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11.交渉成立
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「テキトーだなお前」
「分からないことを真剣に話しても意味ないよ」
「なるほど」
何に納得したか分からないが本題に戻ろう。
「魔力じゃないって何で分かったの? お前が試した構築式って覚えてる?」
男はローブの中から羊皮紙で出来た封筒を取り出した。中身は封筒よりも何十倍も厚い紙の束だ。
受け取ってから、俺はその全てに目を通す。
「すごい色々試したんだ」
「まあな」
様々な構築式が書かれていた。初めて見るものもあったが、理論は全て正しく理解出来る。やはり男の協力者である魔法使いはセンスが良い。
俺は紙の束を返し、腕を組んで男を見つめた。
「確かに、その結果上ならお前の力は魔力じゃないな。かと言って呪いでもない」
「呪いじゃないという根拠は?」
「呪いは魔法の一種だから。呪いならお前自身に構築式がなきゃおかしい。でもそれはなかったって二十五ページ目で検証されている」
二十五ページには構築式を判定した結果が記されていた。
「この短時間で本当に全部読んだのか?」
「読んだよ。とりあえず試したいことあるから良い?」
「あぁ」
俺は早速羊皮紙に構築式を書き、男に渡す。
「その中心に血を垂らして」
「これは何を試すんだ?」
「魔力との親和性。その結果によって試す方向性を決めようかなって」
親和性はまだ試されていなかった。親和性の高低によって、その力の種類を推測していくしかない。
「親和性? そんなこと、調べようなんて提案もなかったが」
「まぁそうだろうね。魔法使いにとって魔力は当たり前過ぎるから。わざわざ親和性なんて考える必要はない。でも今回は魔力でないなら試しておくべきかな」
「……何で、俺を助けてくれるんだ? 大魔法使い様は陛下専属だと散々あの男は言っていたのに」
「普段はそうだよ。でも命に関わる話だし、陛下も怒んないよ」
嘘と本音を混ぜて答える。
「陛下とは近しいのか?」
「うん。俺を育てたのは陛下だって言っても過言じゃないし。俺が言い張れば大抵のことは許してくれるよ」
「へぇ。陛下は名君ではあるが、取捨選択がきっちりしていて時に非情さもあると聞くのに」
「そういうところもあるね」
男はナイフで人差し指を切ってから、中心に一滴血を垂らす。それは書かれた式に自然と広がっていき、不可思議な色へと変化する。
「なるほど」
「これだけで何か分かったのか?」
ある程度は分かった。あとは確信が欲しい。
俺はジッと、男を見つめる。顔はローブに隠されているため見えないが。
「なんだ?」
「あとは確信するだけなんだけど、ここで契約を交わすか」
「契約の話が出たってことは、本当に原因とその解決策が分かったってことだな?」
頷けば、男からの質問攻めが始まった。
「その原因と解決策は他の魔法使いでも見付けられる可能性はあるか?」
「知らない。全世界の魔法使いを知っているわけじゃないし」
「その解決策を売ってもらうことは出来るか?」
「それって自国の魔法使いに行使してもらうってこと?」
「やっぱり俺が外国から来たって分かっていたのか」
それは男との会話から誰でも察せられる。そもそも多くの魔法使いに試してもらったと言った時点で俺が知らないなんてあり得ない。
「そっちの魔法使いのレベルがどうか分からないけど、この国ではまず俺以外には無理だよ」
「ここの魔法使いの水準は他国に比べても高いのに?」
説明が面倒なので頷くだけにする。
「そうか。ちなみにその解決策は一回で終われるのか? それとも継続が必要なのか、一人で出来るのか」
ここで答えを間違えてはいけない。
俺はずいっと前屈みになる。
「俺から事前に言えることは、俺と契約をしてその力による余命と悪影響を克服するか、今までの俺との会話を自国に持ち帰って試行錯誤するか、お前に選ばせるのはこの二つだ」
人差し指と中指を立てて見せる。これ以外の選択を提示するつもりはない。
「ちなみに俺と契約したからと言っても、お前の自由を奪うつもりはない。奴隷みたいに扱うわけでもないし。ただ、こっちに住んでもらう必要はあるけど」
「ということは、大魔法使い様がそばにいないとダメなのか」
男は考え込む素振りを見せはしたが、すぐに「分かった」と答えた。
「契約と言っても簡単なもんだよ。その解決策、処置って言うけど、それに関して俺の言葉が絶対、それだけ。拒否も抵抗も許さない。代わりに他の人たちと変わらない日常を約束する。だけど、もしも契約を違えた場合は自分にとって何よりも大切なものを支払うことにする」
それは人により変わる。命だったり財産だったり家族だったりプライドだったり。俺の場合は多分魔力だ。
「分かった。俺から処置を求める時も拒否はしないと約束してくれないか?」
男の意図は理解出来る。自分の命を握ることになる俺の気紛れになってしまっては困るだろう。そのくらいなら受け入れても問題はない。俺としてはいつ処置をしても良い。
「じゃあ契約はそれで決まりな。まあそれも俺が確信した後に効力が発生するっことで」
俺は男の目の前に立ち、ローブ越しに見下ろす。
「今から俺がすることに受け身でいて。必要なことだから」
「分かった」
そして、俺は躊躇いなく男の両頬を包み、唇を重ねた。
「分からないことを真剣に話しても意味ないよ」
「なるほど」
何に納得したか分からないが本題に戻ろう。
「魔力じゃないって何で分かったの? お前が試した構築式って覚えてる?」
男はローブの中から羊皮紙で出来た封筒を取り出した。中身は封筒よりも何十倍も厚い紙の束だ。
受け取ってから、俺はその全てに目を通す。
「すごい色々試したんだ」
「まあな」
様々な構築式が書かれていた。初めて見るものもあったが、理論は全て正しく理解出来る。やはり男の協力者である魔法使いはセンスが良い。
俺は紙の束を返し、腕を組んで男を見つめた。
「確かに、その結果上ならお前の力は魔力じゃないな。かと言って呪いでもない」
「呪いじゃないという根拠は?」
「呪いは魔法の一種だから。呪いならお前自身に構築式がなきゃおかしい。でもそれはなかったって二十五ページ目で検証されている」
二十五ページには構築式を判定した結果が記されていた。
「この短時間で本当に全部読んだのか?」
「読んだよ。とりあえず試したいことあるから良い?」
「あぁ」
俺は早速羊皮紙に構築式を書き、男に渡す。
「その中心に血を垂らして」
「これは何を試すんだ?」
「魔力との親和性。その結果によって試す方向性を決めようかなって」
親和性はまだ試されていなかった。親和性の高低によって、その力の種類を推測していくしかない。
「親和性? そんなこと、調べようなんて提案もなかったが」
「まぁそうだろうね。魔法使いにとって魔力は当たり前過ぎるから。わざわざ親和性なんて考える必要はない。でも今回は魔力でないなら試しておくべきかな」
「……何で、俺を助けてくれるんだ? 大魔法使い様は陛下専属だと散々あの男は言っていたのに」
「普段はそうだよ。でも命に関わる話だし、陛下も怒んないよ」
嘘と本音を混ぜて答える。
「陛下とは近しいのか?」
「うん。俺を育てたのは陛下だって言っても過言じゃないし。俺が言い張れば大抵のことは許してくれるよ」
「へぇ。陛下は名君ではあるが、取捨選択がきっちりしていて時に非情さもあると聞くのに」
「そういうところもあるね」
男はナイフで人差し指を切ってから、中心に一滴血を垂らす。それは書かれた式に自然と広がっていき、不可思議な色へと変化する。
「なるほど」
「これだけで何か分かったのか?」
ある程度は分かった。あとは確信が欲しい。
俺はジッと、男を見つめる。顔はローブに隠されているため見えないが。
「なんだ?」
「あとは確信するだけなんだけど、ここで契約を交わすか」
「契約の話が出たってことは、本当に原因とその解決策が分かったってことだな?」
頷けば、男からの質問攻めが始まった。
「その原因と解決策は他の魔法使いでも見付けられる可能性はあるか?」
「知らない。全世界の魔法使いを知っているわけじゃないし」
「その解決策を売ってもらうことは出来るか?」
「それって自国の魔法使いに行使してもらうってこと?」
「やっぱり俺が外国から来たって分かっていたのか」
それは男との会話から誰でも察せられる。そもそも多くの魔法使いに試してもらったと言った時点で俺が知らないなんてあり得ない。
「そっちの魔法使いのレベルがどうか分からないけど、この国ではまず俺以外には無理だよ」
「ここの魔法使いの水準は他国に比べても高いのに?」
説明が面倒なので頷くだけにする。
「そうか。ちなみにその解決策は一回で終われるのか? それとも継続が必要なのか、一人で出来るのか」
ここで答えを間違えてはいけない。
俺はずいっと前屈みになる。
「俺から事前に言えることは、俺と契約をしてその力による余命と悪影響を克服するか、今までの俺との会話を自国に持ち帰って試行錯誤するか、お前に選ばせるのはこの二つだ」
人差し指と中指を立てて見せる。これ以外の選択を提示するつもりはない。
「ちなみに俺と契約したからと言っても、お前の自由を奪うつもりはない。奴隷みたいに扱うわけでもないし。ただ、こっちに住んでもらう必要はあるけど」
「ということは、大魔法使い様がそばにいないとダメなのか」
男は考え込む素振りを見せはしたが、すぐに「分かった」と答えた。
「契約と言っても簡単なもんだよ。その解決策、処置って言うけど、それに関して俺の言葉が絶対、それだけ。拒否も抵抗も許さない。代わりに他の人たちと変わらない日常を約束する。だけど、もしも契約を違えた場合は自分にとって何よりも大切なものを支払うことにする」
それは人により変わる。命だったり財産だったり家族だったりプライドだったり。俺の場合は多分魔力だ。
「分かった。俺から処置を求める時も拒否はしないと約束してくれないか?」
男の意図は理解出来る。自分の命を握ることになる俺の気紛れになってしまっては困るだろう。そのくらいなら受け入れても問題はない。俺としてはいつ処置をしても良い。
「じゃあ契約はそれで決まりな。まあそれも俺が確信した後に効力が発生するっことで」
俺は男の目の前に立ち、ローブ越しに見下ろす。
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「分かった」
そして、俺は躊躇いなく男の両頬を包み、唇を重ねた。
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