オニの世、ヒトの世〜恋情の思慕〜

冬月紫音

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龍と晴と華夜

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俺たちは25歳になった。

オニは人間と同じで成人となるのは20歳。
ひとつ人間と違うのは20歳で大人のオニとして認められ社会人となることだ。

まだ俺は人間の世界には行ったことがないから知識だけだが、人間は基本的に高校を卒業したら働く者と大学というより勉強する場に入学すると聞いたことがある。

でもオニの社会では大学という教育機関はない。
高校を卒業したら20歳になるまでに仕事を見つけ、見つけた仕事で見習いとして働く。
認められればそのまま20歳になったらそこで働く。そういう仕組みだ。

より勉強したい奴はどこかの研究室に入って専門分野を勉強するが、それは大学とは違う。

俺や晴は両親が政治家なのもあって、自動的に政治の世界に入ることは決まっていた為、高校の時から学校とは別に政治の勉強などを家庭教師をつけられて勉強していた。

高校卒業と同時に父親の下で見習いとして働き、次期首相として教育させられてきた。

まだその立場になることは出来ないが、幹部候補生として直接意見を述べることは許されていた。

それを認めてもらうことが難しいこともあって、俺の意見が通らないことがほとんどで、毎回自分の意見がどうすれば通るのが勉強だった。

ただひとつの願いを絶対に叶えるために俺は必死になった。

23か24歳になった頃に晴と色々話し合い俺たちの願いを叶えるために動き出した。

晴も俺の側で働いてくれていて、昔みたいに弱い所は無くなった。
根底ではたまに気の弱いところが出たりするが、それは俺の前でだけで、持ち前の賢さで大人たちを黙らせていた。

昔よく華夜が俺に晴は弟みたいで可愛いのと言っていたが、身長も高くなり多分可愛いと言われる要素は無くなったと思う。

俺で身長は190センチぐらいあるが、晴も185センチあると本人が言っていた。

まだ伸びて俺を抜かす!と言っているがそれは俺にとって唯一残った晴の可愛いところなのかもしれない。

そして俺たちの計画に目処がたち、色々と周りを抑えていき、俺たちの意見に文句を言わせないようにしていき、今日ついに父親もいる大きな場面で意見を言う日だった。

「皆さん、お忙しい中時間を割いていただきありがとうございます。では早速話を進めていきたいと思います。」

俺は沢山の政治家が周りにいて、皆が俺に注目していたのが伝わったが、俺の側にサポートとして立っている晴がいるためそこまで緊張もしなかった。

「お手元の資料をご覧ください。私とここにいる晴と色々統計をとった結果このことは今後のオニの世で一番の問題であるだろうと感じ、今から動いていかなければならないと感じ報告と新たな政策を提案いたします。」

色々な人達が事前に机に配布していった資料をペラペラめくる音がした。

「この度、私とここにいる晴とで提案させていただく議題は今後のオニの危機的状況についてです。」

俺の父親は資料をめくらず俺のことを真剣な表情で見ていた。
今この場にいるのは父であって父ではない。

社会人になると見えてきたのは父の強大さだった。

自分にも他人にも厳しい父は仕事場ではやはり国をまとめる首相だった。

だから今もきっと父は俺を息子としてではなく次期首相になる者として判断するのだろう。

「現在、我がこの街でもそうですが、年々オニの数が減っているのはご存知だと思います。」

オニの数は減っていた。

オニ同士の間でヒトが生まれるからだ。

しかもオニであっても人間の世界で人間と結ばれる者もいるため、この街から去って行ったりする。

おそらく人間と結ばれた間の子は人間の血が混ざることもありヒトだとは思う。

だが、もしオニが産まれたとしてもどちらかが人間であればこのオニの世界に入ることは許されていない。

「オニの世界で小さな村が沢山消えていっています。それはヒトが増えているからです。もともとオニ同士では子供は生まれにくいと言われています。ですがやっと産まれた一家の子が一人でその子がヒトになった場合、後継はいなくなります。それが小さな村で起きた場合、実際どんどんとオニの人数は減っていき、現に今も消えて行っている村が沢山あります。少ない人数になれば村を維持することも難しくなり、なるべく大きな街に移住するからです。」

現在、全国色々なところに隠れ住む俺たちオニの住んでいる街や村は5年前まで小さな村を含めても15000ほどの数があった。

しかし最近ではその半分しか無くなっている。

それだけヒトが生まれているということだった。
ヒトが生まれる原因はあまり今もわかっていない。
オニが人間の文化を取り入れ始めたからか、オニの力自体が変化してきているのか、まだ何も判明されていなかった。

オニが減っているのは皆分かっていたのだが、昔決められた掟が大事だと言って誰も見ようとしなかった。

それが俺たち意見を言うために調べて分かったからこそ、それを武器として改善策を言うのだった。

「龍よ、それが分かってお前はどういう施策を持ってきたのだ。」

俺の父親が言った。
威圧感ある声だった。
ついに俺と晴の考えをいう時が来たのだと唾を飲み込んで慎重に言う。

「ヒトを人間の世界にやらずに共存してはどうかと思います。」

その言葉に事前に晴が根回ししていた者以外はざわついた。
掟を変えようとする意見だからだ。

「ヒトといえど、そこは限定させていただきたいのです。ヒトを誰でも許せばそれこそよりオニが減る原因になるかもしれません。現在ヒトが生まれる理由は分かってはいませんが、ヒトは人間ではありません。このオニの世界で生まれたヒトはオニ同士の子です。そのオニ同士の子であるヒトであれば共存しても良いのではないでしょうか。」
「お前はそれが掟に背くことだと分かって言っているのであろうな。その意見が通らなければ、お前は変わり者としてこの政界からも弾かれるぞ!」
「首相、分かって意見しております。しかしそれ以外にどうやってこのオニの世を無くさずに済むのでしょう。ヒトが生まれる原因が現在も分かっていない状況でたった5年で今まであった村や街が半分に消えているんですよ?それはもう五年経てばもっと減るかもしれません。そうなれば掟とか言う状況でもなくなります。だってオニがいなくなれば掟など何の意味ももたなくなるではありませんか。」

その言葉にざわついていた者たちが黙った。

「ここでもう一つ晴から追加の意見もお伝えしたいと思います。」
「では、私からも一つ追加で意見を述べさせていただきます。それはこのオニの世に残すヒトと言っても能力がうまく使うことのできる強い能力保持者のヒトを認めるということにしてはどうでしょう。」

晴は俺と違って静かに語り始めた。

「現在、オニとなっていてもうまく能力を使えない者、逆にいえば能力が出ない者も現れています。統計的に言えばそういう者たちから生まれた子は比較的ヒトになりやすい傾向があります。それが原因とは言いませんが、もしかするとそれもひとつのヒトが生まれる原因なのかもしれません。その為、オニとヒトとが共存する中で、能力の強いヒトと結びつけばもしかするとそれが解消されるかもしれません。でもそれを調べるには実験も必要ですし、不安もあるのはわかります。ですが、今後のオニの世の為に何か今にあったことをしなければこのまま消えていく一方だと思います。掟に逆らうという皆さんの不安も私や龍も分かっております。ですが、能力が強いヒトもそんなにたくさんいるわけではありません。そういうこともふまえて、試験的にも能力が強いヒトと共存してみてはいかがでしょうか。我々のためにも。」

大概の方々が納得しかけていた。
ところがただ一人それを否定するものがいた。
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