教訓のある『今』は無敵

かんだ

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――.8

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 贅沢を尽くした豪奢な一室。屈強な男たちが両サイドに控え、上座には一目見て特別と分かる荘厳な椅子が鎮座していた。そこに座るに相応しい人間は私室から連れ立った者を膝に乗せて優雅に腰を下ろす。
「私との約束を破った者に罰を与える」
 シン、と静まっていた中で、凛とした声が響く。罰、という言葉に動揺したのは、膝に乗せられた、自分だけだ。
「陛下、聞いてください、陛下」
 自分は震える声で目の前の者に請う。罰を与える、と言われた人間は自分ではない。上座から見下ろせる、床に跪いた者だ。なのに動揺し恐怖に震えるのは自分だけ。
「陛下、お願いします」
「私と私が許した者以外には、触れさせるなと言ったはずだ」
「触れさせてないです。ただ、助けてもらっただけです。陛下と、……陛下と長い時間シていたから、体がつらくて。よろけただけで、それで」
 自分は必死だった。そのせいで事実を言っているのに言い訳がましく聞こえるくらいだった。
「だから、そもそも部屋から出るなと言っただろう? それを破って部屋から出て、私以外に触れさせて」
 冷たい声に、背筋がヒヤリとする。
「……僕が、悪いです。陛下の命令を無視した。だから、僕が罰を受ける、べきです」
「そうだな。私の言葉は絶対だ。軽く破るのはお前だけだよ」
「申し訳ございません」
「たかだか家族の来訪に出向くために、私の言葉を無視するなんてな」
「……久しぶり、だったので」
 陛下と呼ばれる男は、その名の通りこの世で最も尊く絶対的なオーラを纏っていた。容貌は言うまでもない。屈強な体躯に美しさを体現した顔は他を魅了させる。……だが、そんな男の口が紡ぐ言葉は冷やかで絶望を感じさせる。
「王の寵愛を唯一受けるお前を誰が罰せられる? 私でさえお前には跪くしか出来ないのに。だからお前の罰はお前の身代わりが受ける」
「どうして……僕が、受けますから。お願いします。鞭打ちでも何でも耐えますから」
「はは! 愛おしいお前にそんなことするわけない。お前はこの世で最も美しいんだ。傷一つ付けないよ」
 男は軽く笑った後、控えていた騎士の一人に指示を出した。
「その者の目を抉り、両腕を切り落とせ」
「陛下っ!!」
 金切り声が出る。自分の落ち度で、優秀な人間が厳しい罰を受けることが耐えられなかった。膝の上から降りようと体を浮かせるが、すぐに強い力で戻される。両頬を片手で掴まれて目線を合わせられた。
「お前は私だけを見ていればいい」
「っお願い、お願いします、陛下。彼は優秀な騎士だと聞きます。僕のせいなのに」
「聞けないお願いだな。もとよりあいつはお前に懸想している。純粋な気持ちで助けたならまだ許せたが、下心のある手で触れたことは許せない。処罰は妥当だ」
 これから起こることを想像したくなくて、ゆるゆると首を振る。お願いだから発言を撤回して欲しい、その一心で男に縋る。
「まだ、若いです。優秀で、これからを担う、人で、腕をき、切り落としたら、何も、出来なくなります。ただ、よろけた僕を、支えただけで」
「泣くな。私以外で感情を揺らすことは許さない」
 自分のせいで、一人の人生が大きく変わってしまうことに恐怖が募り堪らず涙が溢れた。
「これ以上私を怒らせたくなかったら早く泣きやめ」
「……ん」
「だが、お前の意見も分からないではない。両目を抉り、両腕を切り落としたら生活もままならなくなるしな」
「陛下、お願いします。お、温情、を」
「分かった」
 両頬を掴まれたまま顔が近付き、唇が触れ合う。端的に「舌」と言われ、震える唇を薄く開けばすぐに肉厚な舌が入り込んだ。舌を吸われて甘噛みされる。……と、同時に、男は淡々と「殺せ」と命令した。
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