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アカミミガメ

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代償

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仕事帰りに夜空と二人で「お疲れ様会」と称して酒を飲んだ。
お互いアルコールのせいで饒舌になり、どうでもいい事で笑う。ちょっと飲み過ぎた。

帰宅したらもう動きたくなくてソファに倒れ込んだ。

「ほらおじいちゃん、左足上げられる?」
「むり。」

夜空がご丁寧に俺をパジャマに着替えさせてくれた。
ベッドに潜り込むと、一瞬で眠りに落ちた。







朝。
恒例の体勢で目が覚め、腕の中から抜け出し、ベッドの端に腰掛けた。前回ベッドに引きずり込まれた覚えがある。

ここで声をかけるからあんな目に遭ったんだな。

離れたところで声をかけようとして、立ち上がる前にベッドに引き戻された。

まるっきりデジャブだ。

夜空の胸板に顔を押し付けた状態でモゴモゴ文句を言うがなかなか離してもらえない。

しばらくして目が覚めた夜空に謝られた。
これ毎朝のルーティン?!









探し物や不貞行為の調査をメインに、日々の業務をこなす。
代わり映えのしない毎日を送りつつ、個人的に一人の人物の不貞行為の証拠集めを進めていた。

打ち上げの飲み屋で夜空の話を聞くと、夜空の母親も夫の不倫に苦しめられた女性の一人だと分かった。

だよね。
ある程度予想はしていた。
夜空の不貞行為への嫌悪感、半端ないもん。

離婚調停では思うように進展せず、結局、夜空の大学卒業まで婚姻関係が続いた。
その後、やっと離婚した夜空の母親はすでに心を病み、今は実家に身を寄せて療養中だという。

子どもが成人してしまえば、養育費の支払いも必要ない。
心を病んでいた夜空の母親は、ろくに証拠集めもできず、結果として、慰謝料なしで離婚する流れになった。

さらには、母親からの請求がないのをいいことに、父親は財産分与すらまともにしていないようだ。

夜空は父親と同じグループ会社への就職が決まっていたが、父親と顔を合わせるのが嫌で内定を断っていた。
卒業して半年ほど何をする気にもなれず、家にこもっていたが、たまたま街で俺が不倫の証拠集めをしているのを見かけ、この事務所の求人に応募したのだという。

夜空の両親が離婚してまだ2年半。慰謝料申請は、離婚後3年以内であれば可能だ。
結局、事務所総出で、お隣の弁護士にも協力してもらい、証拠集めと慰謝料申請の準備は滞りなく済んだ。





そして今日。

事務所の応接室には、夜空の父親、弁護士、所長、俺の4人が集まった。

「今更ですか?」

夜空によく似た年配の男性が、不満そうに漏らす。
手元の計算表には、なかなかの額が記載されていた。

本人は、自分も弁護士を雇って争えば、最悪裁判沙汰にしてひっくり返せると思っているようだ。だがそれは、残念ながら無理だ。
何しろ10年以上前の証拠写真から離婚直前のものまで相当数の証拠書類が揃っている。

財産分与も正当な請求額。

探偵事務所舐めんな、だ。

数週間後、『夜空の父親から、慰謝料を支払うことへの同意と減額申請があった』と弁護士から聞かされた。





朝、出勤すると、品のよい女性が事務所に来ていた。動きやすい軽装でショルダーバッグを肩にかけ、左手にはコロのついた小型のスーツケース。

依頼人には見えず、足が止まる。

「母さん。」

夜空が驚いて駆け寄った。

「夜空、元気だった?」

まさかの母親だった。

事務所の応接室に案内して、話を聞く。
これから、国内旅行に出かけるという。

「パスポートがないから、まだ国内旅行しか無理だけど、しばらくのんびり過ごすことにしたの。」

慰謝料の支払いも、財産分与も無事に済んだと教えてもらった。
夜空が何度も俺の顔を見る。

事務所の職員全員に、何度も頭を下げ、お礼の言葉を述べる母親を見送ったあと、夜空が俺に質問した。

「いつから?どうやって?」
「あの打ち上げのあとだよ。事務所総出。」
「旅行行くって。母さん、温泉浸かって、美味しいもの食べて、景色のいいところ見て回るって。」
「よかったな。」

夜空が俺にぎゅっと抱きついて、胸に顔を埋めた。

待って!ここ職場!


事務所にいる連中が全員立ち上がり、焦る俺としがみつく夜空に向かって拍手をした。

所長と事務の2人は、ハンカチで目を押さえていた。





いつものように、仕事を終わらせて家に帰る。
夕飯は適当に買ってきた惣菜をつまんだ。
俺が風呂に入っている間に、夜空は家事を全て終わらせていた。

速攻で風呂から上がった夜空が俺のベッドに入ってくる。俺は左半分のスペースを開けて待っていた自分に気がついて愕然とした。添い寝に違和感なくなってる?!習慣って恐ろしい!!

驚いている俺にお構いなしで夜空は俺を胸に引き寄せると、あっという間に眠りに落ちた。疲れていた俺も、その寝息につられて深い眠りに落ちた。







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