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第二部 第二章
天使の祈り
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「まさか」
まさか本当に竜が滅びようとしてる?
ユーエンが、天使が心の底からそう願ったから?
「ふ、はは、……残念だったな、シュメル」
「どういうことだ!」
「……天使と悪魔は表裏一体。天使は悪魔にもなりうる。恵みと滅びをもたらす者。それが天の使い」
天使だと頑なに信じなかったシュメルも驚愕の表情でユーエンを見下ろしていた。彼の足はすでに石化しはじめていて、動くこともできないらしい。
ユーエンに膝枕をされている状態のウルリヒさんも同じようだった。
「ウルリヒ……? あ……ぁ、これ、なに? 石?」
「ユーエン、君は本当に天使だったんだな。黙っていろだなんて、酷いことを言ってすまなかった。私が一番に信じるべきだったのに」
「だってそれは、僕を守るために……」
真っ青になるユーエンとは裏腹に、ウルリヒさんはふふと笑みを返すだけだった。ユーエンの頬に伸ばした彼の指先もすでに石になっていて、じわじわとその面積を増やしていく。
「僕が、望んだから……?」
「いいんだ。ユーエンは神から私たちに与えられた最後の救いだったんだ。だが私たちは蔑ろにした。この報いは当然のことだ」
「い、いやだよ、ウルリヒ……僕、ウルリヒが死ぬなんて望んでない……っ」
石になっていく手をぎゅっと握って、頭を振る。
でも、俺にはそのユーエンの姿もどこか霞んでいるように見えた。ゆっくりとゆっくりと白く白く……。
「だめだ、ユーエンも消える」
「え、」
「ティーロと同じだ」
アルが言い終わる前に俺は駆けだした。ユーエンは近づく俺を見上げるとくしゃりと顔を歪ませる。
「どうしよう、ティーロ。僕、……どうしたら」
「ユーエン、ここにいたいって願って! ウルリヒさんと一緒にいたいって! それじゃないと――」
ユーエンも自分の手がうっすらと透き通っていることに気付いたのか、縋るような表情から全てを諦めた力ない笑顔に変わる。
「そう、そうだよね。こんなこと願ったら、僕だって……」
「ユーエン!」
「ティーロ、もういいんだ」
「よくないよ……!」
「だって、ウルリヒがいないと僕、何のために……」
「世話になった村に一緒に行くんだろ! それにユーエンの得意の料理食べてもらわないといけないだろ!」
「でも……でも、どうやったら……」
俺はユーエンにそっと手を伸ばした。俺よりも幼いその子を胸に抱き寄せた。そうしなきゃいけないって思ったんだ。
「ユーエン、大丈夫だよ」
「ティーロ……?」
「俺が一緒に祈るから」
ユーエンの柔らかい手を握って、瞼を閉じる。
もし本当に俺が天使なら、この二人に幸せになって欲しいっていう願いは神様に届くんだろうか。
俺たちを見守っていてくれてるなら、どうか。どうかもう一度チャンスを下さい。
竜たちにもユーエンにももう一度。
俺がアルの優しさに気付けたように、ユーエンがウルリヒさんの愛情を一心に受けられるように。
まさか本当に竜が滅びようとしてる?
ユーエンが、天使が心の底からそう願ったから?
「ふ、はは、……残念だったな、シュメル」
「どういうことだ!」
「……天使と悪魔は表裏一体。天使は悪魔にもなりうる。恵みと滅びをもたらす者。それが天の使い」
天使だと頑なに信じなかったシュメルも驚愕の表情でユーエンを見下ろしていた。彼の足はすでに石化しはじめていて、動くこともできないらしい。
ユーエンに膝枕をされている状態のウルリヒさんも同じようだった。
「ウルリヒ……? あ……ぁ、これ、なに? 石?」
「ユーエン、君は本当に天使だったんだな。黙っていろだなんて、酷いことを言ってすまなかった。私が一番に信じるべきだったのに」
「だってそれは、僕を守るために……」
真っ青になるユーエンとは裏腹に、ウルリヒさんはふふと笑みを返すだけだった。ユーエンの頬に伸ばした彼の指先もすでに石になっていて、じわじわとその面積を増やしていく。
「僕が、望んだから……?」
「いいんだ。ユーエンは神から私たちに与えられた最後の救いだったんだ。だが私たちは蔑ろにした。この報いは当然のことだ」
「い、いやだよ、ウルリヒ……僕、ウルリヒが死ぬなんて望んでない……っ」
石になっていく手をぎゅっと握って、頭を振る。
でも、俺にはそのユーエンの姿もどこか霞んでいるように見えた。ゆっくりとゆっくりと白く白く……。
「だめだ、ユーエンも消える」
「え、」
「ティーロと同じだ」
アルが言い終わる前に俺は駆けだした。ユーエンは近づく俺を見上げるとくしゃりと顔を歪ませる。
「どうしよう、ティーロ。僕、……どうしたら」
「ユーエン、ここにいたいって願って! ウルリヒさんと一緒にいたいって! それじゃないと――」
ユーエンも自分の手がうっすらと透き通っていることに気付いたのか、縋るような表情から全てを諦めた力ない笑顔に変わる。
「そう、そうだよね。こんなこと願ったら、僕だって……」
「ユーエン!」
「ティーロ、もういいんだ」
「よくないよ……!」
「だって、ウルリヒがいないと僕、何のために……」
「世話になった村に一緒に行くんだろ! それにユーエンの得意の料理食べてもらわないといけないだろ!」
「でも……でも、どうやったら……」
俺はユーエンにそっと手を伸ばした。俺よりも幼いその子を胸に抱き寄せた。そうしなきゃいけないって思ったんだ。
「ユーエン、大丈夫だよ」
「ティーロ……?」
「俺が一緒に祈るから」
ユーエンの柔らかい手を握って、瞼を閉じる。
もし本当に俺が天使なら、この二人に幸せになって欲しいっていう願いは神様に届くんだろうか。
俺たちを見守っていてくれてるなら、どうか。どうかもう一度チャンスを下さい。
竜たちにもユーエンにももう一度。
俺がアルの優しさに気付けたように、ユーエンがウルリヒさんの愛情を一心に受けられるように。
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