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少年期・学園編
幕間3 妹の魔法のために
しおりを挟む「エルビナ。あのダンジョン作ったのはお前でいいんだよな?」
「仰る通りです魔王様」
俺はエルビナと再会したことで、ダンジョンに来た目的をすっかり忘れていた。
何故、ダンジョンに入ったか。
理由はミルシャの魔法適性を増やすためのスキルオーブの取得だ。
「ダンジョンの宝箱の中身のアイテムを操作することはできるか?」
「不可能です。階層ごとに出現する敵などは生成時に固定されますが、宝箱から取得できるアイテムは完全ランダムとなっています」
なるほど、つまり敵は決まっているけど宝箱の中身は決まったものではないのか。
「ボスのドロップアイテムはどうだ? 素材ではなくレアドロップの方だ」
「スキルオーブなどの特殊アイテムのドロップですか。理論上は全種類出ますが、ドロップ確率は強さに比例しているため、弱いボスからのレアドロップは0パーセントになることもあります。逆を言うと強いボスであれば、全ての特殊アイテムが百万分の一くらいの確率で出てくるかと思います。そのほとんどはスキルオーブでしょうね」
弱いボスだとレアドロップは無しか限られてしまうということか。
強いボスだと限られない代わりに種類が多過ぎて、狙ったものはほとんど出ないということだな。
つまり強いボスを周回して倒していれば、いつかはレアドロップが出て魔法適性のスキルオーブゲットか。きついな。
「なるほどな。スキルオーブのドロップ率とか、その中でも魔法適性のスキルオーブが出る確率は分かるか?」
「まずレアドロップ率が良くて1パーセントくらいですかね。その中でスキルオーブが出る確率は9割。0.9パーセントですね。そのスキルオーブの中で、剣技スキルなどの武術系スキルが2割、毒耐性などの耐性系スキルが2割、鑑定などの技能系スキルが2割、火魔法適性などの魔法適性系スキルが2割、魔法使いや剣士などの常時能力向上の称号系スキルが2割です。全部だいたい2割なんですが、ごく稀に悪魔契約や神降しなどの種族固有に多い超特殊系スキルオーブが出ることはあります。これは一億分の一くらいの確率です。それを考えずに計算すると0.18パーセントです。確率的には一万回強いボスを倒したら、18個の魔法適性系スキルオーブが取得できますよ」
千回ボスを倒してだいたい2個出るくらいなのか。
ちょっと疲れそうだな。
「それにしても、エルビナは良く知ってるなー」
「私はダンジョンマスターになったことである程度の情報を入手しました。それに世界権限レベル3なので、権限内なら質問したら返ってきます」
「え、何それ?」
「世界権限でしょうか? 世界に向かって問いかけたら色々と教えてもらえます」
言っている意味が理解できないんだが。
世界に向けて質問すればいいのか?
「おーい、世界さーん」
『はい! お呼びでしょうか?』
ぶほっ、なんか世界から返事きたんだけど!?
「あー、世界権限レベルとは何だ?」
『この世界の情報にアクセスするための権限です。レベルは5つまで存在します。レベル1は一般クラスで、私に話しかけても返答はありません。レベル2は君臨者クラスで、一国の君主や多くの者を支配する者で、世界に話しかけると適当に部下があしらっています。レベル3はダンジョンマスターで、この世界の理などについて質問されたら答えて良い範囲で私か部下が答えます。レベル4は亜神クラスで、答えられる質問が増えます。レベル5は神クラスで、世界について何でも私が答えます』
なるほど、意味は分かるが理解できない。
まずそれをどうやって知るんだよ。
そもそも世界に話しかけるなんて発想が思いつかないぞ。
答えてくれるなんて思わないからな。
「じゃあ次の質問だ。俺はこうして話しかけられているということは、権限レベル2以上ということだよな。魔王だったからだと思うが、今の俺の権限レベルはいくつだ?」
『レベル5でございます』
「へ?」
『貴方様の世界権限レベルは最高の5でございます』
「何でやねん」
思わずツッコミ入れてしまった。
『貴方様は実力と魂の力強さが神以上でございます』
「んー。よく分からないが、他の神よりちょっとだけ強いってことか?」
いやいや、自分で言っててありえないんだがな。
『貴方様は現在どの神よりも強いと断言致します。ハッ、恐れ多くも他の神などと貴方様を比べてしまい申し訳ございません。どうかお許し下さい』
いやいやいや、なんかおかしいって。
俺は簡単に騙されないからな。
神々に勝てるわけないだろう。
「そうだ、お前は誰なんだ?」
『世界神です。若輩者ながらこの世界を管理しております』
「あ、そうですか。神ですか」
なんか想像できてたけど、こいつがこの世界を管理しちゃってる神なのか。
まさか神と会話するとは思ってもみなかったわ。
さっすがファンタジーだ。
「何でも答えるって言ってたけど、他に神はいるのか?」
『私以下の天上神は数えるほどですが存在しております。私以上は貴方様のみでございます。ああ、また比べてしまいました。申し訳ございません。付け加えるなら亜神もこの世界の地上世界に多く存在しております』
「想像できないなー。ちなみに今の情報とか他の情報は権限レベル3で知れるか?」
『先ほどまでご説明申し上げたかなりの情報は、4以上でございます。一部権限が5の情報もございます』
「なるほどな。普通は知れないような世界の情報だってことか。ちなみにお前は名前あるのか?」
『神名でございますか。一応恐れ多いですが持っております。分かりやすく発音するのであればクレニルヒアと申します』
「クレニルヒアか、長いな。声が女性だけど、女神か? それとも中性的存在?」
『ご推察の通り私は女神でございます。神名が長くて申し訳ございません。略して下さっても、適当に呼んでいただいても大丈夫ですので、貴方様が呼びやすい呼び方でお願い致します』
なんか態度が低いというか丁寧というか、神がこんなんでいいのだろうか。
「じゃあクレアと呼ぶか。何でも質問に答えるのか確かめていいか?」
『はい、何でも嘘偽り無くお答えいたします』
「そうか、クレアは子供とかいる?」
『う、処女神です。出会いが無くて・・・』
「家族はいる?」
『単独神です。自然発生したと思っていただければ、その認識で間違いありません』
「じゃあスリーサイズは?」
『は、はい。上から「ちょっと魔王様!!」なな・・・』
やばい、エルビナが目の前にいるの忘れてた。
「魔王様、さっきから聞いていたら女神様ナンパでもしてるんですか? 流石に止めますよ」
「悪かった。何でも答えるってクレアが言うから、ついな。じゃあクレア、ダンジョンでスキルオーブが欲しいんだけどさ、何か良いアイデアない?」
『ダンジョンから特定のアイテムを入手したいとのことでしたら、ダンジョン設定を変更しましょう。権限レベル5でないとできないのですが、貴方様なら可能です』
権限レベル5って凄いなー、と小並感を抱いてしまった。
もはや何でもありだな。
「よし、じゃあ早速エルビナが作ったダンジョンの設定を変更するか。エルビナ、いいか?」
「勿論いいですよ。私は魔王様のものです。なので私の物は魔王様のものです。何でも好きにしていただいて構いません」
逆ジャイ○ン宣言しよったな。
『私も貴方様のものになりたいです!』
「いやクレア、対抗しなくていいから」
女神よ、そんなんでいいのか。
とりあえずエルビナの許可も取れたし、設定変更とやらをやってみるか。
『まずはダンジョンメニューオープンと言葉に出すか念じてください』
何そのステータスオープン的なもの。流石に言葉に出すのは恥ずかしいからやめておこう。
ダンジョンメニューオープン。
「うおっ、凄いなこれ。マジでゲーム画面みたいだ」
『貴方様のイメージ通りにお創り致しました。お気に召していただけましたでしょうか?』
「おう。これなら操作も分かりやすくていいな。よしよし、今だけボスのレアドロップ確率を100パーセントにして、魔法適性のスキルオーブのみ出るようにするか。おー! 魔法適性だけでこんなにあるのか。あ、よく見たら俺全部使えるんだな。さて、ミルシャは水が使えるから、あとは火、風、木、光、闇あたりが使えたら、本人が望んでいたキラキラ魔法になるだろう」
『あの、貴方様にご意見するのは恐れ多いのですが、目的が達成され次第ダンジョン設定の方は元に戻していただきたく思います。いえ、もちろん、戻さなくても世界がちょっと歪んじゃうだけですので私が何とかしますが、できればお願い致します』
なるほど、世界が歪むとか見てみたいけど迷惑がかかるなら終わったら設定初期化しとくか。
「おう、分かった。クレアには色々と教えてもらったからちゃんと設定を戻しておくよ。よし、リラシャ召喚!」
「リラシャ、召喚されちゃいました!」
召喚魔法陣からシュパッと出てきた擬態スライムで使い魔のリラシャ。
彼女には早速ダンジョンに行ってもらおうと思う。
「リラシャ。エルビナが作ったダンジョンに行き、階層ボスを倒してアイテムを入手してきて欲しい。頼めるか?」
「はいっ! リラシャ、行きます!」
そして30分後、無事に帰還したリラシャから60個ほどスキルオーブを渡された。
うん、1個30秒ペースで取ってくるとか正気か?
何個取ってくるか指定しなかった俺も悪いが、取りすぎな気がする。
これ、一個白金貨が飛ぶくらいの値段だったよな?
「ま、まあ、ありがとなリラシャ」
「はい! また何かご入用ございましたらいつでもお申し付け下さい! ではリラシャ、これにてドロン致します!」
こうして無事に魔法適性が増えるスキルオーブをゲットしたエルリック。
流石に多いと思ったのか、10個だけミルシャに渡して覚えさせ、スキルオーブ集めは一件落着したのであった。
残りは空間収納の肥やしになってしまったことは語るまでもないが、いつか役に立つ日が来ることであろう・・・多分。
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