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再び、異世界の勇者
第二十八話、エーギル13世の苦悩
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「なにっ、失敗しただとっ!?」
────地球に転移した優が、裕子を抱き潰しているちょうどその頃。
異世界では、エーギル王国の国王であるエーギル13世が、目の前で平伏するオウルに向かって怒声をあげていた。
「どういうことだっ! たかが小娘ひとりを、なぜ暗殺できなかったっ!」
「……はっ、屋敷に侵入しようとしたところ、背後からユウに急襲されてしまい……」
「言い訳など聞きたく無いっ!」
自分で説明を求めておきながら逆ギレするエーギル13世。
全くもって理不尽ではあるが、これが会社の上司だというならともかく、相手は国の最高権力者である。
反論が出来るはずもなく、オウルは「申し訳ありません」と床に額を擦りつけた。
その姿に少し溜飲が下りたのであろう。
エーギル13世は「ふーっ……」と長く息を吐くと、声のトーンをやや抑え、
「……ユウにハニートラップを仕掛けて屋敷から引き離し、その間に襲撃をする予定だったな。それはどうなった。ユウが戻ってきたと言うことは、失敗したと言うことか?」
「いえ、それが────」
と、床に擦りつけていた頭を上げ、オウルは作戦の全容を王に説明した。
ハニートラップを仕掛けたが、ユウは引っかからなかったこと。
なぜかハニートラップ要員とは全く関係の無い、連絡係のクロウがユウに襲われたこと。
そして、クロウがユウに犯されているその同時刻に、オウルたちがユウに強襲されたこと。
報告を全て聞き終えたエーギル13世は、怪訝な顔で口を開いた。
「……それはつまり、どういうことだ? ユウが同じ時間に、別の場所にいたと言うことか?」
「はい。結果だけを見れば、そういうことになります。ですが、それはあり得ないことです」
「あたりまえだろう。いくら勇者であろうとも、そんなことは不可能だ。斬って分裂するスライムでもあるまいし、一人の人間が二人になることはない」
冗談交じりにエーギル13世が正解を言い当てるが、それは当の本人によって流された。
「はい、不可能です。となると、可能性は一つしかありません。ユウとナイトは、非常によく似た別人だと言うことです」
「むぅぅ……っ」
オウルの出した結論に、エーギル13世は唸り声をあげた。
ユウとナイトが別人。
その答え自体は、納得できる。
そもそも、勇者として活動しながら冒険者をやるなど、どだい無理な話だったのだ。
だが、二人が別人だということで、新たな問題が生じてしまった。
「ユウとナイト……ともに驚異的な戦闘能力を持つ二人が協力関係にある、ということか……」
それは、由々しき事態だった。
市場にいたのは、マスクで目元を隠していたのでナイト。
そして、ナイトの屋敷の前でオウルたちを襲撃したのがユウ。
さらにその屋敷の中にユウが連れ去ったメイがいるとなれば、二人の関係は誰の目にも明白だ。
「まずい……っ、まずいぞ……っ」
ガシガシと頭をかきむしりながら、エーギル13世が忙しなく部屋をうろつき回る。
ユウ一人でさえ、敵対されれば国家存続の危機なのだ。
それに加えナイトまでもが敵に回るかも知れないとなれば、もはやエーギル王国の運命は風前の灯火だと思われた。
「……エーギル様」
「なんだっ、オウルっ! ワシは今、どうするべきか考えて……っ!」
「こうなればもはや、背に腹は代えられません。────あの魔女に依頼するしか、この国が生き延びる道はないのではないでしょうか」
「…………っ!!」
オウルの口から発せられたその言葉に、エーギル13世は息を飲んだ。
────あの魔女。
その名を口にするのも悍ましい、邪悪な女。
「……きさま、正気で言っているのか?」
やや顔を青ざめさせながら、エーギル13世はオウルを問いただした。
「残念ながら」
返ってきた答えは、いつも通りの淡々としたもの。
だが、その声に含まれる幾分かの恐怖を、エーギル13世は感じ取っていた。
「…………」
エーギル13世は、必死に考える。
確かに、伝説の暗殺者とまで呼ばれるオウルすら恐れさせるあの魔女ならば、ユウやナイトを葬り去る事が出来るかも知れない。
だが、その為には、王であるエーギル13世自身が直接交渉に赴かなければならなかった。
それが、あの悍ましい魔女の決めたルールであるからだ。
「……少し、考えてみることにする。さがれ」
「はっ」
「あと、さがるついでに、リリアを寄こせ。気晴らしが欲しい」
「かしこまりました」
オウルを部屋から退室させ、エーギル13世はベッドに腰掛けた。
少し考えるとは言ったものの、すでに答えは決まっているようなものだ。
オウルの言うとおり、もはやあの魔女に頼る以外の道は残されていないだろう。
それでも決定を先伸ばしたのは、覚悟を決める時間が欲しかったからだ。
コン、コン
「おうさまっ、失礼します☆」
扉をノックし、なにやら軽い感じのメイド────メイに男に取り入るのが上手いと評されていた、後輩メイドのリリアが入ってきた。
「うむ、こちらに来て、しゃぶれ」
「は~いっ、了解です☆」
命令されたリリアが、あざとい笑顔を浮かべながらエーギル13世の前に跪き、取り出したチンポを口に含んだ。
じゅぷじゅぷと音を立てながら、リリアが上目遣いでフェラを開始する。
だがやはり、エーギル13世の不能チンポが反応をすることは無かった。
ユウに加えてナイトという不安材料まで追加され、さらに悍ましい魔女のもとに出向かねばならないのだから、それも仕方ない事だろう。
(はやく、女が抱けるようになりたい……)
エーギル13世はピクリともしない愚息を見て悲しくなりながら、そう心の中で呟くのだった。
────地球に転移した優が、裕子を抱き潰しているちょうどその頃。
異世界では、エーギル王国の国王であるエーギル13世が、目の前で平伏するオウルに向かって怒声をあげていた。
「どういうことだっ! たかが小娘ひとりを、なぜ暗殺できなかったっ!」
「……はっ、屋敷に侵入しようとしたところ、背後からユウに急襲されてしまい……」
「言い訳など聞きたく無いっ!」
自分で説明を求めておきながら逆ギレするエーギル13世。
全くもって理不尽ではあるが、これが会社の上司だというならともかく、相手は国の最高権力者である。
反論が出来るはずもなく、オウルは「申し訳ありません」と床に額を擦りつけた。
その姿に少し溜飲が下りたのであろう。
エーギル13世は「ふーっ……」と長く息を吐くと、声のトーンをやや抑え、
「……ユウにハニートラップを仕掛けて屋敷から引き離し、その間に襲撃をする予定だったな。それはどうなった。ユウが戻ってきたと言うことは、失敗したと言うことか?」
「いえ、それが────」
と、床に擦りつけていた頭を上げ、オウルは作戦の全容を王に説明した。
ハニートラップを仕掛けたが、ユウは引っかからなかったこと。
なぜかハニートラップ要員とは全く関係の無い、連絡係のクロウがユウに襲われたこと。
そして、クロウがユウに犯されているその同時刻に、オウルたちがユウに強襲されたこと。
報告を全て聞き終えたエーギル13世は、怪訝な顔で口を開いた。
「……それはつまり、どういうことだ? ユウが同じ時間に、別の場所にいたと言うことか?」
「はい。結果だけを見れば、そういうことになります。ですが、それはあり得ないことです」
「あたりまえだろう。いくら勇者であろうとも、そんなことは不可能だ。斬って分裂するスライムでもあるまいし、一人の人間が二人になることはない」
冗談交じりにエーギル13世が正解を言い当てるが、それは当の本人によって流された。
「はい、不可能です。となると、可能性は一つしかありません。ユウとナイトは、非常によく似た別人だと言うことです」
「むぅぅ……っ」
オウルの出した結論に、エーギル13世は唸り声をあげた。
ユウとナイトが別人。
その答え自体は、納得できる。
そもそも、勇者として活動しながら冒険者をやるなど、どだい無理な話だったのだ。
だが、二人が別人だということで、新たな問題が生じてしまった。
「ユウとナイト……ともに驚異的な戦闘能力を持つ二人が協力関係にある、ということか……」
それは、由々しき事態だった。
市場にいたのは、マスクで目元を隠していたのでナイト。
そして、ナイトの屋敷の前でオウルたちを襲撃したのがユウ。
さらにその屋敷の中にユウが連れ去ったメイがいるとなれば、二人の関係は誰の目にも明白だ。
「まずい……っ、まずいぞ……っ」
ガシガシと頭をかきむしりながら、エーギル13世が忙しなく部屋をうろつき回る。
ユウ一人でさえ、敵対されれば国家存続の危機なのだ。
それに加えナイトまでもが敵に回るかも知れないとなれば、もはやエーギル王国の運命は風前の灯火だと思われた。
「……エーギル様」
「なんだっ、オウルっ! ワシは今、どうするべきか考えて……っ!」
「こうなればもはや、背に腹は代えられません。────あの魔女に依頼するしか、この国が生き延びる道はないのではないでしょうか」
「…………っ!!」
オウルの口から発せられたその言葉に、エーギル13世は息を飲んだ。
────あの魔女。
その名を口にするのも悍ましい、邪悪な女。
「……きさま、正気で言っているのか?」
やや顔を青ざめさせながら、エーギル13世はオウルを問いただした。
「残念ながら」
返ってきた答えは、いつも通りの淡々としたもの。
だが、その声に含まれる幾分かの恐怖を、エーギル13世は感じ取っていた。
「…………」
エーギル13世は、必死に考える。
確かに、伝説の暗殺者とまで呼ばれるオウルすら恐れさせるあの魔女ならば、ユウやナイトを葬り去る事が出来るかも知れない。
だが、その為には、王であるエーギル13世自身が直接交渉に赴かなければならなかった。
それが、あの悍ましい魔女の決めたルールであるからだ。
「……少し、考えてみることにする。さがれ」
「はっ」
「あと、さがるついでに、リリアを寄こせ。気晴らしが欲しい」
「かしこまりました」
オウルを部屋から退室させ、エーギル13世はベッドに腰掛けた。
少し考えるとは言ったものの、すでに答えは決まっているようなものだ。
オウルの言うとおり、もはやあの魔女に頼る以外の道は残されていないだろう。
それでも決定を先伸ばしたのは、覚悟を決める時間が欲しかったからだ。
コン、コン
「おうさまっ、失礼します☆」
扉をノックし、なにやら軽い感じのメイド────メイに男に取り入るのが上手いと評されていた、後輩メイドのリリアが入ってきた。
「うむ、こちらに来て、しゃぶれ」
「は~いっ、了解です☆」
命令されたリリアが、あざとい笑顔を浮かべながらエーギル13世の前に跪き、取り出したチンポを口に含んだ。
じゅぷじゅぷと音を立てながら、リリアが上目遣いでフェラを開始する。
だがやはり、エーギル13世の不能チンポが反応をすることは無かった。
ユウに加えてナイトという不安材料まで追加され、さらに悍ましい魔女のもとに出向かねばならないのだから、それも仕方ない事だろう。
(はやく、女が抱けるようになりたい……)
エーギル13世はピクリともしない愚息を見て悲しくなりながら、そう心の中で呟くのだった。
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