魔王やめて人間始めました

とやっき

文字の大きさ
35 / 56
少年期・学園編

幕間3 妹の魔法のために

しおりを挟む


「エルビナ。あのダンジョン作ったのはお前でいいんだよな?」

「仰る通りです魔王様」

 俺はエルビナと再会したことで、ダンジョンに来た目的をすっかり忘れていた。

 何故、ダンジョンに入ったか。
 理由はミルシャの魔法適性を増やすためのスキルオーブの取得だ。

「ダンジョンの宝箱の中身のアイテムを操作することはできるか?」

「不可能です。階層ごとに出現する敵などは生成時に固定されますが、宝箱から取得できるアイテムは完全ランダムとなっています」

 なるほど、つまり敵は決まっているけど宝箱の中身は決まったものではないのか。

「ボスのドロップアイテムはどうだ? 素材ではなくレアドロップの方だ」

「スキルオーブなどの特殊アイテムのドロップですか。理論上は全種類出ますが、ドロップ確率は強さに比例しているため、弱いボスからのレアドロップは0パーセントになることもあります。逆を言うと強いボスであれば、全ての特殊アイテムが百万分の一くらいの確率で出てくるかと思います。そのほとんどはスキルオーブでしょうね」

 弱いボスだとレアドロップは無しか限られてしまうということか。
 強いボスだと限られない代わりに種類が多過ぎて、狙ったものはほとんど出ないということだな。

 つまり強いボスを周回して倒していれば、いつかはレアドロップが出て魔法適性のスキルオーブゲットか。きついな。

「なるほどな。スキルオーブのドロップ率とか、その中でも魔法適性のスキルオーブが出る確率は分かるか?」

「まずレアドロップ率が良くて1パーセントくらいですかね。その中でスキルオーブが出る確率は9割。0.9パーセントですね。そのスキルオーブの中で、剣技スキルなどの武術系スキルが2割、毒耐性などの耐性系スキルが2割、鑑定などの技能系スキルが2割、火魔法適性などの魔法適性系スキルが2割、魔法使いや剣士などの常時能力向上の称号系スキルが2割です。全部だいたい2割なんですが、ごく稀に悪魔契約や神降しなどの種族固有に多い超特殊系スキルオーブが出ることはあります。これは一億分の一くらいの確率です。それを考えずに計算すると0.18パーセントです。確率的には一万回強いボスを倒したら、18個の魔法適性系スキルオーブが取得できますよ」

 千回ボスを倒してだいたい2個出るくらいなのか。
 ちょっと疲れそうだな。

「それにしても、エルビナは良く知ってるなー」

「私はダンジョンマスターになったことである程度の情報を入手しました。それに世界権限レベル3なので、権限内なら質問したら返ってきます」

「え、何それ?」

「世界権限でしょうか? 世界に向かって問いかけたら色々と教えてもらえます」

 言っている意味が理解できないんだが。

 世界に向けて質問すればいいのか?

「おーい、世界さーん」

『はい! お呼びでしょうか?』

 ぶほっ、なんか世界から返事きたんだけど!?

「あー、世界権限レベルとは何だ?」

『この世界の情報にアクセスするための権限です。レベルは5つまで存在します。レベル1は一般クラスで、私に話しかけても返答はありません。レベル2は君臨者クラスで、一国の君主や多くの者を支配する者で、世界に話しかけると適当に部下があしらっています。レベル3はダンジョンマスターで、この世界のことわりなどについて質問されたら答えて良い範囲で私か部下が答えます。レベル4は亜神クラスで、答えられる質問が増えます。レベル5は神クラスで、世界について何でも私が答えます』

 なるほど、意味は分かるが理解できない。
 まずそれをどうやって知るんだよ。

 そもそも世界に話しかけるなんて発想が思いつかないぞ。
 答えてくれるなんて思わないからな。

「じゃあ次の質問だ。俺はこうして話しかけられているということは、権限レベル2以上ということだよな。魔王だったからだと思うが、今の俺の権限レベルはいくつだ?」

『レベル5でございます』

「へ?」

『貴方様の世界権限レベルは最高の5でございます』

「何でやねん」

 思わずツッコミ入れてしまった。

『貴方様は実力と魂の力強さが神以上でございます』

「んー。よく分からないが、他の神よりちょっとだけ強いってことか?」

 いやいや、自分で言っててありえないんだがな。

『貴方様は現在どの神よりも強いと断言致します。ハッ、恐れ多くも他の神などと貴方様を比べてしまい申し訳ございません。どうかお許し下さい』

 いやいやいや、なんかおかしいって。

 俺は簡単に騙されないからな。
 神々に勝てるわけないだろう。

「そうだ、お前は誰なんだ?」

『世界神です。若輩者ながらこの世界を管理しております』

「あ、そうですか。神ですか」

 なんか想像できてたけど、こいつがこの世界を管理しちゃってる神なのか。

 まさか神と会話するとは思ってもみなかったわ。
 さっすがファンタジーだ。

「何でも答えるって言ってたけど、他に神はいるのか?」

『私以下の天上神は数えるほどですが存在しております。私以上は貴方様のみでございます。ああ、また比べてしまいました。申し訳ございません。付け加えるなら亜神もこの世界の地上世界に多く存在しております』

「想像できないなー。ちなみに今の情報とか他の情報は権限レベル3で知れるか?」

『先ほどまでご説明申し上げたかなりの情報は、4以上でございます。一部権限が5の情報もございます』

「なるほどな。普通は知れないような世界の情報だってことか。ちなみにお前は名前あるのか?」

『神名でございますか。一応恐れ多いですが持っております。分かりやすく発音するのであればクレニルヒアと申します』

「クレニルヒアか、長いな。声が女性だけど、女神か? それとも中性的存在?」

『ご推察の通り私は女神でございます。神名が長くて申し訳ございません。略して下さっても、適当に呼んでいただいても大丈夫ですので、貴方様が呼びやすい呼び方でお願い致します』

 なんか態度が低いというか丁寧というか、神がこんなんでいいのだろうか。

「じゃあクレアと呼ぶか。何でも質問に答えるのか確かめていいか?」

『はい、何でも嘘偽り無くお答えいたします』

「そうか、クレアは子供とかいる?」

『う、処女神です。出会いが無くて・・・』

「家族はいる?」

『単独神です。自然発生したと思っていただければ、その認識で間違いありません』

「じゃあスリーサイズは?」

『は、はい。上から「ちょっと魔王様!!」なな・・・』

 やばい、エルビナが目の前にいるの忘れてた。

「魔王様、さっきから聞いていたら女神様ナンパでもしてるんですか? 流石に止めますよ」

「悪かった。何でも答えるってクレアが言うから、ついな。じゃあクレア、ダンジョンでスキルオーブが欲しいんだけどさ、何か良いアイデアない?」

『ダンジョンから特定のアイテムを入手したいとのことでしたら、ダンジョン設定を変更しましょう。権限レベル5でないとできないのですが、貴方様なら可能です』

 権限レベル5って凄いなー、と小並感を抱いてしまった。
 もはや何でもありだな。

「よし、じゃあ早速エルビナが作ったダンジョンの設定を変更するか。エルビナ、いいか?」

「勿論いいですよ。私は魔王様のものです。なので私の物は魔王様のものです。何でも好きにしていただいて構いません」

 逆ジャイ○ン宣言しよったな。

『私も貴方様のものになりたいです!』

「いやクレア、対抗しなくていいから」

 女神よ、そんなんでいいのか。

 とりあえずエルビナの許可も取れたし、設定変更とやらをやってみるか。

『まずはダンジョンメニューオープンと言葉に出すか念じてください』

 何そのステータスオープン的なもの。流石に言葉に出すのは恥ずかしいからやめておこう。

 ダンジョンメニューオープン。

「うおっ、凄いなこれ。マジでゲーム画面みたいだ」

『貴方様のイメージ通りにお創り致しました。お気に召していただけましたでしょうか?』

「おう。これなら操作も分かりやすくていいな。よしよし、今だけボスのレアドロップ確率を100パーセントにして、魔法適性のスキルオーブのみ出るようにするか。おー! 魔法適性だけでこんなにあるのか。あ、よく見たら俺全部使えるんだな。さて、ミルシャは水が使えるから、あとは火、風、木、光、闇あたりが使えたら、本人が望んでいたキラキラ魔法になるだろう」

『あの、貴方様にご意見するのは恐れ多いのですが、目的が達成され次第ダンジョン設定の方は元に戻していただきたく思います。いえ、もちろん、戻さなくても世界がちょっと歪んじゃうだけですので私が何とかしますが、できればお願い致します』

 なるほど、世界が歪むとか見てみたいけど迷惑がかかるなら終わったら設定初期化しとくか。

「おう、分かった。クレアには色々と教えてもらったからちゃんと設定を戻しておくよ。よし、リラシャ召喚!」

「リラシャ、召喚されちゃいました!」

 召喚魔法陣からシュパッと出てきた擬態スライムで使い魔のリラシャ。
 彼女には早速ダンジョンに行ってもらおうと思う。

「リラシャ。エルビナが作ったダンジョンに行き、階層ボスを倒してアイテムを入手してきて欲しい。頼めるか?」

「はいっ! リラシャ、行きます!」


 そして30分後、無事に帰還したリラシャから60個ほどスキルオーブを渡された。

 うん、1個30秒ペースで取ってくるとか正気か?

 何個取ってくるか指定しなかった俺も悪いが、取りすぎな気がする。
 これ、一個白金貨が飛ぶくらいの値段だったよな?

「ま、まあ、ありがとなリラシャ」

「はい! また何かご入用ございましたらいつでもお申し付け下さい! ではリラシャ、これにてドロン致します!」

 こうして無事に魔法適性が増えるスキルオーブをゲットしたエルリック。

 流石に多いと思ったのか、10個だけミルシャに渡して覚えさせ、スキルオーブ集めは一件落着したのであった。


 残りは空間収納の肥やしになってしまったことは語るまでもないが、いつか役に立つ日が来ることであろう・・・多分。



しおりを挟む
感想 70

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

処理中です...