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第1章 約束と再会編
第49話 好敵手 前編
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王城から戻ってすぐにブリジット様と再会した私。
普段なら部屋にいるはずなのに、部屋にいなかった私を心配していたようで、事情を話すと。
「はぁ? 私のために睡眠を削るなんて二度としないでくれる?」
と怒られてしまった。
また、「自分の身ぐらい自分で守るわよ。あと、家のことは気にしないでちょうだい。お父様はきっと今の私に興味がないだけだから」と強く言われてしまった。
睡眠をしっかりとったことで、頭はすっきり。
結界も気にしなくていいので、いつものように、私はブリジット様と図書館の窓際にある席で勉強に励むことに。
最近のブリジット様は、魔法薬学に興味があるようで。
彼女の両脇には料理本と魔法回復関連の本が積み重なっていた。
「この魔法薬のことなんだけど、妖星砂を先に入れちゃダメな理由ってあるの?」
と自主勉中に、よく質問をされた。
軍にいたおかげか、多少の知識は持っている。
もちろん、分からない所もあって、その時はブリジット様と一緒に本を探して調べながら、研究している。
「もう少し効率的な回復薬……いえ、回復魔法を付与した料理を作ってみたいの。怪我の治癒だけじゃなくって、魔力回復もできるとかでもいいわね」
そう桃色の瞳を輝かせながら、話すブリジット様。
回復ができる料理………面白いかもしれない。
治癒を行う方法として、魔法以外には回復薬がある。
が、その回復薬の味はとても美味しいとは言えない。
苦いし、後味が本当に悪い。
でも、美味しくて料理なら、回復魔法が使えない状況でも、治癒ができる。
さらに魔力回復もできるとなると、自国だけでなく他国も欲しがる人がでてきそうなものだ。
「へぇ、面白いことしてんじゃない」
夏休みの間も変わらず引きこもっているマナミ様に、ブリジット様のアイデアを話してみると、興味を持ってくれたようで。
何かとブリジット様に冷たい目を向けていたマナミ様は、「今度あの子もここに呼んで。私が分かることがあれば、教えるわ」と言ってくれた。
そうして、充実した日々を送っていたある日。
「僕も一緒にいい?」
王城から戻ってきたアーサー様もいらっしゃるようになった。
ブリジット様も「殿下が望むのなら」ということで、3人で勉強している。
最初は口数を減らしていたブリジット様。
だが、それも最初だけで、自分からアーサー様にも話しかけるようになった。
彼女はアーサー様のことが好き。
それはなんとなく察した。
だけど、私は何も知らないフリをした。
それ以外に、どうすればいいか分からなかった。
★★★★★★★★
「ブリジット様、料理を作っていただけませんか。私も手伝いますので」
今日の午前中はアーサー様は不在。私とブリジット様の2人っきり。
だが、最近は勉強ばかりで。
毎日勉強をしているのも飽き飽きしてしまうのでないか?
と考え、私はブリジット様にそんな提案をしてみた。
「別にいいけれど」
「ありがとうございます!」
いつものブリジット様であれば「は? めんど」とかこぼしそうなものだが、今回は文句一つ言うことなく。
私に手を引かれるままに付いてきてきてくれた。
そして、サロンのキッチンへ到着すると、管理人に許可をもらい、さっそく準備を始めた。
今日作っていただこうと思っていたのは、ブリジット様が得意料理とされている、ハンバーグ。
材料はすでに発注しており、冷蔵庫やパントリーに置いていある。
私が材料をキッチンの一部に持ってくると、なぜかブリジットは顔をムッとさせた。
「ねぇ、あなたと私の分を作ればいいのよね? 量多くないかしら?」
「アーサー様がいらっしゃいますし、私は4人分くらいいただくので、5人分の量にしておきました」
そう答えると、ブリジット様は「は?」と目を見開いて驚いた。
「…………ああ、すみません。さすがに4人分は多すぎますよね。2人分にぐらいに減らして、余った材料は明日にでも食堂のおばさま方にお渡しします」
「いえ、私が驚いているのはそこじゃないわよ」
「え? では、なぜ驚かれたのです?」
「私は………てっきりあなたと自分の分を作ればいいと思っていたのよ。でも、アーサー様がいらっしゃる……そのことを事前に聞いていれば、食材探しからちゃんとやっていたのに」
「心配はいりません。ブリジット様はこだわると思っていましたので、最高品質の材料を用意いたしました。それに、ブリジット様のお料理であれば美味なことは間違いありません」
「フン…………食べたことないくせに」
結局、ブリジット様は「まぁいいわ」と呆れつつも、調理を開始した。
私は準備をするだけで、後はブリジット様に任せて料理する様子でも見ていようと思っていたのだが。
「せっかくだし、あなたもすればいいじゃない」
と誘われ、ブリジット様からいつの間にか用意されていたエプロンを渡された。
料理は不得意中の不得意。だが、ブリジット様という先生も隣にいる。
いつか教わろうとは思っていたし、いい機会かもしれない。
まぁ、ダメだなと思ったら、途中からブリジット様にバトンタッチしよう。
そう考え、私はブリジット様から受け取ったエプロンを身につけ、キッチンへ立つ。
「それで、何からすればいいのでしょうか?」
「え、あなたレシピ知ってるわけじゃないの? 材料は自分で用意したわよね?」
「それはそうなんですけど、作り方までは知りませんね。食材は食堂の方に何が必要なのか聞いただけなので」
そう答えると、ブリジット様は深い溜息をつかれる。
「図書館にいくらでも本があるでしょうに、あなたは全く…………そう言う時こそ、調べなさいよね」
あー。確かに調べればよかったかも。
でも、作り方を見たところで、私ができるとは限らないのよね。不思議なことに。
若干苛立ち気味のブリジット様はぐちぐち言いつつも、てきぱきと用意し始めた。
私も彼女の指示を受け、玉ねぎを切り始めてみたのだが。
「え。これ、なに?」
「玉ねぎです」
「それは分かるわよ。私が聞いてるのは、本当にみじん切りをしたのかって聞いてるの」
「え、みじん切りってこうじゃないんですか?」
「これはみじん切りわよ。シャーベット状になってるじゃない………」
そうなのか。
みじん切りというから、玉ねぎの跡形もなく切ればいいと思っていたのだけれど………。
どうやら、ブリジット様がいうみじん切りではなかったようだ。
再度ブリジット様からみじん切りを教わり、切っていく。
食材を混ぜ、ハンバーグの形を作っていたのだが。
「あなた、あんなに食べているのにこんなこともできないの?」
「す、すみません………私は食べるのが専門なので」
正直、料理は専門外。
私が調理しようとすると、せっかく用意した材料も塵となってしまう。
軍にいた頃では、料理を得意としていたルイに度々叱られることもあった。
私には才能がない。それは仕方がない。
でも、頑張ってみよう。
ハンバーグのタネを取り、ハンバーグの形を作っていく。
だが、難しく綺麗な形にならない。
「貸して。これはこうするの」
でも、ブリジット様から熱心な指導をもらいながら、何とか丸めて形を作り、フライパンで焼き。
「これでよしっと………」
2時間ほどかけてようやく完成した。
完成したブリジット様のハンバーグは高級店に出るようなぐらい綺麗な形。
今すぐ食べたいと思うほど香りもよく、美味しそうだった。
でも、私のハンバーグは………。
所々ボロボロで、焦げている部分もある。
ブリジット様のと比べると、みっともないハンバーグだった。
タネまでは一緒のはずなのに、なんでこんなに違うのかな。
と考え込んでいると、いつ間にかアーサー様がいらっしゃって、いつもの席でいただくことに。
もちろん、私が作ったハンバーグは自分でいただく。
「いただきます」
そうして、食べようとした瞬間、隣から熱い視線を感じた。
見ると、横の席に座っているアーサー様が、私の前のハンバーグたちにじっーと視線を向けていた。
「こっちはエレちゃんが作ったの?」
と言って、彼が指したのは私が作ったハンバーグ。
一つだけ仕上がりが違ったのが気になったみたいだった。
「はい、ブリジット様に教わりながら、作ってみました。ブリジット様のように綺麗にはできませんでしたが………」
「一口頂いてもいい?」
「いいですけど………」
味は美味しくはないです、と言う前に、アーサー様は一口だけ取り、ぱくりと食べてしまった。
アーサー様は黙ったまま。
ああ、美味しくなかったかな………。
「………………美味しい」
「え」
「美味しいよ、エレちゃんの作ったハンバーグ」
嘘でしょ。
料理を作ってルイに食べてもらうたびに、不味すぎて倒れてたのに。
後輩くんからは食材ゴミ変換機とか言われてたのに!
ブリジット様がほぼやってくれたとはいえ、私が作った料理を『美味しい』と言ってもらえるなんて!
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、ありがとうございます。よかったら、そのハンバーグ、もらってもいい?」
「はい、もちろんです!」
そして、私は形の悪い自分が作ったハンバーグをアーサー様に差し出した。アーサー様は時折笑顔で「最高だね」とこぼしながら、全て食べてくださった。
「ブリジット様、私のハンバーグ、美味しいと言ってもらえました! 全部ブリジット様のおかげです!」
「フンっ、良かったわね」
あまりの嬉しさに声を上げると、ブリジット様も笑ってくれて。
もう幸せいっぱいだった。
その後、アーサー様は用時があるということで、先に帰られた。
私とブリジット様で片付けをして終えると、2人で寮へと戻る。
寮へと繋がるレンガの道。
そこを照らすのは夕日の橙色の明かり。
見上げると、オレンジと青のグラデーションの空に、一番星が輝いていた。
ブリジット様も星を見つけたのか、立ち止まって顔を上げていた。
「やっぱり、あなたと一緒にいる時の殿下の笑顔が一番すてきね」
ブリジット様はそれ以上のことは言わなかった。
ただ彼女は笑顔だった。
普段なら部屋にいるはずなのに、部屋にいなかった私を心配していたようで、事情を話すと。
「はぁ? 私のために睡眠を削るなんて二度としないでくれる?」
と怒られてしまった。
また、「自分の身ぐらい自分で守るわよ。あと、家のことは気にしないでちょうだい。お父様はきっと今の私に興味がないだけだから」と強く言われてしまった。
睡眠をしっかりとったことで、頭はすっきり。
結界も気にしなくていいので、いつものように、私はブリジット様と図書館の窓際にある席で勉強に励むことに。
最近のブリジット様は、魔法薬学に興味があるようで。
彼女の両脇には料理本と魔法回復関連の本が積み重なっていた。
「この魔法薬のことなんだけど、妖星砂を先に入れちゃダメな理由ってあるの?」
と自主勉中に、よく質問をされた。
軍にいたおかげか、多少の知識は持っている。
もちろん、分からない所もあって、その時はブリジット様と一緒に本を探して調べながら、研究している。
「もう少し効率的な回復薬……いえ、回復魔法を付与した料理を作ってみたいの。怪我の治癒だけじゃなくって、魔力回復もできるとかでもいいわね」
そう桃色の瞳を輝かせながら、話すブリジット様。
回復ができる料理………面白いかもしれない。
治癒を行う方法として、魔法以外には回復薬がある。
が、その回復薬の味はとても美味しいとは言えない。
苦いし、後味が本当に悪い。
でも、美味しくて料理なら、回復魔法が使えない状況でも、治癒ができる。
さらに魔力回復もできるとなると、自国だけでなく他国も欲しがる人がでてきそうなものだ。
「へぇ、面白いことしてんじゃない」
夏休みの間も変わらず引きこもっているマナミ様に、ブリジット様のアイデアを話してみると、興味を持ってくれたようで。
何かとブリジット様に冷たい目を向けていたマナミ様は、「今度あの子もここに呼んで。私が分かることがあれば、教えるわ」と言ってくれた。
そうして、充実した日々を送っていたある日。
「僕も一緒にいい?」
王城から戻ってきたアーサー様もいらっしゃるようになった。
ブリジット様も「殿下が望むのなら」ということで、3人で勉強している。
最初は口数を減らしていたブリジット様。
だが、それも最初だけで、自分からアーサー様にも話しかけるようになった。
彼女はアーサー様のことが好き。
それはなんとなく察した。
だけど、私は何も知らないフリをした。
それ以外に、どうすればいいか分からなかった。
★★★★★★★★
「ブリジット様、料理を作っていただけませんか。私も手伝いますので」
今日の午前中はアーサー様は不在。私とブリジット様の2人っきり。
だが、最近は勉強ばかりで。
毎日勉強をしているのも飽き飽きしてしまうのでないか?
と考え、私はブリジット様にそんな提案をしてみた。
「別にいいけれど」
「ありがとうございます!」
いつものブリジット様であれば「は? めんど」とかこぼしそうなものだが、今回は文句一つ言うことなく。
私に手を引かれるままに付いてきてきてくれた。
そして、サロンのキッチンへ到着すると、管理人に許可をもらい、さっそく準備を始めた。
今日作っていただこうと思っていたのは、ブリジット様が得意料理とされている、ハンバーグ。
材料はすでに発注しており、冷蔵庫やパントリーに置いていある。
私が材料をキッチンの一部に持ってくると、なぜかブリジットは顔をムッとさせた。
「ねぇ、あなたと私の分を作ればいいのよね? 量多くないかしら?」
「アーサー様がいらっしゃいますし、私は4人分くらいいただくので、5人分の量にしておきました」
そう答えると、ブリジット様は「は?」と目を見開いて驚いた。
「…………ああ、すみません。さすがに4人分は多すぎますよね。2人分にぐらいに減らして、余った材料は明日にでも食堂のおばさま方にお渡しします」
「いえ、私が驚いているのはそこじゃないわよ」
「え? では、なぜ驚かれたのです?」
「私は………てっきりあなたと自分の分を作ればいいと思っていたのよ。でも、アーサー様がいらっしゃる……そのことを事前に聞いていれば、食材探しからちゃんとやっていたのに」
「心配はいりません。ブリジット様はこだわると思っていましたので、最高品質の材料を用意いたしました。それに、ブリジット様のお料理であれば美味なことは間違いありません」
「フン…………食べたことないくせに」
結局、ブリジット様は「まぁいいわ」と呆れつつも、調理を開始した。
私は準備をするだけで、後はブリジット様に任せて料理する様子でも見ていようと思っていたのだが。
「せっかくだし、あなたもすればいいじゃない」
と誘われ、ブリジット様からいつの間にか用意されていたエプロンを渡された。
料理は不得意中の不得意。だが、ブリジット様という先生も隣にいる。
いつか教わろうとは思っていたし、いい機会かもしれない。
まぁ、ダメだなと思ったら、途中からブリジット様にバトンタッチしよう。
そう考え、私はブリジット様から受け取ったエプロンを身につけ、キッチンへ立つ。
「それで、何からすればいいのでしょうか?」
「え、あなたレシピ知ってるわけじゃないの? 材料は自分で用意したわよね?」
「それはそうなんですけど、作り方までは知りませんね。食材は食堂の方に何が必要なのか聞いただけなので」
そう答えると、ブリジット様は深い溜息をつかれる。
「図書館にいくらでも本があるでしょうに、あなたは全く…………そう言う時こそ、調べなさいよね」
あー。確かに調べればよかったかも。
でも、作り方を見たところで、私ができるとは限らないのよね。不思議なことに。
若干苛立ち気味のブリジット様はぐちぐち言いつつも、てきぱきと用意し始めた。
私も彼女の指示を受け、玉ねぎを切り始めてみたのだが。
「え。これ、なに?」
「玉ねぎです」
「それは分かるわよ。私が聞いてるのは、本当にみじん切りをしたのかって聞いてるの」
「え、みじん切りってこうじゃないんですか?」
「これはみじん切りわよ。シャーベット状になってるじゃない………」
そうなのか。
みじん切りというから、玉ねぎの跡形もなく切ればいいと思っていたのだけれど………。
どうやら、ブリジット様がいうみじん切りではなかったようだ。
再度ブリジット様からみじん切りを教わり、切っていく。
食材を混ぜ、ハンバーグの形を作っていたのだが。
「あなた、あんなに食べているのにこんなこともできないの?」
「す、すみません………私は食べるのが専門なので」
正直、料理は専門外。
私が調理しようとすると、せっかく用意した材料も塵となってしまう。
軍にいた頃では、料理を得意としていたルイに度々叱られることもあった。
私には才能がない。それは仕方がない。
でも、頑張ってみよう。
ハンバーグのタネを取り、ハンバーグの形を作っていく。
だが、難しく綺麗な形にならない。
「貸して。これはこうするの」
でも、ブリジット様から熱心な指導をもらいながら、何とか丸めて形を作り、フライパンで焼き。
「これでよしっと………」
2時間ほどかけてようやく完成した。
完成したブリジット様のハンバーグは高級店に出るようなぐらい綺麗な形。
今すぐ食べたいと思うほど香りもよく、美味しそうだった。
でも、私のハンバーグは………。
所々ボロボロで、焦げている部分もある。
ブリジット様のと比べると、みっともないハンバーグだった。
タネまでは一緒のはずなのに、なんでこんなに違うのかな。
と考え込んでいると、いつ間にかアーサー様がいらっしゃって、いつもの席でいただくことに。
もちろん、私が作ったハンバーグは自分でいただく。
「いただきます」
そうして、食べようとした瞬間、隣から熱い視線を感じた。
見ると、横の席に座っているアーサー様が、私の前のハンバーグたちにじっーと視線を向けていた。
「こっちはエレちゃんが作ったの?」
と言って、彼が指したのは私が作ったハンバーグ。
一つだけ仕上がりが違ったのが気になったみたいだった。
「はい、ブリジット様に教わりながら、作ってみました。ブリジット様のように綺麗にはできませんでしたが………」
「一口頂いてもいい?」
「いいですけど………」
味は美味しくはないです、と言う前に、アーサー様は一口だけ取り、ぱくりと食べてしまった。
アーサー様は黙ったまま。
ああ、美味しくなかったかな………。
「………………美味しい」
「え」
「美味しいよ、エレちゃんの作ったハンバーグ」
嘘でしょ。
料理を作ってルイに食べてもらうたびに、不味すぎて倒れてたのに。
後輩くんからは食材ゴミ変換機とか言われてたのに!
ブリジット様がほぼやってくれたとはいえ、私が作った料理を『美味しい』と言ってもらえるなんて!
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、ありがとうございます。よかったら、そのハンバーグ、もらってもいい?」
「はい、もちろんです!」
そして、私は形の悪い自分が作ったハンバーグをアーサー様に差し出した。アーサー様は時折笑顔で「最高だね」とこぼしながら、全て食べてくださった。
「ブリジット様、私のハンバーグ、美味しいと言ってもらえました! 全部ブリジット様のおかげです!」
「フンっ、良かったわね」
あまりの嬉しさに声を上げると、ブリジット様も笑ってくれて。
もう幸せいっぱいだった。
その後、アーサー様は用時があるということで、先に帰られた。
私とブリジット様で片付けをして終えると、2人で寮へと戻る。
寮へと繋がるレンガの道。
そこを照らすのは夕日の橙色の明かり。
見上げると、オレンジと青のグラデーションの空に、一番星が輝いていた。
ブリジット様も星を見つけたのか、立ち止まって顔を上げていた。
「やっぱり、あなたと一緒にいる時の殿下の笑顔が一番すてきね」
ブリジット様はそれ以上のことは言わなかった。
ただ彼女は笑顔だった。
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