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第1ラウンド
第3話 絶望をあなたに
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ゲームスタートとして数分後――――私は城下町の建物の屋根の上を駆けていた。
今回放たれたゾンビは音がした方へと向かう習性があり、人間の声や大きな足音も彼らの耳に届く。私は足音が聞こえにくい屋根の上を走ることにした。
平坦な地面の方がいいの分かっているが、下にはゾンビがいる。無駄なエンカウントを防ぐためにはこれがいいだろう。
城下町の建物はほとんどが3階建て。それぞれの建物の屋根の高さに差はない。だから、建物から建物へと移動する時はジャンプでいい。
だが、大半の家は切妻屋根で、私の行く道は傾いているいるため、気を抜いては知っていると横へと滑り落ちていく。私の靴はヒールで決して運動用とは言えないが、半年前からいただいた履きなれていた。全力ダッシュをしても、まずつまずくことはないだろう。
また、周囲にの高さのある建物も見当たらないため、見通しはいい。プレイヤーが屋根に上っていたら、その子から殺りたいが……誰もいない。静かに輝く銀の月だけが空にいた。
私のスタート地点はフィールドの中央となる街の広場。東西南北に人が散らばっているいることが考えられるため、どこから向かってもかった。が、とりあえず音が聞こえた東へ走り出した。
「………………ん?」
走り続けていると、500m先から人の声が聞こえた。高い悲鳴ではあったが、女子ではない。
両手に持っていた配布された拳銃を握りしめる。背中にロープで縛って背負っていた鍬もいつでも取れるように、左手で構えた。
そう。この少し古びた鍬は誰かの家の裏に放置されていたもの。家の裏には小さな畑があったから、きっと家庭菜園でもするために使われていたのだろう。私はそれをパクッてきた。
ルールには街に置いてあるものを武器としての使用はOK。違反ではない。だから、あるものは存分に使わさせてもらう。
パクッてきた鍬はゾンビ対処で活躍させてあげたい。
もちろん、銃で対処した方が楽ではあるが、ゾンビは銃の音にも反応する。そのため、対処する時には音が抑えられる武器を使用しなければならない。鍬で殺しても音は出してしまうが、銃ほどではない。
とはいえ、極力ゾンビと対戦はしない。時間のロスだから。
本当はゾンビも殺していきたいけど……でも、呑気なことはできない。ゾンビさんに先に人間を殺されたら、私の獲物を減らされちゃうもの。
「みーつけた♡」
そうして、屋根の上を駆けていると、第1プレイヤーを発見。見つけたその男子生徒は、ゾンビと対峙していた。
「く、来るな! こっちに来るな!」
だが、彼がいる場所は行き止まりで、逃げ道にはすでにゾンビたちでいっぱい。さらにはバンバン発砲させていたため、音を聴いたゾンビたちが集まってきて、ゾンビらだけになっていた。
あの子の名前は確かマイケルだったかしら。
まぁ……あんなに目を涙でいっぱいにして……。
でも、もう大丈夫よ。
「私が楽にしてあげるわ」
私はマイケルの近くの建物まで来ると、屋根上から彼に声をかけた。
「やぁ、マイケルさん! お元気ですか!」
ゾンビに集中していたマイケル。彼は一瞬だけこちらを見てくれたものの、ゾンビが近くにおり目を離すことができず、ゾンビと向き合ったまま話してきた。
「ぼ、僕を助けてくれないか」
「ええ、もちろんですとも。助けてあげますわ!」
だが、私は下に降りない。右手に持った銃の照準を彼の頭に合わせていた。
「は? お前何をしているんだよ?」
「何を、ってあなたを助けようとしているんですの」
「は? なら、なぜ僕に銃を向ける!? 助ける気がないのか!?」
「そんなことはありませんわ。私はあなたを救うことしか考えていませんの」
私は思わずフヒっと笑みを漏らしてしまう。私の言っている意味がようやく分かったのか、マイケルさんはそれ以上質問してくることは無くなった。
ああ……そんな目をしちゃって……いいわね。
絶望を知った彼のアンバーの瞳にハイライトはない。もぬけの殻になったかのように、呆然としていた。
「――――マイケルさん、ご安心を。銃弾がなくなる前に、苦痛と恐怖から解放させてあげますわ」
トリガーを引いた瞬間、1つの銃声が響く。
私の銃から解き放たれた弾丸。それはマイケルの頭を貫通し、彼の眉間に1つの穴を開けていた。穴からたらりと血が流れだし、彼は「あ、あ、あ……」とどうしようもない声を漏らす。
徐々に彼の体から魂が消え、マイケルさんは力尽きたようにぱたりと倒れた。近くにいたゾンビたちは、マイケルさんの体に乗っかかるように一斉に集まる。
もうぐちゃぐちゃだった。
ゾンビが集まり過ぎて解体されてるマイケルさんの体は確認できなかったけど、身体をはちゃめちゃにされている肉の音だけは聞こえた。そうして、思う存分マイケルさんの体をぐちゃぐちゃミンチにすると、ゾンビたちは次の人間を探しに消えていく。
ゾンビがいなくなったことを確認すると、私は下に降りて彼の銃を回収。回収したマガジンを振ると、カランカランという金属同士が軽くぶつかり合う音がした。
もう一つのマガジンも同じ音がする……この感じだと両方とも4発分はあるかしら? うーん……もうちょっとある……10発分はあると期待したのだけどなぁ。
マイケルさんが乱発していたせいか、マガジンに入っていた弾数は随分と少ない。でも、ないよりもましなので、私は彼のマガジンを太もものマガジンポーチにしまった。
マイケルさんの頭を撃ったので、私の所持弾数は1発減。でも、彼のマガジンをいただいたおかげで弾数は増え、私の殺せる人数は23人。
時間制限がないとはいえ、獲物が他の人に取られるかもしれない。急がなきゃ。
私は屋根の上に戻り、辺りを見渡し、そして、耳を研ぎ澄ました。
………………遠くで銃声が聞こえるわ。
でも、マイケルさんほど激しくはない。発砲は連続しているものではなく、一定時間を置いて撃っているようだった。
東の方から聞こえる……1人かしら。
それとも、複数人でゾンビorプレイヤーと戦っているのかしら?
夜の冷たい風が私の銀髪をなびかせる。曇が風で吹き飛ばされ、満月の月が現れ、街の電灯だけが照らしていた暗い街に淡い青の光が広がり始める。暗さに慣れていた私だが、月明かりでさらに目が見えるようになった。
「さぁ、次は誰に会えるかしら?」
ひと伸びした後、次のターゲットに出会うため、屋根の上をダッシュで走りだした。
――――――――
明日は4~6話を更新いたします。4話は朝7時頃に更新いたします。
よろしくお願いします!<(_ _)>
今回放たれたゾンビは音がした方へと向かう習性があり、人間の声や大きな足音も彼らの耳に届く。私は足音が聞こえにくい屋根の上を走ることにした。
平坦な地面の方がいいの分かっているが、下にはゾンビがいる。無駄なエンカウントを防ぐためにはこれがいいだろう。
城下町の建物はほとんどが3階建て。それぞれの建物の屋根の高さに差はない。だから、建物から建物へと移動する時はジャンプでいい。
だが、大半の家は切妻屋根で、私の行く道は傾いているいるため、気を抜いては知っていると横へと滑り落ちていく。私の靴はヒールで決して運動用とは言えないが、半年前からいただいた履きなれていた。全力ダッシュをしても、まずつまずくことはないだろう。
また、周囲にの高さのある建物も見当たらないため、見通しはいい。プレイヤーが屋根に上っていたら、その子から殺りたいが……誰もいない。静かに輝く銀の月だけが空にいた。
私のスタート地点はフィールドの中央となる街の広場。東西南北に人が散らばっているいることが考えられるため、どこから向かってもかった。が、とりあえず音が聞こえた東へ走り出した。
「………………ん?」
走り続けていると、500m先から人の声が聞こえた。高い悲鳴ではあったが、女子ではない。
両手に持っていた配布された拳銃を握りしめる。背中にロープで縛って背負っていた鍬もいつでも取れるように、左手で構えた。
そう。この少し古びた鍬は誰かの家の裏に放置されていたもの。家の裏には小さな畑があったから、きっと家庭菜園でもするために使われていたのだろう。私はそれをパクッてきた。
ルールには街に置いてあるものを武器としての使用はOK。違反ではない。だから、あるものは存分に使わさせてもらう。
パクッてきた鍬はゾンビ対処で活躍させてあげたい。
もちろん、銃で対処した方が楽ではあるが、ゾンビは銃の音にも反応する。そのため、対処する時には音が抑えられる武器を使用しなければならない。鍬で殺しても音は出してしまうが、銃ほどではない。
とはいえ、極力ゾンビと対戦はしない。時間のロスだから。
本当はゾンビも殺していきたいけど……でも、呑気なことはできない。ゾンビさんに先に人間を殺されたら、私の獲物を減らされちゃうもの。
「みーつけた♡」
そうして、屋根の上を駆けていると、第1プレイヤーを発見。見つけたその男子生徒は、ゾンビと対峙していた。
「く、来るな! こっちに来るな!」
だが、彼がいる場所は行き止まりで、逃げ道にはすでにゾンビたちでいっぱい。さらにはバンバン発砲させていたため、音を聴いたゾンビたちが集まってきて、ゾンビらだけになっていた。
あの子の名前は確かマイケルだったかしら。
まぁ……あんなに目を涙でいっぱいにして……。
でも、もう大丈夫よ。
「私が楽にしてあげるわ」
私はマイケルの近くの建物まで来ると、屋根上から彼に声をかけた。
「やぁ、マイケルさん! お元気ですか!」
ゾンビに集中していたマイケル。彼は一瞬だけこちらを見てくれたものの、ゾンビが近くにおり目を離すことができず、ゾンビと向き合ったまま話してきた。
「ぼ、僕を助けてくれないか」
「ええ、もちろんですとも。助けてあげますわ!」
だが、私は下に降りない。右手に持った銃の照準を彼の頭に合わせていた。
「は? お前何をしているんだよ?」
「何を、ってあなたを助けようとしているんですの」
「は? なら、なぜ僕に銃を向ける!? 助ける気がないのか!?」
「そんなことはありませんわ。私はあなたを救うことしか考えていませんの」
私は思わずフヒっと笑みを漏らしてしまう。私の言っている意味がようやく分かったのか、マイケルさんはそれ以上質問してくることは無くなった。
ああ……そんな目をしちゃって……いいわね。
絶望を知った彼のアンバーの瞳にハイライトはない。もぬけの殻になったかのように、呆然としていた。
「――――マイケルさん、ご安心を。銃弾がなくなる前に、苦痛と恐怖から解放させてあげますわ」
トリガーを引いた瞬間、1つの銃声が響く。
私の銃から解き放たれた弾丸。それはマイケルの頭を貫通し、彼の眉間に1つの穴を開けていた。穴からたらりと血が流れだし、彼は「あ、あ、あ……」とどうしようもない声を漏らす。
徐々に彼の体から魂が消え、マイケルさんは力尽きたようにぱたりと倒れた。近くにいたゾンビたちは、マイケルさんの体に乗っかかるように一斉に集まる。
もうぐちゃぐちゃだった。
ゾンビが集まり過ぎて解体されてるマイケルさんの体は確認できなかったけど、身体をはちゃめちゃにされている肉の音だけは聞こえた。そうして、思う存分マイケルさんの体をぐちゃぐちゃミンチにすると、ゾンビたちは次の人間を探しに消えていく。
ゾンビがいなくなったことを確認すると、私は下に降りて彼の銃を回収。回収したマガジンを振ると、カランカランという金属同士が軽くぶつかり合う音がした。
もう一つのマガジンも同じ音がする……この感じだと両方とも4発分はあるかしら? うーん……もうちょっとある……10発分はあると期待したのだけどなぁ。
マイケルさんが乱発していたせいか、マガジンに入っていた弾数は随分と少ない。でも、ないよりもましなので、私は彼のマガジンを太もものマガジンポーチにしまった。
マイケルさんの頭を撃ったので、私の所持弾数は1発減。でも、彼のマガジンをいただいたおかげで弾数は増え、私の殺せる人数は23人。
時間制限がないとはいえ、獲物が他の人に取られるかもしれない。急がなきゃ。
私は屋根の上に戻り、辺りを見渡し、そして、耳を研ぎ澄ました。
………………遠くで銃声が聞こえるわ。
でも、マイケルさんほど激しくはない。発砲は連続しているものではなく、一定時間を置いて撃っているようだった。
東の方から聞こえる……1人かしら。
それとも、複数人でゾンビorプレイヤーと戦っているのかしら?
夜の冷たい風が私の銀髪をなびかせる。曇が風で吹き飛ばされ、満月の月が現れ、街の電灯だけが照らしていた暗い街に淡い青の光が広がり始める。暗さに慣れていた私だが、月明かりでさらに目が見えるようになった。
「さぁ、次は誰に会えるかしら?」
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よろしくお願いします!<(_ _)>
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