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鼻ピアス
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私はある恋愛小説の悪役令嬢になってしまった。
ということを朝起きるなり、すぐに気づいた。メイドの言うままに私はパジャマからミニドレスに着替えていたのだが、その間ずっと私の頭はフリーズ。
気づけば、食堂に来ていた。
「カレン。明日は舞踏会でしょう?? ダンスレッスンの方はどうかしら??」
そう聞いてきたのは金髪美女のママ。
私の向かいに座る彼女は用意された朝食を食べている。私の前にも同じトーストと目玉焼き、サラダが置かれていた。
私は恋愛小説の悪役令嬢 カレン・カートライトに転生してしまった。前世の世界と言ったらいいのだろうか、前の世界では私は凡人だった。大学を卒業した後、公務員になりたかったので地元の役場に就職。もちろん、職場がブラックというわけでもなく、充実した日々を過ごしていた。
楽しかったと言えば、楽しかった。
――――――――けど、何か足りなかった。
その何かを探しに有給休暇を使って旅行に行こうと、私は海外旅行を計画した。
旅行の日が楽しみ過ぎて、早く時間が進まないかと思っていた。
そして、旅行の日。
自分の車で空港まで移動した私。地方の空港なので国際空港よりずっと小さいが、私の目には大きく見えた。
ワクワク気分でチェックインし、搭乗時間になると飛行機に乗り込む。
周りの人は良く乗るのか、手慣れた様子で乗っていくが、久しぶりの飛行機に乗る私は緊張していた。
そこまではよかった。よかったのだけれど。
乗った飛行機は離陸直後は何もなかった。高度を上げ、安定し、シートベルト解除の許可が出た瞬間、異常が起きた。
ガガガっと地震のような横揺れが起き、CAさんの足元が揺らぐ。高度も下がるような感覚を感じ、飛行機内では悲鳴が響いた。
こ、これ…………墜落しちゃう??
CAさんの掛け声の言う通り、頭部を守るように頭を抱える。
しかし、数分後、私が乗った飛行機は海の中に墜落し、私の命は尽きた。
……………………尽きたはずだったのだが、こうして私は小説のキャラに転生。
嬉しいような、悲しいような。
両親にはまだ親孝行できていなかったから、悲しい気持ちの方が大きいかも。
フォークを持って、少しずつサラダを口に運ぶ。
「カレン、もしかしてダンスに自信ないの??」
絶世の美女と言ってもいいぐらいの美貌を持つカレンママは心配そうにこちらを見ている。
違うんです…………もちろんダンスなんてこれっぽっちも自信はありませんが、先に死んでしまったので両親に申し訳ないと思ってるんです。
と心の中で言う。ママの頭にはてなマークがつくだけなので声に出すことはしなかった。
「まぁ、カレンはあれほど練習したのだから、問題ないわ。胸を張って王子と踊ってちょーだい」
「え?? 王子??」
「そうよ。明日は王子がエスコートしてくれるって自分で言ってたじゃない??」
「あ、そうだっけ??」
そうだ。昨日、私の婚約者である王子と会って、エスコートしてもらえるようにしたんだ。
王子は小説のキャラで、主人公ちゃんと仲良くなり、最終的に私との婚約破棄をする。そんでもって、主人公ちゃんと結ばれハッピーエンドを迎える主要キャラ。
そんな王子にエスコートを何度も何度も頼み込んだんだよね。さすが悪役令嬢。
でも、前世を思い出し、この先の未来が大体見えてしまっている私には王子との婚約はいらない。
嫌な思いはしたくないし、婚約破棄するならできるだけ平和にしたい。
朝食を食べ終えた私は自室に戻る。
でも、せっかく若い女の子になったんだからはっちゃけたいな。
前世はテンプレのような学歴。大学生時代に大きくイメチェンすることもなかった。
1度だけピアスに憧れたっけ。
耳に穴をあけピアスしている同級生がいた。それを見て、したいなと思ったのだけれど、親があまりそういうのを許してくれるタイプじゃなかったもんだから、しないままだった。就職してからは面倒くさくなってしなかった。
この際、耳に穴を開けちゃおうか。
聞くところによると、耳だけでなく、鼻や口、へそなど一風変わった場所にピアスをする人がいるらしい。前世でもちらほらそういう人を見かけたこともある。
鼻かぁ……………………開けたらみんなドン引きしそう。
何かひらめきそうになり、声に出した。
「ドン引きする…………王子もドン引き」
私はぽんと効果音がなりそうな感じで手を叩く。
そうだ!! 私、鼻ピアスしちゃえばいいんだ!!
明日の舞踏会で、鼻ピアスで出席しちゃえば、こんなやつ嫁にできるかと思って、王子はとっとと婚約破棄してくれるはず。
よし、そうと決まれば鼻に穴をあけよう!!
そうして、次の日の夜。
私は大小さまざまの白いビーズが散らばった水色のドレスをまとい、王宮主催の舞踏会に来ていた。
―――――鼻ピアスをして。
隣には私の手をそっと握る王子。
彼は私の鼻ピアスに驚き少し戸惑いも見えたが、思いっきりドン引きをする―――――そんな様子はなかった。
おかしいわね……………………この世界ならこんなことしている令嬢を拒むもんでしょ??
会場に入るなり、私を見て人々がざわつく。
しかし、相変わらず嫌な様子を見せない王子。
一時すると、音楽が流れだし、皆が踊り出す。私も王子に誘われたので、踊ることにした。
ワルツのリズムに合わせ、ステップを踏んでいると、ようやく王子が鼻ピアスのことに触れてきた。
「ねぇ、なんで鼻にそんなものをつけているの??」
「それは……………………」
婚約破棄してもらえないかなと思って。
そんなことは言えず、もう1つの理由を話す。
「カッコいいかなと思ったんです。新たなことに挑戦してみたい性分で」
「へぇ…………僕は君が箱入り娘かと思ってたのだけど、面白いことをするね」
王子は何か言っていたようだが、後の方に言ったことは聞こえなかった。
どうせ嫌味だろうけど。
しかし、王子は今までに見たことない笑みを見せてきた。
こんな女と婚約破棄できる理由ができたから、嬉しがっているのね。私も比較的平和に破棄ができるのなら、大喜びよ。
「あの…………殿下は誰か思いの方はいらっしゃいますか??」
婚約破棄に持っていきやすいように質問をしてみたのだが、王子はコクっと首を傾げる。
「いや、いないけど…………」
「けど??」
「気になる人は目の前にいるよ。ちょっと変わったことをしてるね」
「目の前ですか…………」
つまり私の背後に主人公ちゃんがいるかもしれないのね。フフフ、彼女はもうここにいるのか、さすがね。
ちらりと後ろを見るが、既婚者しかいない。少女らしい令嬢はいなかった。
はて…………どこへ??
気を付けてステップを踏みつつ、あたりを見渡していると、王子が「ねぇ」と話しかけてきた。
「はい、なんでしょう??」
「目の前って意味分かってる??」
「えーと、近くにいるってことですよね。この会場にいるはずってことだから…………」
「ああ、もう…………」
「!!」
右側の場所を目で探そうとした瞬間、ぎゅっと体を抱きしめられた。
王子…………??
王子が私を抱きしめている。予想外のことに私の思考は停止していた。
「僕が気になっているのは君だよ、カレン」
「へ??」
「君は他の令嬢と違って、面白そうなものを持っているから」
イケメン王子はどこか色気を出しながら、甘い笑顔を向けてくる。
王子の胸から離れようとするが、彼はがっちりホールドし、解放してくれない。
え、えっと…………これはどういうことだ??
主人公ちゃんと婚約できそうな雰囲気になるまで、女避けを離さないぞってこと??
「アハハ…………」
王子の笑みに答えるように私は苦笑い。
比較的穏便な婚約破棄の道のりは長そう。
さて、次はどこにピアスをしようか。
ということを朝起きるなり、すぐに気づいた。メイドの言うままに私はパジャマからミニドレスに着替えていたのだが、その間ずっと私の頭はフリーズ。
気づけば、食堂に来ていた。
「カレン。明日は舞踏会でしょう?? ダンスレッスンの方はどうかしら??」
そう聞いてきたのは金髪美女のママ。
私の向かいに座る彼女は用意された朝食を食べている。私の前にも同じトーストと目玉焼き、サラダが置かれていた。
私は恋愛小説の悪役令嬢 カレン・カートライトに転生してしまった。前世の世界と言ったらいいのだろうか、前の世界では私は凡人だった。大学を卒業した後、公務員になりたかったので地元の役場に就職。もちろん、職場がブラックというわけでもなく、充実した日々を過ごしていた。
楽しかったと言えば、楽しかった。
――――――――けど、何か足りなかった。
その何かを探しに有給休暇を使って旅行に行こうと、私は海外旅行を計画した。
旅行の日が楽しみ過ぎて、早く時間が進まないかと思っていた。
そして、旅行の日。
自分の車で空港まで移動した私。地方の空港なので国際空港よりずっと小さいが、私の目には大きく見えた。
ワクワク気分でチェックインし、搭乗時間になると飛行機に乗り込む。
周りの人は良く乗るのか、手慣れた様子で乗っていくが、久しぶりの飛行機に乗る私は緊張していた。
そこまではよかった。よかったのだけれど。
乗った飛行機は離陸直後は何もなかった。高度を上げ、安定し、シートベルト解除の許可が出た瞬間、異常が起きた。
ガガガっと地震のような横揺れが起き、CAさんの足元が揺らぐ。高度も下がるような感覚を感じ、飛行機内では悲鳴が響いた。
こ、これ…………墜落しちゃう??
CAさんの掛け声の言う通り、頭部を守るように頭を抱える。
しかし、数分後、私が乗った飛行機は海の中に墜落し、私の命は尽きた。
……………………尽きたはずだったのだが、こうして私は小説のキャラに転生。
嬉しいような、悲しいような。
両親にはまだ親孝行できていなかったから、悲しい気持ちの方が大きいかも。
フォークを持って、少しずつサラダを口に運ぶ。
「カレン、もしかしてダンスに自信ないの??」
絶世の美女と言ってもいいぐらいの美貌を持つカレンママは心配そうにこちらを見ている。
違うんです…………もちろんダンスなんてこれっぽっちも自信はありませんが、先に死んでしまったので両親に申し訳ないと思ってるんです。
と心の中で言う。ママの頭にはてなマークがつくだけなので声に出すことはしなかった。
「まぁ、カレンはあれほど練習したのだから、問題ないわ。胸を張って王子と踊ってちょーだい」
「え?? 王子??」
「そうよ。明日は王子がエスコートしてくれるって自分で言ってたじゃない??」
「あ、そうだっけ??」
そうだ。昨日、私の婚約者である王子と会って、エスコートしてもらえるようにしたんだ。
王子は小説のキャラで、主人公ちゃんと仲良くなり、最終的に私との婚約破棄をする。そんでもって、主人公ちゃんと結ばれハッピーエンドを迎える主要キャラ。
そんな王子にエスコートを何度も何度も頼み込んだんだよね。さすが悪役令嬢。
でも、前世を思い出し、この先の未来が大体見えてしまっている私には王子との婚約はいらない。
嫌な思いはしたくないし、婚約破棄するならできるだけ平和にしたい。
朝食を食べ終えた私は自室に戻る。
でも、せっかく若い女の子になったんだからはっちゃけたいな。
前世はテンプレのような学歴。大学生時代に大きくイメチェンすることもなかった。
1度だけピアスに憧れたっけ。
耳に穴をあけピアスしている同級生がいた。それを見て、したいなと思ったのだけれど、親があまりそういうのを許してくれるタイプじゃなかったもんだから、しないままだった。就職してからは面倒くさくなってしなかった。
この際、耳に穴を開けちゃおうか。
聞くところによると、耳だけでなく、鼻や口、へそなど一風変わった場所にピアスをする人がいるらしい。前世でもちらほらそういう人を見かけたこともある。
鼻かぁ……………………開けたらみんなドン引きしそう。
何かひらめきそうになり、声に出した。
「ドン引きする…………王子もドン引き」
私はぽんと効果音がなりそうな感じで手を叩く。
そうだ!! 私、鼻ピアスしちゃえばいいんだ!!
明日の舞踏会で、鼻ピアスで出席しちゃえば、こんなやつ嫁にできるかと思って、王子はとっとと婚約破棄してくれるはず。
よし、そうと決まれば鼻に穴をあけよう!!
そうして、次の日の夜。
私は大小さまざまの白いビーズが散らばった水色のドレスをまとい、王宮主催の舞踏会に来ていた。
―――――鼻ピアスをして。
隣には私の手をそっと握る王子。
彼は私の鼻ピアスに驚き少し戸惑いも見えたが、思いっきりドン引きをする―――――そんな様子はなかった。
おかしいわね……………………この世界ならこんなことしている令嬢を拒むもんでしょ??
会場に入るなり、私を見て人々がざわつく。
しかし、相変わらず嫌な様子を見せない王子。
一時すると、音楽が流れだし、皆が踊り出す。私も王子に誘われたので、踊ることにした。
ワルツのリズムに合わせ、ステップを踏んでいると、ようやく王子が鼻ピアスのことに触れてきた。
「ねぇ、なんで鼻にそんなものをつけているの??」
「それは……………………」
婚約破棄してもらえないかなと思って。
そんなことは言えず、もう1つの理由を話す。
「カッコいいかなと思ったんです。新たなことに挑戦してみたい性分で」
「へぇ…………僕は君が箱入り娘かと思ってたのだけど、面白いことをするね」
王子は何か言っていたようだが、後の方に言ったことは聞こえなかった。
どうせ嫌味だろうけど。
しかし、王子は今までに見たことない笑みを見せてきた。
こんな女と婚約破棄できる理由ができたから、嬉しがっているのね。私も比較的平和に破棄ができるのなら、大喜びよ。
「あの…………殿下は誰か思いの方はいらっしゃいますか??」
婚約破棄に持っていきやすいように質問をしてみたのだが、王子はコクっと首を傾げる。
「いや、いないけど…………」
「けど??」
「気になる人は目の前にいるよ。ちょっと変わったことをしてるね」
「目の前ですか…………」
つまり私の背後に主人公ちゃんがいるかもしれないのね。フフフ、彼女はもうここにいるのか、さすがね。
ちらりと後ろを見るが、既婚者しかいない。少女らしい令嬢はいなかった。
はて…………どこへ??
気を付けてステップを踏みつつ、あたりを見渡していると、王子が「ねぇ」と話しかけてきた。
「はい、なんでしょう??」
「目の前って意味分かってる??」
「えーと、近くにいるってことですよね。この会場にいるはずってことだから…………」
「ああ、もう…………」
「!!」
右側の場所を目で探そうとした瞬間、ぎゅっと体を抱きしめられた。
王子…………??
王子が私を抱きしめている。予想外のことに私の思考は停止していた。
「僕が気になっているのは君だよ、カレン」
「へ??」
「君は他の令嬢と違って、面白そうなものを持っているから」
イケメン王子はどこか色気を出しながら、甘い笑顔を向けてくる。
王子の胸から離れようとするが、彼はがっちりホールドし、解放してくれない。
え、えっと…………これはどういうことだ??
主人公ちゃんと婚約できそうな雰囲気になるまで、女避けを離さないぞってこと??
「アハハ…………」
王子の笑みに答えるように私は苦笑い。
比較的穏便な婚約破棄の道のりは長そう。
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