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12.結果と好転
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「――!?」
「受け身」
驚く体を咎め、口を開けさせる。唇をピッタリ合わせてから舌を絡ませ合う。
約一分間、続けてから唇を離した。
「……今のは、本当に必要だったのか?」
「必要だって。でもおかげで確信した。原因と処置は契約後に教えてあげる」
口を合わせたのは男の体内に巡る力を俺側へ流して、実際に感じたかったからだ。傷口を吸うことでも良かったが、血を飲むよりキスをする方がマシだと思った結果である。
「契約はする。どうしたら良い?」
「どうもしなくて良いよ。その契約は俺が確信したことでもう結ばれたから。じゃあ今から処置するね」
俺は引き出しからオブラートを二枚取り出し、それぞれに複数の構築式を書き上げる。
「口開いて」
素直に開いたそこへ、舌と上顎にそれぞれ貼り付けてる。男の体が引きそうになるため両手で後頭部を固定する。
キスを続けていれば自分の体内で力を感じ始める。慣れ親しんだその感覚は、俺の確信が実を結んだことを、俺の憂いを解消したことを証明している。
「はい、お疲れ。とりあえずこんなもんかな。どうだ?」
「……体が、軽くなった。初めてだ」
「良かった。俺の仮説は正しかったな」
「何が原因で、どんな処置をしたんだ?」
「原因はお前の体に巡る力は創造の女神様と同じ神力だ」
「は?」
「創世神話は知っているよな?」
「知っているが」
この世界を作ったのは女神様と言われている。女神様は世界と人々を作り、自身の力を与えた。人の身では神の力は強大過ぎてしまうことから、女神様は適応出来るよう神の力を何倍にも希釈した。それが魔力と呼ばれている。
「要は、お前の力は俺たちが持つ魔力の原液みたいなもんだな。神に宿る力が人の身で耐えられるわけがない。今まで生きてこれたのが奇跡だ」
「神の力だと? これが?」
「ちなみに、魔力と神力じゃ構築式自体が変わる。魔力は神語から派生した古代語を使うけど、神力は神語が必要になる。当たり前だけどその神語を知る人間はいない」
「なら、この力は何にも使えないってことか?」
「そのままならね」
男と繋がり俺の感覚下に神力を置いて調整すれば糸口はまだある。
神力を俺に流し、神力を自分の力として使う。これはセンスがなければ誰にも出来ない。
「自分のものにしたって、どうやって? 神力は神語が必要で、それは誰にも分からないんだろう?」
「魔法使いは本来、思考そのものが構築式なんだよ。思考したことに力が反応して、それが発動される。思考には神語も古代語も関係ない」
構築式を描いて使うなら神語が必要だが、思考による構築式なら言語は必要ない。
「理解が追いつかない。式もなく魔法を行使する魔法使いなんて知らない」
「俺も俺以外知らない」
俺も普段は式を書くけど、それはある種のパフォーマンスだ。陛下からあまり自分の実力を見せないよう言われているから。俺が思考のみで魔法を行使出来ることは陛下と魔塔主、師匠だけが知っている。
「処置としては、まず、お前の神力を俺が取り込んで、体内で魔力に変換してからオブラートに描いた構築式を発動させるためにお前に吹き込んだんだよ」
神力は魔力よりも密度が高いため、たった数分取り込んだだけでも十分な量にはなった。
おかげである程度魔法を行使出来る。
思った通りの結果だ。
「あのオブラートの構築式は何の効果なんだ?」
「一つは擬似的に魔力に変換させる式で、もう一つはその式をお前に定着させる式。でも完璧ではないから定期的に変換させる式を施さないといけないし、神力を外に吐き出す必要もある。言っておくけど、その力を魔法の基にするには複雑過ぎるし他の魔法使いには難しいと思うよ。お前に施した式は全部緻密で複雑なんだ」
男は「そうか」と頷き、ここで初めてローブを外した。現れた顔は体格同様精悍な騎士を思わせるようなそれだ。黒髪に珍しい真っ黒な瞳は死に掛けだった男に似合っている。全体的に整った顔立ちをしているが、人を寄せ付けない雰囲気が感じられる。きっとセルジュのように女性陣から騒がれることはないだろう。
「俺の名前はテオ。大帝国から来たが、約束通りあなたのそばで生きさせてもらう」
「テオね。俺はルネ。衣食住と仕事は俺が提供するよ」
男――テオはジッと俺を見つめる。二重だが切れ長の目をしているからか、真顔で見つめられると睨まれているように感じるなと思った。
「受け身」
驚く体を咎め、口を開けさせる。唇をピッタリ合わせてから舌を絡ませ合う。
約一分間、続けてから唇を離した。
「……今のは、本当に必要だったのか?」
「必要だって。でもおかげで確信した。原因と処置は契約後に教えてあげる」
口を合わせたのは男の体内に巡る力を俺側へ流して、実際に感じたかったからだ。傷口を吸うことでも良かったが、血を飲むよりキスをする方がマシだと思った結果である。
「契約はする。どうしたら良い?」
「どうもしなくて良いよ。その契約は俺が確信したことでもう結ばれたから。じゃあ今から処置するね」
俺は引き出しからオブラートを二枚取り出し、それぞれに複数の構築式を書き上げる。
「口開いて」
素直に開いたそこへ、舌と上顎にそれぞれ貼り付けてる。男の体が引きそうになるため両手で後頭部を固定する。
キスを続けていれば自分の体内で力を感じ始める。慣れ親しんだその感覚は、俺の確信が実を結んだことを、俺の憂いを解消したことを証明している。
「はい、お疲れ。とりあえずこんなもんかな。どうだ?」
「……体が、軽くなった。初めてだ」
「良かった。俺の仮説は正しかったな」
「何が原因で、どんな処置をしたんだ?」
「原因はお前の体に巡る力は創造の女神様と同じ神力だ」
「は?」
「創世神話は知っているよな?」
「知っているが」
この世界を作ったのは女神様と言われている。女神様は世界と人々を作り、自身の力を与えた。人の身では神の力は強大過ぎてしまうことから、女神様は適応出来るよう神の力を何倍にも希釈した。それが魔力と呼ばれている。
「要は、お前の力は俺たちが持つ魔力の原液みたいなもんだな。神に宿る力が人の身で耐えられるわけがない。今まで生きてこれたのが奇跡だ」
「神の力だと? これが?」
「ちなみに、魔力と神力じゃ構築式自体が変わる。魔力は神語から派生した古代語を使うけど、神力は神語が必要になる。当たり前だけどその神語を知る人間はいない」
「なら、この力は何にも使えないってことか?」
「そのままならね」
男と繋がり俺の感覚下に神力を置いて調整すれば糸口はまだある。
神力を俺に流し、神力を自分の力として使う。これはセンスがなければ誰にも出来ない。
「自分のものにしたって、どうやって? 神力は神語が必要で、それは誰にも分からないんだろう?」
「魔法使いは本来、思考そのものが構築式なんだよ。思考したことに力が反応して、それが発動される。思考には神語も古代語も関係ない」
構築式を描いて使うなら神語が必要だが、思考による構築式なら言語は必要ない。
「理解が追いつかない。式もなく魔法を行使する魔法使いなんて知らない」
「俺も俺以外知らない」
俺も普段は式を書くけど、それはある種のパフォーマンスだ。陛下からあまり自分の実力を見せないよう言われているから。俺が思考のみで魔法を行使出来ることは陛下と魔塔主、師匠だけが知っている。
「処置としては、まず、お前の神力を俺が取り込んで、体内で魔力に変換してからオブラートに描いた構築式を発動させるためにお前に吹き込んだんだよ」
神力は魔力よりも密度が高いため、たった数分取り込んだだけでも十分な量にはなった。
おかげである程度魔法を行使出来る。
思った通りの結果だ。
「あのオブラートの構築式は何の効果なんだ?」
「一つは擬似的に魔力に変換させる式で、もう一つはその式をお前に定着させる式。でも完璧ではないから定期的に変換させる式を施さないといけないし、神力を外に吐き出す必要もある。言っておくけど、その力を魔法の基にするには複雑過ぎるし他の魔法使いには難しいと思うよ。お前に施した式は全部緻密で複雑なんだ」
男は「そうか」と頷き、ここで初めてローブを外した。現れた顔は体格同様精悍な騎士を思わせるようなそれだ。黒髪に珍しい真っ黒な瞳は死に掛けだった男に似合っている。全体的に整った顔立ちをしているが、人を寄せ付けない雰囲気が感じられる。きっとセルジュのように女性陣から騒がれることはないだろう。
「俺の名前はテオ。大帝国から来たが、約束通りあなたのそばで生きさせてもらう」
「テオね。俺はルネ。衣食住と仕事は俺が提供するよ」
男――テオはジッと俺を見つめる。二重だが切れ長の目をしているからか、真顔で見つめられると睨まれているように感じるなと思った。
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