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第1章 約束と再会編
第8話 一目惚れ(アーサー視点)
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僕、アーサー・グレックスラッドにはある計画があった。
それは僕の兄であるアレクサンダー・グレックスラッドと同じように、軍で功績を残そうという計画。
初めはルイ・ノースとして軍に入隊、そこで特訓する。
そして、ある程度力がついたら、本名で再入隊して、功績を残す。
そんな計画を立てていた。
だけど、入隊してすぐその計画は狂った。
というか、消えた。
僕はある少女に出会い、計画はおじゃん。
計画なんてどうでもよくなった。
少女と出会ったのは軍に入って間もない頃。
場所移動のため、僕は同僚とともに廊下を歩いていたのだが、正面から別の集団がやってきていた。
その集団の中に見えたのは上官の姿。
僕は敬礼し、上官が通り過ぎるまで静止。
その間、ちらりとその集団を観察する。
集団の人間はほとんど背の高い人ばかり。
だけど、1人だけ小さく子どものような子がいた。
「綺麗だ……」
小さな少女を見た僕は、気づけばそう呟いていた。
彼女は僕を気にも留めず、綺麗な銀髪を揺らしながら堂々と廊下を歩いていく。
少女はそれはそれは美しかった。
彼女の瞳は宝石みたいに輝く菫色で、髪は絹のように艶やかな銀髪。
少女の姿は天使のようだった。
そんな美しい彼女に、僕はいわゆる一目惚れというやつをした。
一目惚れした相手は公爵令嬢でありながら、軍に身を置く少女エレシュキガル・レイルロード。
しかし、彼女は美しいだけではなかった。
エレシュキガルは成人と同じくらい、いやそれ以上の巧妙な魔法技術を持ち、さらに剣術にもたけていた。
僕と同じ年齢にも関わらず、だ。
――――美しく、強い。
そんな彼女に、僕は一層惹かれた。
僕はまだ婚約していなかったので、彼女に婚約を申し込もうと考えた。
だが、今の僕は偽名を名乗っているし、ここは軍だし、今申し込むのはあまりよろしくないだろう。
でも……彼女と話してみたい。
どんな子なのか知りたい。
そう思った僕はエレシュキガルに猛アタック。
彼女を見かける度に話しかけた。
「エレシュキガル! おはよう!」
「…………」
だが、最初のエレシュキガルは冷たく煩わしそうな目で見てきた。
思えば、一時は冷たい態度を取られていたような気がする。
でも、諦めずに話しかけていたら。
「エレシュキガル、おはよう」
「おはよう、ルイ……今日も元気ね」
「そりゃあ、エレシュキガルに会えたからね」
「……そう。それはよかったわ」
エレシュキガルは徐々に僕に心を許してくれるようになって。
「え、抜け出すの?」
「そう。連れていきたいところがあるんだ。一緒に行かない?」
「……いいわよ」
僕とエレシュキガルは真夜中に駐屯地を一緒に抜け出すまで仲良くなっていた。
規律を重んじる彼女が一緒に抜け出してくれるとは思っていなかったので、ちょっとびっくり。
抜け出すのは悪いことなので、罪悪感はあった。
でも、正直嬉しかった。
それだけ彼女は僕に心を許してくれるようになっているということだから。
一方で、戦場でのエレシュキガルはどんどん功績を残していった。
先導する役を買って出て、前へ前へと進む。
きっと仲間の誰もが彼女の背中が頼もしく見えただろう。
エレシュキガルはそれでも鍛錬は欠かさなかった。
僕と出会った頃の彼女は、すでに軍で一目置かれるぐらいに強かったのだが、毎日の特訓は欠かさず行っていた。
僕もエレシュキガルにおいていかれたくない。
ずっと彼女の隣にいたい。
そう思った僕は、今まで以上に訓練に取り組んだ。
そうして、エレシュキガルと一緒に過ごし始めたある日こと。
「エレシュキガルはなぜ軍にいるの?」
ずっと気になっていたことをエレシュキガルに聞いた。
エレシュキガルは公爵令嬢で、本来なら軍にいるはずのない人間。
それなのに、彼女は軍人として働いている。
巧みな魔法技術を持っていることが理由なら、軍でなくとも他の場所で活躍できる。学園に入って研究者としてやっていけるだろう。
なのに、彼女は軍を選んだ。
だから、僕は気になった。
どうして彼女がここにいるのかを。
「母の仇を取りたいの」
僕の質問に、エレシュキガルは端的にそう答える。
彼女の瞳には怒りが満ちていた。いつになく感情的だった。
「それは……復讐ってこと?」
「そうね。復讐よ」
「…………」
母の仇、復讐…………。
そうか。エレシュキガルのお母様はすでにお亡くなりになっていたのか。
「私の母はね、惨い殺され方をしたの」
「惨い殺され方……?」
「そう。惨い殺され方」
しかし、エレシュキガルはそれ以上説明してくれない。黙ったまま。
エレシュキガルの瞳はどこか暗く、つらそうに見えた。
ああ、エレシュキガルはお母様の死について話したくないのか。
それは……そうか。つらいことだからね。
後で知ったことだが、『勝利の銀女神』と呼ばれたエレシュキガルのお母様は長期化している戦いを終わらせようと、魔王のところへ赴き、交渉しようとした。
だが、魔王からは『無礼にもほどがある』と言われ、死ぬまで痛めつけられてなぶられ、殺された。
「私はあの魔王を絶対許さない。絶対に殺す。地獄に落ちてもらう」
だから、彼女があんなにも怒るのは理解できた。
そんなことをする魔王は許せない。全く持って許せない。
僕はエレシュキガルの真意を聞くまで、もし相手と会話が通じるのなら、交渉して、終戦してもいいのでは?なんてことを考えていた。
でも、それは無理。
相手は終戦する気なし。人間と共存なんてものは考えていない。
なら、僕は――――。
それは僕の兄であるアレクサンダー・グレックスラッドと同じように、軍で功績を残そうという計画。
初めはルイ・ノースとして軍に入隊、そこで特訓する。
そして、ある程度力がついたら、本名で再入隊して、功績を残す。
そんな計画を立てていた。
だけど、入隊してすぐその計画は狂った。
というか、消えた。
僕はある少女に出会い、計画はおじゃん。
計画なんてどうでもよくなった。
少女と出会ったのは軍に入って間もない頃。
場所移動のため、僕は同僚とともに廊下を歩いていたのだが、正面から別の集団がやってきていた。
その集団の中に見えたのは上官の姿。
僕は敬礼し、上官が通り過ぎるまで静止。
その間、ちらりとその集団を観察する。
集団の人間はほとんど背の高い人ばかり。
だけど、1人だけ小さく子どものような子がいた。
「綺麗だ……」
小さな少女を見た僕は、気づけばそう呟いていた。
彼女は僕を気にも留めず、綺麗な銀髪を揺らしながら堂々と廊下を歩いていく。
少女はそれはそれは美しかった。
彼女の瞳は宝石みたいに輝く菫色で、髪は絹のように艶やかな銀髪。
少女の姿は天使のようだった。
そんな美しい彼女に、僕はいわゆる一目惚れというやつをした。
一目惚れした相手は公爵令嬢でありながら、軍に身を置く少女エレシュキガル・レイルロード。
しかし、彼女は美しいだけではなかった。
エレシュキガルは成人と同じくらい、いやそれ以上の巧妙な魔法技術を持ち、さらに剣術にもたけていた。
僕と同じ年齢にも関わらず、だ。
――――美しく、強い。
そんな彼女に、僕は一層惹かれた。
僕はまだ婚約していなかったので、彼女に婚約を申し込もうと考えた。
だが、今の僕は偽名を名乗っているし、ここは軍だし、今申し込むのはあまりよろしくないだろう。
でも……彼女と話してみたい。
どんな子なのか知りたい。
そう思った僕はエレシュキガルに猛アタック。
彼女を見かける度に話しかけた。
「エレシュキガル! おはよう!」
「…………」
だが、最初のエレシュキガルは冷たく煩わしそうな目で見てきた。
思えば、一時は冷たい態度を取られていたような気がする。
でも、諦めずに話しかけていたら。
「エレシュキガル、おはよう」
「おはよう、ルイ……今日も元気ね」
「そりゃあ、エレシュキガルに会えたからね」
「……そう。それはよかったわ」
エレシュキガルは徐々に僕に心を許してくれるようになって。
「え、抜け出すの?」
「そう。連れていきたいところがあるんだ。一緒に行かない?」
「……いいわよ」
僕とエレシュキガルは真夜中に駐屯地を一緒に抜け出すまで仲良くなっていた。
規律を重んじる彼女が一緒に抜け出してくれるとは思っていなかったので、ちょっとびっくり。
抜け出すのは悪いことなので、罪悪感はあった。
でも、正直嬉しかった。
それだけ彼女は僕に心を許してくれるようになっているということだから。
一方で、戦場でのエレシュキガルはどんどん功績を残していった。
先導する役を買って出て、前へ前へと進む。
きっと仲間の誰もが彼女の背中が頼もしく見えただろう。
エレシュキガルはそれでも鍛錬は欠かさなかった。
僕と出会った頃の彼女は、すでに軍で一目置かれるぐらいに強かったのだが、毎日の特訓は欠かさず行っていた。
僕もエレシュキガルにおいていかれたくない。
ずっと彼女の隣にいたい。
そう思った僕は、今まで以上に訓練に取り組んだ。
そうして、エレシュキガルと一緒に過ごし始めたある日こと。
「エレシュキガルはなぜ軍にいるの?」
ずっと気になっていたことをエレシュキガルに聞いた。
エレシュキガルは公爵令嬢で、本来なら軍にいるはずのない人間。
それなのに、彼女は軍人として働いている。
巧みな魔法技術を持っていることが理由なら、軍でなくとも他の場所で活躍できる。学園に入って研究者としてやっていけるだろう。
なのに、彼女は軍を選んだ。
だから、僕は気になった。
どうして彼女がここにいるのかを。
「母の仇を取りたいの」
僕の質問に、エレシュキガルは端的にそう答える。
彼女の瞳には怒りが満ちていた。いつになく感情的だった。
「それは……復讐ってこと?」
「そうね。復讐よ」
「…………」
母の仇、復讐…………。
そうか。エレシュキガルのお母様はすでにお亡くなりになっていたのか。
「私の母はね、惨い殺され方をしたの」
「惨い殺され方……?」
「そう。惨い殺され方」
しかし、エレシュキガルはそれ以上説明してくれない。黙ったまま。
エレシュキガルの瞳はどこか暗く、つらそうに見えた。
ああ、エレシュキガルはお母様の死について話したくないのか。
それは……そうか。つらいことだからね。
後で知ったことだが、『勝利の銀女神』と呼ばれたエレシュキガルのお母様は長期化している戦いを終わらせようと、魔王のところへ赴き、交渉しようとした。
だが、魔王からは『無礼にもほどがある』と言われ、死ぬまで痛めつけられてなぶられ、殺された。
「私はあの魔王を絶対許さない。絶対に殺す。地獄に落ちてもらう」
だから、彼女があんなにも怒るのは理解できた。
そんなことをする魔王は許せない。全く持って許せない。
僕はエレシュキガルの真意を聞くまで、もし相手と会話が通じるのなら、交渉して、終戦してもいいのでは?なんてことを考えていた。
でも、それは無理。
相手は終戦する気なし。人間と共存なんてものは考えていない。
なら、僕は――――。
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