僕は死んだ。そして転生した。…………エロゲのヒロインとして。

布施鉱平

文字の大きさ
5 / 11

家族

しおりを挟む
 なんとかスラムを抜け出した後も、ボクとウィルはなるべく人通りのない道を選びながら歩いて、ようやく神殿にたどり着くことができた。

 そこで待ち受けていたのは…………

「リースっ!!」

 完全武装した神殿の武官たちと、それを指揮する父さんの姿だった。
 明らかに数が多すぎるのは、たぶん非番の武官までかき集めたからだろう。

 そこにひょっこりと帰ってきてしまった時の居たたまれなさと言ったら…………

 まあ、完全にボクが悪いんだけどさ。

「嬢ちゃんが戻ってきたぞ!」
「いやー、良かった良かった!」
「これで武官長の重圧プレッシャーもちょっとは…………あ、すんません」

 ボクのために集まってくれた人たちが、思い思いに安堵の声を発する中、ゆっくりとした足取りで近づいてくる女性。

 …………ボクの母さんだ。

「リース…………っ」
「あっ!」

 ボクは目の前で崩れ落ちそうになった母さんを、咄嗟に支える。
 母さんの体は、細かく震えていた。

「リース…………リース…………無事で良かった…………」

 涙ながらにボクの無事を喜んでくれる母さん。

「お母さん…………ごめんなさい…………」

 ボクは心の底から母さんに謝った。
 自分の行動が軽率だったことはいなめない。

 なにせ、三日間も寝たきりだった七歳の女の子が、今度は飛び出したっきり夜まで行方不明だったのだ。
 親なら死ぬほど心配して当たり前だろう。

「いいの…………いいのよ、リース。あなたが無事だったなら、私はそれ以上何も望まないわ…………」

 母さん…………さすが神官長を務めているだけあって、優しくて寛大な人だ。

「俺はただ許すつもりはないぞ、リース」

 う…………いつの間にか近くにいた父さんが、腕組みしてボクを見下ろしている。
 
「ふぐっ、ご、ごめんなさい、お父さん…………」

 さすが武官長を務めている父さんだけあって、怒ったときの威圧感が半端ない。
 睨まれるだけで泣きそうになる。

「ん…………? リース、その子は?」

 その恐ろしい父さんの視線が、ボクのすぐ後ろにいる男の子────ウィルへと向けられた。

「あ…………この子は…………」
「……俺は、ウィルといいます。お嬢さんは、俺の心と母の魂を救ってくれた素晴らしい方です。
 ですから、どうかあまり怒らないであげてください。…………お願いします」

 ボクが紹介するまもなく、父とボクの間に入って名を名乗り、頭を下げるウィル。
 
「む…………」

 父もみすぼらしい姿の少年の礼儀正しい態度に面食らったようで、なにか言いかけていた言葉を飲み込んだ。
 
 ただ、ボクに向けられた視線は『あとで説教だからな』と如実に語っていた。

 はい、そうですね。
 全面的にボクが悪いので、素直に怒られようと思います…………

 


 その後、ボクは父さんにガッツリ怒られた。
 それはもう、ガッツリと、こってりと、完膚なきまでに怒られた。

 スラムに行った理由も当然問い正されたが、『胸騒ぎがして、居ても立ってもいられなくなって飛び出した』とだけ言っておいた。

 本当の理由なんて言えるわけない。
 娘の中身が三十のおっさんだとか、実は将来寝取られたりレイプされるのを回避するために頑張ってますとか、両親だってそんな真実聞きたくないだろう。

 そして、ボクがスラム街から連れ出してきたウィルの処遇に関してだけど………… 

 最初は神殿が経営する孤児院に送られる予定だったのを、ボクがゴネにゴネて神殿に武官見習いとして置いてもらえることになった。

 神殿の警備責任者である父さんは当然いい顔をしなかったけど、神官長である母さんに「これも神のお導きかもしれません」と言われては引き下がらざるを得なかったようだ。

 神様って便利だ。

 これで流れとしてはゲームと同じになったわけだけど、ボクがフライングしたせいで三年早くウィルを保護することになってしまった。
 
 ウィルを救えたことを後悔はしていないが…………

 これからどうなるのか、ウィルを早く保護したことで物語にどのような影響が出るのか、少し不安でもあった。

 
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る

丸三(まるぞう)
ファンタジー
中世近世史を研究する大学講師だった男は、過労の末に倒れ、戦国時代へと転生する。 目覚めた先は、近江・長浜城。 自らの父は、豊臣秀吉の弟にして政権の屋台骨――豊臣秀長。 史実では若くして病没し、豊臣政権はやがて崩れ、徳川の時代が訪れる。 そして日本は鎖国へと向かい、発展の機会を失う。 「この未来だけは、変える」 冷静で現実主義の転生者は、武ではなく制度と経済で歴史を動かすことを選ぶ。 秀長を生かし、秀吉を支え、徳川を排し、戦国を“戦”ではなく“国家設計”で終わらせるために。 これは、剣ではなく政で天下を取る男の物語。 「民が富めば国は栄え、国が栄えれば戦は不要となる」 豊臣政権完成を目指す、戦国転生・内政英雄譚。 ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...