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1章 異世界の魔王 一つ目の危機
8話 呼ぶぜ モンスター
しおりを挟む〈マスター、敵の攻撃魔法がきます〉
まじか。
魔王の娘であるウルリルと、魔王城の牢屋で知り合ったどっかの国の姫リーサと、一緒に行動することが決まったところで邪魔が入った。
せっかく仲間になっていい感じの雰囲気になってきたのに、無粋なことをしてくるやつがいたもんだ。
俺は急いでウルリルとリーサを抱えて、真横に飛んで魔法を回避した。
俺がいた場所は、何者かの魔法で地面がドロドロになっていた。
ん? 魔法?
〈はい、魔法です。避けなくても反射しますよ? どちらかというと、避けない方が良かった気が・・・〉
いや、いきなりだったからビックリしたんだよ。
そういえば『魔法全反射』なんていうチートなスキルを持ってたよな。
「不意打ちを避けたか。小賢しいな」
およ?
この声には、なんだか聞き覚えがあるな。
たしか、名前は・・・忘れた。
〈サリエルです。魔王軍の四天王で、マスターを状態異常にした不届きものです。どんな風にし返しをするか考えていましたよ。ふふふ〉
セラファル、ちょっと怖いよ。
まあ、サリエルは置いとこう。
とりあえずウルリルとリーサを安全な場所に避難させられないか?
〈お任せください。眠らせて安全な場所に匿います〉
おう、よろしく。
よし。これで心置きなく戦えるな。
「ボクはサリエル。魔王軍の四天王だ。名を教えろ人間」
お、相手から名乗ってきた。
まあ知ってるけどな。
俺も名前くらい教えてもいいか。
「俺の名前は、カイだ」
「カイ。カイか。お前が、お前がボクのことを何度も何度も殺し、ボクの眷属を次々に踏み殺した。カイ! お前にもあの痛みと絶望感を味わわせてやる!」
サリエルは何を言ってるんだ?
〈サリエル自身や、その眷属が巨人に殺されたのでしょう。サリエルの再生能力は完全ではありませんね。恐らく生き返ったときに、死亡時の痛みを追加体験するタイプのものかと〉
うわ、何それ。拷問よりも辛そうだ。
「簡単には死なせない! じっくり痛めつけ、たっぷり苦しめ、絶望の底に沈めてやる! 殺してくれと懇願するほどにな! いくぞ!」
あ、魔法は使ったらダメだって。
「ギャァァァァァァ!」
痛めつけるとか言って、中途半端な魔法使うなよ。
逆に自分を苦しめることになるぞー。
〈マスター。一応敵の前ですので、警戒はしてくださいね〉
あ、すまん。
サリエルがあまりにも間抜けだったから油断してたな。気をつけるよ。
「殺す、絶対に殺す! 痛めつけるのはやめだ! 」
サリエルは魔法での攻撃をやめ、スキルでの物理攻撃に切り替えてきた。
厄介なやつだ。
でもいくら殴られようが、こっちにダメージはないんだけどね。
いやー、ダメージ無効は強いなぁ。
「何で効かないんだ!? 化け物め!」
君、不死じゃなかった?
不死のやつに化け物呼ばわりされたくないな。
でも、もしこっちが攻撃してもすぐに復活しちゃうんだよな。
負けもしないし、勝てもしないんだよな。
ってことで、対応策ない?
〈不死の存在を「殺す」ことは、物理的な手段では不可能です。敵の心を折り、精神を殺して肉体だけの抜け殻にする等の方法はあります〉
敵の心を折るか。
楽しそうじゃないか。
〈かしこまりました。敵の心を折りましょう。その方が、精神を殺しやすくなりますね〉
手始めに、何をすればいい?
〈まずはサリエルを拘束しましょう。次にたっぷりと痛めつけて、こちらがサリエルを絶望に沈めてやりましょう〉
天使が言うことじゃない気がするが、それが最善の策なら構わない。
だが、拘束するスキルとか持ってなかった気がする。
どうしたもんかねー。
「昏睡の波動!」
あ、まずい。
〈ご心配なさらず。同じ手は二度通用しません。対策済みです〉
さすがだ。セラファルは優秀だな。
〈マスターに、お褒めに預かり光栄です〉
「これも効かないだと!? くっ、どうする、他に有効打になるものは・・・」
あ、ちょっと思いついた。
なぁ、セラファル。
〈はい。マスター〉
モンスター召喚、巨大なやつじゃないのもできるよな?
〈もちろん可能です〉
よし。モンスター召喚して、そいつにやらせよう。
そういう命令とかはできるよな?
〈モンスターによりますが、マスターが召喚するモンスターであれば、ほとんど可能でしょう〉
それならモンスターを召喚して、抑え込んでもらおう。
今度はセラファルに頼らず、俺がモンスターを召喚してみるか。
モンスターの召喚をしようとしたら、何故か「出来る」気がしてくる。そしてやり方も頭に入ってくる。
まるで幼い頃から慣れ親しんでいるかのように。
多分、スキルというのはそういう概念なのだろう。
召喚したいモンスターをイメージしてみる。
さっきの巨人も使っていたが、やはり魔法の威力は絶大だ。
とりあえず召喚するモンスターが「魔法」が上手なタイプであれば、相手が四天王サリエルであろうと、簡単に「拘束」できるであろう。
そうだ。俺には「水属性」の適性があったはずだ。
水魔法に特化していて、魔法での拘束がうまそうなモンスターを・・・。
よし。これでどんどんイメージを固めて、召喚魔法を使えば!
「いくぞ。我が召喚に応じてその身を現せ! 温汾せよ、ウォルエミュ!」
モンスター召喚と水属性の適性を合わせて、水属性モンスターの召喚を試みた。
さぁ、こい。
強いやつ頼むぞ!
地面に直径1mほどの魔法陣が描かれる。
周囲に雫が浮かび、魔力と水が渦を巻き始めた。
幻想的な水の渦は、やがて天へと登っていく。
そして魔法陣が、強い輝きを放った。
召喚に答えてやってきたモンスターは・・・。
「ミュ?」
クルクル尻尾の子猫であった。
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