我が身可愛さに行動したら取り返しのつかない結果になった。

かんだ

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15.移住の準備

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 商業区にある一つのブティックに入れば、すぐに店員が出迎えてくれる。
「こいつの服を一式揃えてくれる?」
「かしこまりました。では採寸からいたしますね。ご要望はございますか?」
「なるべく動きやすくて、俺の隣にいても違和感がない感じで」
 店員と共に奥へと向かい、付き添いである俺はソファーへと座りその様子を眺めた。
 改めて見てもテオは良い体付きをしている。王室騎士団の団長と良い勝負かもしれない。
 鍛えるつもりもないが、男なら一度くらいあのような屈強な体に憧れるだろう。
「ルネ様も何かご覧になりますか?」
「俺はいいよ。まだ着ていない服がたくさんあるし」
「陛下からの贈り物がたくさんですものね。この前も新たにオーダーされていましたよ」
 またか。陛下は暇さえあれば俺への服を作りたがる。「私のストレス発散の一つだから」という理由からだ。俺じゃなくて自分の子どもたちに作れば良いと進言しても、子どもたち本人が「自分の趣味で作りたいから」と断るし、陛下が私費でプレゼントを贈っても色々な意味で勘繰られない相手は俺しかいない。そのため、陛下のストレス発散ショッピングの贈り先は自分になるのだ。
「ルネ様、選んだ服は魔塔宛てで良いですか?」
「うん。セルジュ宛にしておいて」
「お連れ様、すごくお似合いでしたよ」
「どうも」
 服が買えたら次は日用品だ。魔塔で使用する物は日用品含め職員が一括で購入し引き落としてくれるが、この国の銀行口座を持っていないとその方法は使えない。
「そういえば、家には連絡入れた?」
「はい。お借りした通信具で問題なく出来ました」
「何か言ってた?」
「俺の意思を尊重してくれるとのことでした」
「それなら良かったけど、結構簡単なんだな」
 テオが向こうでどのような立場だったか分からないが、簡単に移住が認められるならそう難しい立場ではないのだろう。立ち居振る舞いや所作が平民とは違ったので少しドキドキしていたから安心した。
「そういえば、処置から一日経ったけどどう?」
「すごく良いですよ。不調が嘘のようです。ぐっすり眠れたのなんて初めてですから」
 表情からも嘘ではないと分かる。
「なら後はどのくらい持つかかな。最低でも一週間は保って欲しいけど」
 キスをするくらいどうとも思わないが、あまりにも頻繁だと面倒だし、テオが里帰りする時に俺も着いて行く必要が出てくる。出来れば一月は保って欲しいが、それはさすがに高望み過ぎか。
「そうですね。一応確認ですが、俺から処置を求めても絶対に受け入れてくれるんですよね?」
「うん。ただやり方があれだから、人目がないの確認出来たらね。命に関わりそうなら別だけど」
「安心しました」
 その後もテオを連れ街を案内する。昼時には近くのカフェに寄り、セルジュへの土産を買った。
 テオはこの国自体初めてなのか、物珍しいものを見るように店や街並みを楽しんだ。
「ルネ様、俺も何か仕事をもらえるんですか?」
「そうだな~。どのくらい保つか確認出来たら合うところを探そうか」
「仕事の面倒もしてくれるなんて。アフターサービスが充実していますね」
 俺としては魔力問題を解決出来るまで離せないからな。出来る範囲なら何でもする。
「そういえば、陛下には俺のことを伝えたんですか? 素性も怪しい男が大切なルネ様のそばにいること」
「伝えてはないよ。でも陛下は俺が馬鹿なことしなければ基本放置だから大丈夫。俺を監視してることもないし」
 その馬鹿なことに、今の現状は充分当てはまるけど。俺が言わなければバレることはないので気にしなくて良い。
「なら良かった。もし陛下に呼び出されでもしたら怖すぎますから」
「陛下はそんな暇じゃないよ。とりあえず今日の買い出しは充分か? そろそろ帰る?」
「そうですね。俺はここまで一緒に来た者たちに会って来ます」
 テオの言葉に思わず立ち止まれば、口角の上がった表情で見下ろされる。どんな感情なのか分からない。
「それ、秘密じゃなかったんだ」
「やっぱり、気付いていたんですね」
 テオが一人で来ていないことは気付いていた。初めて魔塔の外で会った時には気付かなかったが、テオの魔力を取り込んだ時に周囲を探査したら、こちらを窺っている複数の気配が分かった。今日外へ出て、今も、その気配は付き纏っている。特に危険性は感じなかったのでそのままにしている。
「テオの仲間?」
「はい。誰かに危害を加えることはありませんので、安心してください」
「うん。会って来ても良いよ。常に俺のそばにいる必要もないし」
「俺が仲間と逃げるとか、魔塔を陥れる算段をつけるとか、そういう心配はしないんですか?」
 テオは俺にどんな反応を期待しているのか。意図も分からないので本心を答えるしかない。
「しないよ。それが現実になっても問題ないもん」
「なるほど。確かにルネ様に勝てる人間はいなさそうですよね」
 納得出来たのか、テオは一礼してから目的の場所へと向かった。
 その背を見送ってから、用事がない俺は魔塔へと帰ることにする。
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