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16.登城要請
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テオがここへ来てから五日が経った。俺が連れて来たということで魔塔での混乱もなく、今のところ順調だった。テオも一日一回は仲間と会っているようだが、気にすることもない。
ただ、神力の研究はなかなか上手くいかない。魔力と神力では使い勝手が違い、消費量が多いということを初めて知った。使えばそれだけ減る、それは普通のことだが、俺の場合は無尽蔵に魔力が湧き出ていたから減るという感覚を経験したことがなかった。使えば減ってしまうため、使い切らないように慎重にならざるを得ないし、テオやその仲間たちの警戒をやめられないためそちらに割く魔力も調整しなければならない。故に、研究も自分の魔力紛失の原因解明も上手くいかない。
叶うなら好きなだけテオから取り込みたいが、下手に動いて俺の真意を悟られたくもない。……なんて、頭を悩ます中、セルジュから「登城しろとの連絡がありましたよ」と言われ余計悩みのタネが増えてしまった。
「登城……今?」
「正確には夕方ですが。会議と晩餐会に参加するようにとのことです。今から一時間後にお支度を始めますね」
会議に参加させられることは多いが、たまにその場で魔力を使うことがある。……と、考えると今の魔力量では不安。
俺はセルジュに「分かった」と答えてから、テオを訪ねるしかなかった。
俺が研究室にいる間、テオは基本自室にいる。処置がどのくらい保つか分かるまであまりそばを離れないよう伝えてあるからだ。
「テオ、いるか?」
「どうしました?」
ノック後、テオが現れる。シャツにスラックスというラフな格好だ。向こう側に多くの羊皮紙が重なっている。何か調べ物でもしていたのだろうか。
中に入れてもらい、勝手にソファーに座る。
「夕方から登城することになったんだ。そのままご飯も食べて来るし、もしかしたら泊まってくるかも」
「王宮にですか? 本当に陛下とは近しい間柄なんですね」
「まあ、そうかな」
晩餐もきっと陛下と二人ではなく、いつも通り王子二人と王女も一緒だろう。家族の晩餐に参加して良いのかという考えはもうない。
「帰りが明日になるかもしれないから、処置をしておこうと思って」
……頼む。何も言わずに頷いてくれ。
俺の願いが伝わったのか、テオは特に突っ込むこともなく「ありがとうございます」と微笑んだ。
「俺はどうすれば良いですか? またオブラートが必要ですか?」
「いや、大丈夫。もうあの構築式はテオに浸透しているから。口開けて大人しくしててくれたら良いよ」
俺はテオの前に立つ。テオがゆっくりと瞼を閉じた。
近くでしっかり見るのは初めてだ。睫毛が長いんだなとどうでも良いことを思う。
「ルネ様?」
「あぁごめん。綺麗な顔してんだなーって思ってた」
そう素直に謝れば、テオが瞼を開ける。真っ黒な瞳に自分だけが映った。
「ルネ様は、前から思っていたけどすごく素直ですね」
ただ、神力の研究はなかなか上手くいかない。魔力と神力では使い勝手が違い、消費量が多いということを初めて知った。使えばそれだけ減る、それは普通のことだが、俺の場合は無尽蔵に魔力が湧き出ていたから減るという感覚を経験したことがなかった。使えば減ってしまうため、使い切らないように慎重にならざるを得ないし、テオやその仲間たちの警戒をやめられないためそちらに割く魔力も調整しなければならない。故に、研究も自分の魔力紛失の原因解明も上手くいかない。
叶うなら好きなだけテオから取り込みたいが、下手に動いて俺の真意を悟られたくもない。……なんて、頭を悩ます中、セルジュから「登城しろとの連絡がありましたよ」と言われ余計悩みのタネが増えてしまった。
「登城……今?」
「正確には夕方ですが。会議と晩餐会に参加するようにとのことです。今から一時間後にお支度を始めますね」
会議に参加させられることは多いが、たまにその場で魔力を使うことがある。……と、考えると今の魔力量では不安。
俺はセルジュに「分かった」と答えてから、テオを訪ねるしかなかった。
俺が研究室にいる間、テオは基本自室にいる。処置がどのくらい保つか分かるまであまりそばを離れないよう伝えてあるからだ。
「テオ、いるか?」
「どうしました?」
ノック後、テオが現れる。シャツにスラックスというラフな格好だ。向こう側に多くの羊皮紙が重なっている。何か調べ物でもしていたのだろうか。
中に入れてもらい、勝手にソファーに座る。
「夕方から登城することになったんだ。そのままご飯も食べて来るし、もしかしたら泊まってくるかも」
「王宮にですか? 本当に陛下とは近しい間柄なんですね」
「まあ、そうかな」
晩餐もきっと陛下と二人ではなく、いつも通り王子二人と王女も一緒だろう。家族の晩餐に参加して良いのかという考えはもうない。
「帰りが明日になるかもしれないから、処置をしておこうと思って」
……頼む。何も言わずに頷いてくれ。
俺の願いが伝わったのか、テオは特に突っ込むこともなく「ありがとうございます」と微笑んだ。
「俺はどうすれば良いですか? またオブラートが必要ですか?」
「いや、大丈夫。もうあの構築式はテオに浸透しているから。口開けて大人しくしててくれたら良いよ」
俺はテオの前に立つ。テオがゆっくりと瞼を閉じた。
近くでしっかり見るのは初めてだ。睫毛が長いんだなとどうでも良いことを思う。
「ルネ様?」
「あぁごめん。綺麗な顔してんだなーって思ってた」
そう素直に謝れば、テオが瞼を開ける。真っ黒な瞳に自分だけが映った。
「ルネ様は、前から思っていたけどすごく素直ですね」
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