婚約破棄された軍人令嬢、なぜか第2王子に溺愛される

せんぽー

文字の大きさ
4 / 87
第1章 約束と再会編

第4話 似ているかも?

しおりを挟む
 目を覚ました私はゆっくりと上体を起こす。
 窓を見ると、外はまだ暗く、日は昇っていなかった。
 ベッドわきのナイトテーブルにある時計を見ると、短針の先はまだ5時を指している。

 さっきの夢は、まるで時間が戻ったような綺麗な夢だった。

 夢なんて最近はずっと見ていなかったのに、あんな鮮明な夢を見るなんて珍しい。
 しかもルイが出てくる夢。
 学園に来てから、夢で彼と会うことはなかったのに。

 夢の中のルイは本当に生きているみたいだった。
 あの夢は実際に起きたことだから、当たり前といえば当たり前なのだろうけど。

 …………もし彼が生きていたのなら、今頃は私よりも大きくなっていただろう。
 
 でも、彼はいない。
 この世にはいない。
 気づけば、涙を流していた。

 泣いたって意味はない。
 いくら願ったって、彼は生き返ってくれない。

 だから、彼の分まで戦う。
 魔王を倒して、母とルイの仇を取る。
 
 私は涙をぬぐい、ベッドから降りる。
 顔を洗って支度をし、寮を出て、食堂へと向かった。
 食堂ではまだ日が出ていないせいか生徒の姿は見当たらない。
 しかし、料理を用意してくれるシェフやご婦人方はすでにいらっしゃる。

 ご婦人方には「あなた、今日も早いわね」と言われたが、お互い様だと思う。
 彼女たちの方が朝は早いだろうに。

 そんなご婦人方に感謝しながら、朝食をいただき、食べ終わるとご婦人方にお礼をいって、教室に移動。
 そして、席を確保。

 私たちの教室は前の机から段々と上に上がっていく、階段状の教室となっている。
 前の席の方が黒板が見やすく、先生にも質問しやすい。
 だから、前に座りたい気持ちはある。

 しかし、前にいると、誹謗中傷はもちろん、背後から物を投げられることがある。
 初めて紙屑を投げられた時には手榴弾かと思って、思わず紙屑を投げ返してしまった。
 先生には驚かれたし、周りには笑われた。

 だから、そんなことがないよう、私はできる限り一番後ろの席に座る。
 悪口の声も聴きたくないので、入り口近くではなく、人があまり通らない左の窓際。

 私はその一番後ろの窓際の席につく。
 授業開始までかなり時間があるため、予習を始めた。
 
 これが朝の日課。
 用事があれば異なることもあるが、基本朝はこんな感じだ。
 来た時点での教室は誰もいないため、とても静か。
 昇ってきた日の光が教室に入り、小鳥のさえずりが聞こえてくる。
 この状態の教室が一番落ち着く。

 だが、1時間後ぐらいから徐々に人がやってきて、騒がしくなっていく。
 そして。

 「また、あの女教科書とにらめっこしてる」
 「しゃべる相手がいないのよ。かわいそー」

 そんな声が聞こえてくる。
 だから、私はできるだけ外の声をシャットアウト。
 教科書を読むことに集中する。
 あの子たちの声は雑音と思えばいい。
 予習に集中だ。

 ――――だけど、嫌な声がピタリと止む瞬間がある。

 ある瞬間から、嫌な声が突然死したかのように消える。
 誹謗する声が聞こえなくなったので、ちらりと後ろを見た。
 すると、教室の後ろのドア近くにいたのは金髪のあの王子。
 今日も友人のウィリアムさんと一緒のようだ。

 だが、私はすぐに教科書に目を戻す。

 周りを気にしている場合じゃない。
 嫌な声があろうがなかろうが関係ない。
 目標のところまで読めてないから、早く読まないと、予定が狂ってしまう。
 そうして、私は教科書を読み進めていると。

 「おはよう、エレシュキガルさん」

 隣からそんな声が聞こえてきた。
 顔を上げると、隣に立っていたのはアーサー王子。
 彼は優しい微笑みを浮かべていた。

 「おはようございます、殿下」
 「今日も隣いいかな? 先約とかいない?」
 「はい、構いません。誰も座る予定はないです」

 断る理由もないので、私は了承する。
 アーサー王子は「ありがとう」と言って、私の隣に座った。
 彼の右隣にはウィリアムさんもいた。

 …………うーん、不思議だ。
 他の席もあるのに、アーサー王子はわざわざ私の隣に座ろうとするだなんて。
 すると、アーサー王子はキョロキョロとあたりを見渡し。

 「今日は筆箱、盗まれていない?」

 と小さな声で聞いてきた。
 思いがけない質問に、私は一瞬驚いた。
 そんなことを聞いてきた人は誰一人としていなかったから。

 「はい、朝なので。この通り私の筆箱はあります」
 「そっか、よかった」

 王子は安心したように微笑む。
 まるで自分のことのように安堵していた。

 なぜ王子が私の筆箱の心配を……?

 もしや、学園内での盗みが気になったのだろうか。
 まぁ、確かに盗みは普通に犯罪になるから、王子が気になるのも当たり前か。
 
 私は教科書に目を戻す。

 が、隣から強烈な視線を感じた。
 一時気づかない振りをしていたが、私はしびれを切らし、彼に話しかけた。

 「殿下、何か用ですか?」
 「いや、エレシュキガルさんがとっても綺麗だからみとれちゃって」
 「…………」

 私が綺麗? 
 何かの冗談だろうか。

 兄様から「エレシュキガルは綺麗だね」と言われるが、それは兄様がとっても優しいから。
 実際に綺麗な人と比べれば、私は塵にしか見えないだろう。

 それに周囲の人たちが言うように、私は醜い。

 なのに、王子が私のことを『綺麗』だと言うのは、兄様と同じように彼が優しい人だからなのだろう。つまり、お世辞だ。
 
 私もアーサー王子を見る。

 彼の髪は絹のようにサラサラな金色の髪。
 宝石が埋め込まれているような水色の瞳。
 しゅっとした輪郭と高い鼻。

 彼の方が綺麗だった。美しかった。

 「殿下の方がお美しいですよ」

 そう返すと、アーサー王子はなぜかフリーズ。
 素直に思ったことを言っただけなのに、なぜ困った顔をするのだろう。
 もしや、失礼なことを言ってしまっただろうか。

 「……エレシュキガルさん、イケメンだね」
 「そうですか?」

 私は男じゃないし、かっこよくもないから、イケメンではないと思う。
 が、王子がイケメンというのならイケメンではあるのかもしれない。
 
 それにしても、こうして間近でみると、王子はルイと外見が似ている。
 金髪に水色の瞳の男性はたくさんいるだろうが、どこか似ているように感じた。
 
 だが、ルイは庶民の人間と言っていたし、彼はもう死んでいる。
 それに王子が戦場に行くはずもないから、ルイが王子と同一人物ということはありえない。

 でも、アーサー王子とルイはとても似ている。
 ルイが成長していれば、アーサー王子と瓜二つの人間になっていたのかもしれない。

 もしかして、ルイは王族の血を持ってて、王室を離脱した方のお子さんだったとか?
 それならあり得る話だ。

 「エレシュキガルさんは今日も予習しているの?」
 「はい」
 「予習していた方が授業は理解しやすい?」
 「私は理解しやすいです。私はそこまで理解力があるわけではないので」

 その後も王子は私に話しかけてきた。
 授業中、授業間の休み時間、昼休み。
 ことあるごとに話しかけられた。

 昼休みには彼から「昼食一緒にどうかな?」とまで誘われた。
 最初は断ることも考えたが、断る理由もないので了承。

 私はアーサー王子、ウィリアムさんとともに食堂へと向かう。

 その時に集まる周りの視線はいつもと違った。
 私に向けられる視線はいつも鋭い。みんなが睨んでくることが普通だった。

 だが、アーサー王子といる時のそれは痛々しくない。むしろ眩しかった。
 こちらに視線を向ける全員がキラキラを目を輝かせていた。
 
 ああ……これが王族というものなのか。
 と隣の王子を見て、私は一人感心していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました

九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」 悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。 公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。 「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」 ――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

この子、貴方の子供です。私とは寝てない? いいえ、貴方と妹の子です。

サイコちゃん
恋愛
貧乏暮らしをしていたエルティアナは赤ん坊を連れて、オーガスト伯爵の屋敷を訪ねた。その赤ん坊をオーガストの子供だと言い張るが、彼は身に覚えがない。するとエルティアナはこの赤ん坊は妹メルティアナとオーガストの子供だと告げる。当時、妹は第一王子の婚約者であり、現在はこの国の王妃である。ようやく事態を理解したオーガストは動揺し、彼女を追い返そうとするが――

【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな

みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」 タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...