主に交われば

かんだ

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20.禁忌

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「早く彼の口を塞いで!!」
 学園長が叫ぶ。
 教師陣は魔法を使わないのか、物理的に止めに行こうとしたが、急にマリグノ先輩の詠唱が終わったことで足を止める。本能的に危険を察知したのかもしれない。
「ルディ・マリグノ君、あなた、禁忌魔法を使いましたね」
 断定的な問い掛けだった。
 マリグノ先輩は乱暴に自身の鼻血を拭って、こちらを振り返る。真っ赤になった星形の瞳孔が細まった。
「おかしいと思っておりました。あなたが、静観しているだけのはずがない」
「学園長? あの生徒は、なにを」
「ルディ・マリグノ君は蛸の海人族。魔力量は多く、扱える魔法の種類も多い。魔法使いの始まりと同じ種。……そして、私欲を抑えられない」
 マリグノ先輩は立ち上がり、にこりと笑う。その表情に何故かゾッとした。
「全てが整った。再構築が始まる」
 マリグノ先輩が小さく、だが響く声で一つの詠唱を続けた。
 突然、大きな魔法陣がリリオン先輩を取り囲んだ。そこには多くの文字が書き込まれており…………人の名前が羅列されているように見えた。
「っはは、やりやがったな、このクソガキ」
 学園長が口悪く吐き捨てる。
「やはり、蛸の海人族を受け入れるんじゃなかった」
「リリカがいなければ無難に卒業したよ」
「禁忌魔法のオンパレードですね」
 二人の会話についていけない。
 特に、続けられた学園長の言葉は理解の範疇を超えていた。
「魂の同化、人体再構築、魔力及び行使権の移行、時間操作」
 だって、それらは夢物語レベルの魔法だったから。
 魂を現世に縫い止め任意のものに同化させる『魂の同化』
 死んだ人体を生き返らせる『人体再構築』
 他者の魔力や持ち物など自分のものとして行使できる『行使権の移行』
 時空を歪めて時間を巻き戻すもしくは早送りもしくは切り取る『時間操作』
 どれも禁忌魔法と認定されている。
 禁忌魔法とは、世の理、倫理、均衡を覆すからこそ禁忌とされているだけで、決して不可能ではない。――とされているが、実際に成功された例はない。魔法は失敗すると必ず行使者に還るため、失敗が前提となっている禁忌魔法を試す者はいない。失敗の対価は決して安くないからだ。
 なのに、マリグノ先輩は、リリオン先輩にその禁忌魔法を行使した?
「リリオン君の体は再構築が行われていますね。あぁ、魂と体の同化が終わった」
「学園長、そんな、禁忌魔法ができるなんて信じられません。彼は確かに蛸の海人族ですが」
「蛸の海人族はトイフェルの生まれ変わり、これはあながち眉唾というわけではありませんよ。蛸の海人族は総じて魔法に関するセンスがずば抜けている上、一度欲を刺激されると抑えられなくなる。トイフェルそのものだ」
 学園長は、トイフェルであれば禁忌魔法を行使できると確信している。
 トイフェルを知っているような言い方だ。
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