我が身可愛さに行動したら取り返しのつかない結果になった。

かんだ

文字の大きさ
26 / 28

25.敗因

しおりを挟む
 翌朝、心底目覚めたくなかったが無理やり起こされた。起きているだけで辛いことは初めてで不機嫌を隠せない。人をこれほど恨めしいと思ったのは初めてだ。今なら視線だけで呪えそうだ。
 そんな俺とは対照的に、ベッドの縁に腰掛けるテオは上機嫌だった。
「朝ご飯は食べられそうですか?」
「いらない」
「ワガママ言ってると成長しませんよ」
「もうし終わったよ」
 視線を外して素っ気なく返していれば頬を鷲掴まれて視線を合わせられる。真っ黒な瞳に自分の姿が映るほどの近さだった。
「ルネ様、体が辛いなら回復魔法を使っては?」
「……」
「今なら出来るでしょう? 使わない理由がないのでは?」
 にっこりと笑うテオに、俺は眉間に皺を寄せてその手を振り払う。構築式を思い浮かべて疲労や痛み、気力諸々を回復させる。
「中にたくさん吐き出したので綺麗にしようと思ったんですが、掻き出せませんでした。何も出てこなくて。お腹は大丈夫ですか?」
「……大丈夫」
 恐らく排泄物を燃焼させる構築式が発動したのだろう。
「お前、何がしたいの? 何であんなことしたんだよ」
「ルネ様が自分以外に触れさせていることが不愉快で我慢出来なかったんです。腹が立って堪らず、とにかくルネ様に八つ当たりがしたかったし、男娼の上書きもしたかったし」
 八つ当たり。理不尽な暴挙だ。許せない。上書きの意味だって分からない。
「八つ当たりであんな酷いことが出来るのか」
「はい。どうやら俺は激情型のようです。今まで生きることしか考えていなかったので知りませんでした」
「ふざけんなよ。最低だ」
「落ち着いてください。俺たちは話し合わなければでしょう?」
 テオが子どもをあやすような柔らかい声を出す。話し合いは最重要事項だが、元凶に言われると腹立たしい。だが、ここで意地を張り続けても話は進まない。
 俺は息を吐いて何とか思考を切り替える。
「話し合いな。分かった。お前はどこまで推測しているの?」
 テオの推測は正しい。どこまでそれが出来ているか知りたい。自分的には魔力が使えないという事実は上手く隠せていたはずだ。魔塔の人間も気付いていない。
「魔力が使えないということを誰にも言うつもりはない、魔力のために俺を手放すことはない、と推測してますが、どうですか?」
「……」
「魔力が使えるのに回復魔法しか使わない時点で、ルネ様には俺をどうこうする選択肢はないって言っているようなものですし」
 俺はこめかみを抑えながら顔を覆う。
 そのとおりだ。今ならテオを魔法で拘束することも痛め付けることも出来る。だが、それをした後は? 俺にテオが必要なことは覆せない事実だ。テオを失うわけにはいかない。
「……なんで気付いたんだよ。上手く隠してたのに」
「ルネ様の敗因は、脅威のない世界でしか生きてこなかったことですね」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

異世界転移された傾国顔が、アラ還宰相の幼妻になって溺愛されるまでの話

ふき
BL
異世界に転移したカナトは、成り行きでアラ還の宰相ヴァルターと結婚することになる。 戸惑いながら迎えた初夜。衝動のキス、触れあう体温――そして翌朝から距離が遠ざかった。 「じゃあ、なんでキスなんてしたんだよ」 これは、若さを理由に逃げようとするアラ還宰相を、青年が逃がさない話。 ヴァルター×カナト ※サブCPで一部、近親関係を想起させる描写があります。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの少年二人は、15歳になり神の祝福でスキルを得た事で道をたがえる。彼らはやがて青年となり、片方は魔王討伐に旅立つ勇者として華々しい活躍をし、もう片方はただ彼の帰還を待つ相変わらずスラム暮らしの存在となる。 これは何も持たない青年がただ勇者の帰りを待つ日常を描いた作品です。 無自覚両片想いの勇者×親友。 読了後、もう一度だけ読み直して頂けると何か見える世界が変わるかもしれません。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...