったかもしれないと思うと、ヒトの優性にはちょっと感謝した。
週末には市場に降りて、ルーファさんへのお土産を買う。ユーエンのところではお昼ごはんを食べさせてもらうから、そのデザートにもと果物を用意した。
カゴいっぱいに果物を持つアルが微笑ましくて、ちょっと笑ってしまった。でも、アルはそんな俺を見て嫌な顔せず目を細める。
「どうしたの?」
「ふふ、ティがよく笑うようになって嬉しくて」
アルは俺がどん底にいるときを知っているから。
「そんなに?」
「うん、ティーロは笑ったほうがかわいい」
「ア、アルっ」
アルは最近所構わず俺のことを褒めたりかわいいと言ったりするから気が気じゃない。最初はもっと堅い人かと思っていたのに、今はびっくりするほどに甘い。
「早く行こう」
恥ずかしさを誤魔化すようにアルの手を取って踵を返した。「そうだね」と返してきたアルの声にからかいが含まれていて、俺はちょっと拗ねた。
ユーエンの家の表の武具屋は休業と札がかかっている。案内された通り、店の横にある人がぎりぎり二人並んで通れるくらい細い路地を進む。勝手口をノックすれば、ユーエンがドアの隙間から顔を出した。
「ティーロ、アルベルトさん、こんにちは」
「こんにちは」
「どうぞ入ってください」
少しソワソワとした様子だったけど、ユーエンが家の中に招いてくれた。
居間に入るとどこか懐かしい香りがして、俺は深呼吸してしまった。
「この香り……」
多分ユーエンの作ってくれた食事に使われている調味料。まるでお醤油が使われているかのような香ばしいもので、少しドキリとする。
「どうかしたの? ティーロ」
きょとんとした顔でユーエンが聞いてきてくる。
「故郷の料理によく似た香りがしたから、なんだか懐かしくて」
「ティーロの故郷?」
「うん、ここからは随分遠いところ」
「そうなんだ。故郷が遠いの、僕と一緒だね」
ユーエンは仲間意識からか嬉しそうに笑った。可愛くて俺もつられて微笑んでしまう。
テーブルを囲んで座れば、アルがスンと鼻を鳴らした。俺の故郷って聞いて料理に興味が湧いたみたい。かぼちゃの煮物やきんぴらごぼう、お肉のしぐれ煮なんかがある。どこか懐かしい食卓に頬が緩んだ。
「これ全部ユーエンが作ったの?」
「うん、これぐらいしか取り柄がなくて」
「こんなにできたら凄いよ! ね、アル」
「そうだね」
ユーエンが取り分けてくれたお皿を受け取りながら、俺は興奮した。久しぶりの和食風。こちらの食事が美味しくないわけじゃないけど、やっぱり育った味覚というものがあるから。
「どうぞ、冷めちゃう前に食べてくださいね」
その一言から、穏やかなランチタイムが始まった。
どれから手を付けていいか迷ってしまう。迷い箸じゃなくて迷いフォーク。こっちにはお箸がないから、この料理の見た目でフォークを使うっていうのはすこし不思議だ。
「ユーエンの里も遠いのか」
「はい、そうなんです。東の山脈の麓の村なんです」
「東の山脈……ディアネリア山脈か」
「えっと、多分? 僕、ちゃんとした名前知らなくて……」
王都には教育機関のようなものがあるけれど、地方では教会が奉仕で行っているらしくて、行き届いていないというのが現状。ユーエンのように自分の住んでいる土地の名前を知らない人も多い。
「山脈はそのぐらいしかないから、きっと合っているよ。確かに遠い」
「そんなに?」
「ああ、旅行する感覚では無理かな」
「じゃあ、帰ろうと思っても簡単には帰れないんだね」
「はい。でも故郷とは言ってもほとんど思い入れもないんです。こういう大きい街を知ると便利で、特に戻りたいとも思わなくて」
薄情ですけど、とユーエンは言うけど、俺もあっちに戻りたいとは思わないから、俺も結構薄情なのかもしれない。
そんなことを思っていると、アルが俺に視線を寄越した。
「ティーロは戻りたいとは思わない?」
「思わないよ。俺にはアルしかいないから」
俺が答えると、アルは目をパチクリとしたあと嬉しそうに目を細めた。その向かいでユーエンは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていたけど。
それに気づいたアルが「ここで聞くことじゃなかったね」と謝っていたけど口先だけ謝罪だった。ユーエンはどこかからかいたくなってしまう雰囲気があるんだけど、アルも同じように感じているようだった。
「この料理に使ってる調味料は王都でも手に入るの?」
「シェユーのこと? これはこの街にはないと思うな。南の港町で買ったものだから。そこの料理を食べたときすごく美味しくて」
「へえ、港町。俺も行ってみたいな」
この世界に元々あったものかもしれないけど、異世界人が過去にいたのなら作った可能性もある。落ち人は幸福をもたらすっていうのはあっちの知識があったからかもしれない。きっとこっちにくる年齢もバラバラなんだ。
俺の歳だとそれほど知識があるわけじゃないから、至って普通のことしかできないけど。
アルが周辺の街や国の話をしてくれる。それを聞きながら、ユーエンの美味しい料理を食べる。とても幸せなひとときだった。友達とはまだ言えないかもしれないけど、こうして仲良くなった人の家に来て食事するなんて前の世界では考えられなかったから。
楽しいと時間はあっという間に過ぎてしまう。ルーファさんのところに行く時間になって、アルと俺はごちそうさまをした。
「そろそろ御暇しようかな」
「うん。これからルーファさんのところに行くんだよ」
「そうなんだ。ルーファさんの」
三人同時に席を立った時だった。
何か外が騒がしくなり、表の商店街で悲鳴が上がる。何事かと思えば、次の瞬間、地響きのような音と共に地面が揺れた。
「ティーロ! ユーエン!」
アルが俺を胸に引き寄せ、振動で足元をふらつかせたユーエンを支えた。
「アル……なに?」
「……わからない」
アルは耳をすまし、外に意識を集中させていた。
そして、緊急を知らせる鐘の音がけたたましく鳴り響いたのはそのすぐ後のことだった。
俺が聞くと、うん、とアルが返事をしながら、ローテーブルに紅茶を運んでくれる。
「今日騎士団にヴァリスが来ててね、やっとルーファの許可が出たって」
「良かった。ルーファさんの体調は? 成卵を生むのって大変なんだよね?」
「多分、大丈夫だと思う。実のところ知識としてしか俺も知らないんだ。王族では侍医が付き添うけど、一般家庭では二人だけでするもので、危険は伴わないと聞くからきっとルーファも無事だよ」
元の世界の出産とは随分と違うらしい。想像ができなくて首を傾げていると、アルがふふと笑った。
「ルーファにたくさん質問すればいいよ」
「うん。そうする」
「それでね、今度ユーエンの家に行った後にヴァリスとルーファのところに挨拶に寄ろうと思うんだけどいい?」
「もちろん。お祝い用意しなきゃ」
「そうだね、果物でも持っていこうか」
ルーファさんは大の果物好き。お土産に果物を持っていけば間違いないため、お祝いも当然そういう選択肢になる。
「赤ちゃんの服とかは持っていったりしないの?」
「赤ちゃんの服?」
「うん、服はたくさんあって困らないって……」
アルは目を瞬かせ、その後何かを思いついたように手を打った。
「そこから違うのか。ごめんね、ティーロ。ちゃんと説明するから」
そういって棚から絵本と取ってくると俺に手渡した。こちらに来たばっかりの時にアルが言葉を教えようと使っていた絵本で懐かしさを感じる。
それを膝の上で広げるとアルの講義が始まった。
卵で産まれてくるというのは知っていたけれど、それ以降のことは俺の予想外のものだった。
なんと孵化するまで一月かかるらしい。
妊娠してから出産するまでが短いと思ったのは勘違いじゃなかったみたい。
産んだ後は半日は卵を抱えて過ごし、寝るときも一緒。二人で分担しながら卵を一月育てるのだという。主に世話をする側の負担が大きいため、今回の場合ルーファさんの好物である果物を持っていくのが正解ということのよう。
それには納得したけれど、「割りそうで怖い」と言うと割れたなんて聞いたことないから大丈夫だ、とアルに慰められた。
そして孵化したら、正式なお披露目会が開かれ、そこでやっと日用品などを贈ることになる。それまで性別もわからないし、種族も何が産まれてくるかわからないかららしい。
というのも、この世界の人達は劣性としていろいろな種族が混ざってしまっていて、優性なのがヒトであるだけであって、他の種族の血が強くなるとそれが突然現れたりすることもあるのだととか。
ほとんど表に出ることはないけれど、体の一部に鱗があったり、耳が尖っていたりとほんの少しだけ体に変化があることが多いらしい。王都にも普通に住んでいると聞いて驚きが隠せなかった。身近ではヴァリスさんがそれに当たり、彼にはしっぽがあるらしい。
ちなみにアルにはヒト、エルフ、竜、魔獣の血が流れている。大抵の人は四つ以上の混血。遠い昔には純血もいたようだけど、垣根がなくなってからはずっと混ざりっぱなしなのだという。純血種が密かに暮らしてるというのはおとぎ話の中だけの話しだと考えられているようだった。
「ティーロのところにヒトしかいなかったのなら、見て驚くかもね。――っていうことは、ティはヒトの純血になるのか……このことは絶対口外しないように」
「……うん、なんだか危なそうだもんね」
多分このことは誰にも言わないだろうし、言う必要もないこと。だから、なんの心配もいらない。
でも、不安が顔にでていたのか、アルは大丈夫だよと俺の肩を抱き寄せてこめかみにキスを落とした。
そんなアルの顔を見上げて俺はほっと安堵のため息を吐く。
これまで色んな種族がいることを知らなくてよかったと思う。慣れてきた今だからこそ受け入れられるわけだし。きっとアルの外見が竜だったり魔獣だったりしたら、正気でいられなかったかもしれないと思うと、ヒトの優性にはちょっと感謝した。
週末には市場に降りて、ルーファさんへのお土産を買う。ユーエンのところではお昼ごはんを食べさせてもらうから、そのデザートにもと果物を用意した。
カゴいっぱいに果物を持つアルが微笑ましくて、ちょっと笑ってしまった。でも、アルはそんな俺を見て嫌な顔せず目を細める。
「どうしたの?」
「ふふ、ティがよく笑うようになって嬉しくて」
アルは俺がどん底にいるときを知っているから。
「そんなに?」
「うん、ティーロは笑ったほうがかわいい」
「ア、アルっ」
アルは最近所構わず俺のことを褒めたりかわいいと言ったりするから気が気じゃない。最初はもっと堅い人かと思っていたのに、今はびっくりするほどに甘い。
「早く行こう」
恥ずかしさを誤魔化すようにアルの手を取って踵を返した。「そうだね」と返してきたアルの声にからかいが含まれていて、俺はちょっと拗ねた。
ユーエンの家の表の武具屋は休業と札がかかっている。案内された通り、店の横にある人がぎりぎり二人並んで通れるくらい細い路地を進む。勝手口をノックすれば、ユーエンがドアの隙間から顔を出した。
「ティーロ、アルベルトさん、こんにちは」
「こんにちは」
「どうぞ入ってください」
少しソワソワとした様子だったけど、ユーエンが家の中に招いてくれた。
居間に入るとどこか懐かしい香りがして、俺は深呼吸してしまった。
「この香り……」
多分ユーエンの作ってくれた食事に使われている調味料。まるでお醤油が使われているかのような香ばしいもので、少しドキリとする。
「どうかしたの? ティーロ」
きょとんとした顔でユーエンが聞いてきてくる。
「故郷の料理によく似た香りがしたから、なんだか懐かしくて」
「ティーロの故郷?」
「うん、ここからは随分遠いところ」
「そうなんだ。故郷が遠いの、僕と一緒だね」
ユーエンは仲間意識からか嬉しそうに笑った。可愛くて俺もつられて微笑んでしまう。
テーブルを囲んで座れば、アルがスンと鼻を鳴らした。俺の故郷って聞いて料理に興味が湧いたみたい。かぼちゃの煮物やきんぴらごぼう、お肉のしぐれ煮なんかがある。どこか懐かしい食卓に頬が緩んだ。
「これ全部ユーエンが作ったの?」
「うん、これぐらいしか取り柄がなくて」
「こんなにできたら凄いよ! ね、アル」
「そうだね」
ユーエンが取り分けてくれたお皿を受け取りながら、俺は興奮した。久しぶりの和食風。こちらの食事が美味しくないわけじゃないけど、やっぱり育った味覚というものがあるから。
「どうぞ、冷めちゃう前に食べてくださいね」
その一言から、穏やかなランチタイムが始まった。
どれから手を付けていいか迷ってしまう。迷い箸じゃなくて迷いフォーク。こっちにはお箸がないから、この料理の見た目でフォークを使うっていうのはすこし不思議だ。
「ユーエンの里も遠いのか」
「はい、そうなんです。東の山脈の麓の村なんです」
「東の山脈……ディアネリア山脈か」
「えっと、多分? 僕、ちゃんとした名前知らなくて……」
王都には教育機関のようなものがあるけれど、地方では教会が奉仕で行っているらしくて、行き届いていないというのが現状。ユーエンのように自分の住んでいる土地の名前を知らない人も多い。
「山脈はそのぐらいしかないから、きっと合っているよ。確かに遠い」
「そんなに?」
「ああ、旅行する感覚では無理かな」
「じゃあ、帰ろうと思っても簡単には帰れないんだね」
「はい。でも故郷とは言ってもほとんど思い入れもないんです。こういう大きい街を知ると便利で、特に戻りたいとも思わなくて」
薄情ですけど、とユーエンは言うけど、俺もあっちに戻りたいとは思わないから、俺も結構薄情なのかもしれない。
そんなことを思っていると、アルが俺に視線を寄越した。
「ティーロは戻りたいとは思わない?」
「思わないよ。俺にはアルしかいないから」
俺が答えると、アルは目をパチクリとしたあと嬉しそうに目を細めた。その向かいでユーエンは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていたけど。
それに気づいたアルが「ここで聞くことじゃなかったね」と謝っていたけど口先だけ謝罪だった。ユーエンはどこかからかいたくなってしまう雰囲気があるんだけど、アルも同じように感じているようだった。
「この料理に使ってる調味料は王都でも手に入るの?」
「シェユーのこと? これはこの街にはないと思うな。南の港町で買ったものだから。そこの料理を食べたときすごく美味しくて」
「へえ、港町。俺も行ってみたいな」
この世界に元々あったものかもしれないけど、異世界人が過去にいたのなら作った可能性もある。落ち人は幸福をもたらすっていうのはあっちの知識があったからかもしれない。きっとこっちにくる年齢もバラバラなんだ。
俺の歳だとそれほど知識があるわけじゃないから、至って普通のことしかできないけど。
アルが周辺の街や国の話をしてくれる。それを聞きながら、ユーエンの美味しい料理を食べる。とても幸せなひとときだった。友達とはまだ言えないかもしれないけど、こうして仲良くなった人の家に来て食事するなんて前の世界では考えられなかったから。
楽しいと時間はあっという間に過ぎてしまう。ルーファさんのところに行く時間になって、アルと俺はごちそうさまをした。
「そろそろ御暇しようかな」
「うん。これからルーファさんのところに行くんだよ」
「そうなんだ。ルーファさんの」
三人同時に席を立った時だった。
何か外が騒がしくなり、表の商店街で悲鳴が上がる。何事かと思えば、次の瞬間、地響きのような音と共に地面が揺れた。
「ティーロ! ユーエン!」
アルが俺を胸に引き寄せ、振動で足元をふらつかせたユーエンを支えた。
「アル……なに?」
「……わからない」
アルは耳をすまし、外に意識を集中させていた。
そして、緊急を知らせる鐘の音がけたたましく鳴り響いたのはそのすぐ後のことだった。
14
あなたにおすすめの小説
【完結】雪解けて春を待つ隠れ家(雨を待つ隠れ家より番外編)
エウラ
BL
雨を待つ隠れ家の番外編が収拾つかなくなりそうなので、分けました。
不定期更新です。
大まかなあらすじを初めに入れますが、前作を読んでない方にはわかりにくいかもです。
異世界召喚で不遇の時を過ごしたリッカを救い出し、番として溺愛するアッシュ。
2人の日常や過去の話などを書いていけたらと思います。
前作みたいな重い話はあまりないと思います。
読んでもらえたら嬉しいです。
ひとまず番外編を完結にします。
読んで下さってありがとうございます。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
お前が結婚した日、俺も結婚した。
jun
BL
十年付き合った慎吾に、「子供が出来た」と告げられた俺は、翌日同棲していたマンションを出た。
新しい引っ越し先を見つける為に入った不動産屋は、やたらとフレンドリー。
年下の直人、中学の同級生で妻となった志帆、そして別れた恋人の慎吾と妻の美咲、絡まりまくった糸を解すことは出来るのか。そして本田 蓮こと俺が最後に選んだのは・・・。
*現代日本のようでも架空の世界のお話しです。気になる箇所が多々あると思いますが、さら〜っと読んで頂けると有り難いです。
*初回2話、本編書き終わるまでは1日1話、10時投稿となります。
【完結】2番目の番とどうぞお幸せに〜聖女は竜人に溺愛される〜
雨香
恋愛
美しく優しい狼獣人の彼に自分とは違うもう一人の番が現れる。
彼と同じ獣人である彼女は、自ら身を引くと言う。
自ら身を引くと言ってくれた2番目の番に心を砕く狼の彼。
「辛い選択をさせてしまった彼女の最後の願いを叶えてやりたい。彼女は、私との思い出が欲しいそうだ」
異世界に召喚されて狼獣人の番になった主人公の溺愛逆ハーレム風話です。
異世界激甘溺愛ばなしをお楽しみいただければ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる