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2.天宮のルール
2.天宮のルール
この日、寺尾は天宮の自宅兼仕事場に向かっていた。仲原に頼まれた、「直接渡し伝えるように」という任務を遂行するためだ。カバンの中にはパーティーの招待状が入っている。結構な規模のそれは多くの有名作家が招待されており、天宮にもぜひ出席して欲しいと上司も言っていた。仲原曰く「天宮先生とはメールでのやり取りが基本だが、重要案件の場合は直接伝えるに限る」とのこと。天宮は執筆し終えたらその作品は過去のことにしてしまうタイプらしく、付随する仕事に興味がない。『今執筆している作品』以外の連絡は後回しにしがち。そのため、後回しにされやすいメールではなく、確実に天宮の頭に入れる方法を取るしかないと言うのだ。
今回の招待状も、天宮には出席して欲しいためパーティーの内容と日時を伝える役目だった。その場で出欠席を確認する必要はなく、本当に、ただ、内容と日時の二つを伝えるだけ。
寺尾は『あと十分ほどで着きます』と天宮にメッセージを入れる。一つ前のメッセージは到着時間を示し、そのまた一つ前は仕事場に伺いたいというもの。こまめにメッセージを送る理由は仲原から引き継いだ『天宮ルール』の一つだからだ。
作家にはそれぞれ暗黙のルールがある。付き合う内に担当者が作るルールもあれば、作家本人からの要望で作るルールもある。
天宮の場合は両者ある。
まず、前者の仲原が作ったルールは二つ。その一、天宮のパートナーには適度に無関心でいること。自分からのアクションは挨拶のみで済ませ、パートナーからのアクションには必要最低限で済ますこと。興味も関心も持ってはいけない。ただし愛想は良くすること。その二、絶対に二人の関係性を話題に上げないこと。出会いやいつからお付き合いをしているかなど、天宮へパートナーが関わる話題は禁止。
後者の天宮から担当者へのルールも二つ。その一、自宅に来る際は事前に了承を得て、到着時間を知らせること。天宮からの了承がない場合は例え火急だったとしても応じない。その二、仕事場であったことは仕事に関すること以外口外してはならず、仕事場の滞在時間は必要最低限とすること。
天宮に関するルールはその四点のみだ。他の作家に比べたら少ないし、どれも守るには簡単なものだ。ただ、ほぼパートナーに関するルールだということが気になった。天宮は嫉妬深いのかな、とルールを聞かされた時は軽く考えていたが、天宮の仕事場に通うようになって二ヶ月目でその理由に納得した。
天宮のパートナー、天宮怜は、目を疑うほどに綺麗な男だったのだ。中性的だが女性に見えるわけではないのに、『美しい』という形容詞が誰よりも似合う人間だった。彼が動く度に周囲の時間が止まったように、彼にだけ全集中してしまう感覚に陥る。多分、一つ一つの所作が洗練されていることも理由の一つだろう。外見以外も美しいから、より美しさが引き立つ。
男らしく整った天宮と美しい怜はまさに目の保養にしかならない恋人同士だが、これだけ美しい怜に天宮は気が気でないだろうなと納得したのだ。男が見ても見惚れるのだから、変な虫がつくことに不安になるのは当たり前だ。男女両方を警戒しなければならない。
気を抜けば怜に意識を持っていかれてしまうため、寺尾は天宮を訪問する際はいつも以上に気を引き締めなければならなかった。
その甲斐あってか、寺尾はその四つのルールをきっちりと守れていた。仲原のサポートに回り早半年、天宮からのクレームもなく順調だ。
この日、寺尾は天宮の自宅兼仕事場に向かっていた。仲原に頼まれた、「直接渡し伝えるように」という任務を遂行するためだ。カバンの中にはパーティーの招待状が入っている。結構な規模のそれは多くの有名作家が招待されており、天宮にもぜひ出席して欲しいと上司も言っていた。仲原曰く「天宮先生とはメールでのやり取りが基本だが、重要案件の場合は直接伝えるに限る」とのこと。天宮は執筆し終えたらその作品は過去のことにしてしまうタイプらしく、付随する仕事に興味がない。『今執筆している作品』以外の連絡は後回しにしがち。そのため、後回しにされやすいメールではなく、確実に天宮の頭に入れる方法を取るしかないと言うのだ。
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天宮の場合は両者ある。
まず、前者の仲原が作ったルールは二つ。その一、天宮のパートナーには適度に無関心でいること。自分からのアクションは挨拶のみで済ませ、パートナーからのアクションには必要最低限で済ますこと。興味も関心も持ってはいけない。ただし愛想は良くすること。その二、絶対に二人の関係性を話題に上げないこと。出会いやいつからお付き合いをしているかなど、天宮へパートナーが関わる話題は禁止。
後者の天宮から担当者へのルールも二つ。その一、自宅に来る際は事前に了承を得て、到着時間を知らせること。天宮からの了承がない場合は例え火急だったとしても応じない。その二、仕事場であったことは仕事に関すること以外口外してはならず、仕事場の滞在時間は必要最低限とすること。
天宮に関するルールはその四点のみだ。他の作家に比べたら少ないし、どれも守るには簡単なものだ。ただ、ほぼパートナーに関するルールだということが気になった。天宮は嫉妬深いのかな、とルールを聞かされた時は軽く考えていたが、天宮の仕事場に通うようになって二ヶ月目でその理由に納得した。
天宮のパートナー、天宮怜は、目を疑うほどに綺麗な男だったのだ。中性的だが女性に見えるわけではないのに、『美しい』という形容詞が誰よりも似合う人間だった。彼が動く度に周囲の時間が止まったように、彼にだけ全集中してしまう感覚に陥る。多分、一つ一つの所作が洗練されていることも理由の一つだろう。外見以外も美しいから、より美しさが引き立つ。
男らしく整った天宮と美しい怜はまさに目の保養にしかならない恋人同士だが、これだけ美しい怜に天宮は気が気でないだろうなと納得したのだ。男が見ても見惚れるのだから、変な虫がつくことに不安になるのは当たり前だ。男女両方を警戒しなければならない。
気を抜けば怜に意識を持っていかれてしまうため、寺尾は天宮を訪問する際はいつも以上に気を引き締めなければならなかった。
その甲斐あってか、寺尾はその四つのルールをきっちりと守れていた。仲原のサポートに回り早半年、天宮からのクレームもなく順調だ。
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