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第一章
与えられた力
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正男は白い犬────ポチに留守番を頼むと、また森の中に戻ってきていた。
ロリーナに命じられたふかふかベッドを作るため、ふかふかの毛皮を持つ動物を探しに来たのである。
本当はポチを連れてきた方が、探すにしても狩るにしても役に立つのだろうが、先ほどの悲鳴の件もあり、ロリーナの安全を最優先に考えてポチは残してきたのだ。
ちなみに、このポチという名前。
考えたのは正男ではなくロリーナである。
そしてポチという名前は正式名称ではなく、正しくは『無敵怪獣ポチョムキン』という名前だった。
なんでも、詩人に語らせた寝物語の中に、そういった名前の怪獣が出てきたのだとか。
なぜ寝物語に、無敵怪獣が出てくるようなエンタメ性の強い話を詩人が語ったのかは謎である。
ともかく、自分で名付けておいて毎回『無敵怪獣ポチョムキン』と呼ぶのが面倒になったのか、すぐに省略されて結局は『ポチ』という名前に落ち着いた、と言う訳だ。
……ポチのことは置いておいて、正男である。
『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』の能力と、新たに手に入れた『盲目のレ☆プおじさん』の能力を併用して動物を探していた正男だったが、この『盲目のレ☆プおじさん』はなかなかに凄まじい性能であった。
『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』が万能型の能力であるとするならば、『盲目のレ☆プおじさん』は一点特化型の能力だ。
それはとにかく耳がいいだけ、というような単純な能力ではない。
声を聞いただけで相手が美女かどうかを判断できる、というのがどういうことなのか、最初は正男にも分からなかったのだが、目を閉じて周囲の音に耳を澄ますと────なんと、頭の中に周囲の光景が精密な線画のごとき描写で浮かび上がったのである。
しかも前方だけではなく、周囲360°全方位の光景がだ。
おそらくは音の反射を脳内で線画に変換しているのだろうが、それにしたって緻密すぎる。
なんなら、目を閉じていた方が物の形がはっきり分かるくらいだった。
たぶん似たような能力を持つ某アメコミヒーローよりも、さらに上位の能力だ。
これだけの能力を有していながら、レ☆プにしか使用しない『竿役おじさん』とは一体なんなのか。
まあ、この同人を製作した作者も、おそらくそこまで細かいことは考えていなかったのだろう。
最新の能力である『ロリコン獣姦3Pレ☆プおじさん』にしても、犬と目を合わせただけで心が通じ合うとか、もはや超能力である。
正男は自らに与えられたこれらの凄まじ能力の数々について、ある考察をしていた。
それは、『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』にしろ、『盲目のレ☆プおじさん』にしろ、『ロリコン獣姦3Pレ☆プおじさん』にしろ、本来の同人創作物中に出てきた『竿役おじさん』は、ここまで強力な能力を持ってはいなかったのではないか、ということだ。
なにせ、性愛を司る神であるとはいえ、正男の能力は超常の存在である『神』によって与えられた能力なのである。
その神の力によってブーストが掛かり、本来あるべき能力よりも性能が向上しているのではないか、と正男は思ったのだ。
────そして、正男のその考察は正しかった。
正男はあずかり知らぬことだが、女神エロースは人間が堕落した結果、性が9割、愛が1割という極端な権能をもつ神として歪んでしまった存在だ。
つまりエロが9割、ラブが1割で構成された神である。
そしてそのパワーバランスが完全にエロに傾いてしまったエロ女神が、エロによって蕩けた精神状態のまま、手加減もなしにエロい能力を正男に与えてしまったのだ。
そりゃあ、過剰にブーストも掛かるというものである。
正男に注がれた神の力は、エロースが手加減を忘れていたせいで、本来神が勇者に与えるべき量を遥かに逸脱していたのだ。
その為、正男の中にはまだいくつもの凄まじい能力が眠っているのだが……そのことを正男が知るのは、まだ少し先の未来の話である。
◇
二つの『竿役おじさん』能力を駆使した正男は、早々にふかふかの毛並みを持つ動物を見つけた。
それは、一言で言うなら『ヒツジの皮を被った足の短い馬』であった。
もしくは『馬面のヒツジ』である。
その姿を見て、正男はようやく自分は異世界に来たのだ、ということを実感として受け入れた。
そしてその馬面を容赦なく石斧で叩き割ると(この辺りも精神が『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』に影響された結果である)、血抜きをして皮を剥ぎ、肉と毛皮を別々に蔓草で縛り、体の前後に吊して帰路についた。
毛皮はもちろんロリーナのベッド……というか敷き布団として使い、肉は正男とロリーナの食事、そしてポチの餌になる予定である。
ポチへのおやつとして、馬面ヒツジの大腿骨も持って帰っていた。
大成果を上げた正男は、喜ぶロリーナの顔を想像しながら意気揚々と拠点である水場にたどり着き────
そこで、ポチのふかふかとした毛並みを背もたれにして、気持ちよくグースカと眠るロリーナの姿を目撃し、崩れ落ちた。
そして正男は失意の中、この世界に来てからまだ一睡もしていなかった疲れが押し寄せてきて、気絶するように眠りに落ちていったのだった。
ロリーナに命じられたふかふかベッドを作るため、ふかふかの毛皮を持つ動物を探しに来たのである。
本当はポチを連れてきた方が、探すにしても狩るにしても役に立つのだろうが、先ほどの悲鳴の件もあり、ロリーナの安全を最優先に考えてポチは残してきたのだ。
ちなみに、このポチという名前。
考えたのは正男ではなくロリーナである。
そしてポチという名前は正式名称ではなく、正しくは『無敵怪獣ポチョムキン』という名前だった。
なんでも、詩人に語らせた寝物語の中に、そういった名前の怪獣が出てきたのだとか。
なぜ寝物語に、無敵怪獣が出てくるようなエンタメ性の強い話を詩人が語ったのかは謎である。
ともかく、自分で名付けておいて毎回『無敵怪獣ポチョムキン』と呼ぶのが面倒になったのか、すぐに省略されて結局は『ポチ』という名前に落ち着いた、と言う訳だ。
……ポチのことは置いておいて、正男である。
『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』の能力と、新たに手に入れた『盲目のレ☆プおじさん』の能力を併用して動物を探していた正男だったが、この『盲目のレ☆プおじさん』はなかなかに凄まじい性能であった。
『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』が万能型の能力であるとするならば、『盲目のレ☆プおじさん』は一点特化型の能力だ。
それはとにかく耳がいいだけ、というような単純な能力ではない。
声を聞いただけで相手が美女かどうかを判断できる、というのがどういうことなのか、最初は正男にも分からなかったのだが、目を閉じて周囲の音に耳を澄ますと────なんと、頭の中に周囲の光景が精密な線画のごとき描写で浮かび上がったのである。
しかも前方だけではなく、周囲360°全方位の光景がだ。
おそらくは音の反射を脳内で線画に変換しているのだろうが、それにしたって緻密すぎる。
なんなら、目を閉じていた方が物の形がはっきり分かるくらいだった。
たぶん似たような能力を持つ某アメコミヒーローよりも、さらに上位の能力だ。
これだけの能力を有していながら、レ☆プにしか使用しない『竿役おじさん』とは一体なんなのか。
まあ、この同人を製作した作者も、おそらくそこまで細かいことは考えていなかったのだろう。
最新の能力である『ロリコン獣姦3Pレ☆プおじさん』にしても、犬と目を合わせただけで心が通じ合うとか、もはや超能力である。
正男は自らに与えられたこれらの凄まじ能力の数々について、ある考察をしていた。
それは、『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』にしろ、『盲目のレ☆プおじさん』にしろ、『ロリコン獣姦3Pレ☆プおじさん』にしろ、本来の同人創作物中に出てきた『竿役おじさん』は、ここまで強力な能力を持ってはいなかったのではないか、ということだ。
なにせ、性愛を司る神であるとはいえ、正男の能力は超常の存在である『神』によって与えられた能力なのである。
その神の力によってブーストが掛かり、本来あるべき能力よりも性能が向上しているのではないか、と正男は思ったのだ。
────そして、正男のその考察は正しかった。
正男はあずかり知らぬことだが、女神エロースは人間が堕落した結果、性が9割、愛が1割という極端な権能をもつ神として歪んでしまった存在だ。
つまりエロが9割、ラブが1割で構成された神である。
そしてそのパワーバランスが完全にエロに傾いてしまったエロ女神が、エロによって蕩けた精神状態のまま、手加減もなしにエロい能力を正男に与えてしまったのだ。
そりゃあ、過剰にブーストも掛かるというものである。
正男に注がれた神の力は、エロースが手加減を忘れていたせいで、本来神が勇者に与えるべき量を遥かに逸脱していたのだ。
その為、正男の中にはまだいくつもの凄まじい能力が眠っているのだが……そのことを正男が知るのは、まだ少し先の未来の話である。
◇
二つの『竿役おじさん』能力を駆使した正男は、早々にふかふかの毛並みを持つ動物を見つけた。
それは、一言で言うなら『ヒツジの皮を被った足の短い馬』であった。
もしくは『馬面のヒツジ』である。
その姿を見て、正男はようやく自分は異世界に来たのだ、ということを実感として受け入れた。
そしてその馬面を容赦なく石斧で叩き割ると(この辺りも精神が『サバイバル知識豊富な寝取りおじさん』に影響された結果である)、血抜きをして皮を剥ぎ、肉と毛皮を別々に蔓草で縛り、体の前後に吊して帰路についた。
毛皮はもちろんロリーナのベッド……というか敷き布団として使い、肉は正男とロリーナの食事、そしてポチの餌になる予定である。
ポチへのおやつとして、馬面ヒツジの大腿骨も持って帰っていた。
大成果を上げた正男は、喜ぶロリーナの顔を想像しながら意気揚々と拠点である水場にたどり着き────
そこで、ポチのふかふかとした毛並みを背もたれにして、気持ちよくグースカと眠るロリーナの姿を目撃し、崩れ落ちた。
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