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ルイーズ

いっそ壊して*

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 そう言うが否や、彼はたった今脱がせたばかりの裸の足の親指をぱくりと口に含んだ。

「!! やめて! そんな汚い!」

 まさかそんなことをするなんて! いくら何でもやめて! 恥ずかしさでパニックになって暴れるけれど、彼はわたしの足の指の股を舌で舐めながらにやりと笑った。

「そんなに暴れると大事な場所が丸見えになるよ?」
「だからってやめて! せめて洗ってからに……あああっ?」

 ぴちゃぴちゃと舐めしゃぶられて、指と指の間に舌を這わせられると、なんだか緩やかな快感が走り抜ける。すべての指と、指の股を舐めてから、彼はゆっくりと足を舐めていく。足首から脹脛、膝の裏、太ももと彼の舌が少しずつ体の中心に近づくごとに、くすぐったさと不思議な疼きで身体の奥から何かが溢れてくる。

「はっあああっ……はあっやめ……」

 彼の舌が太ももの際を舐め、ふいと離れていく気配に、わたしは思わず身を堅くする。

「脚を舐められただけで、ずいぶん濡れてるよ? ルイーズ?」
「なっ……やめ……」
「今度はこっちの足だよ」

 夫は反対側の膝上のガーターベルトのリボンを解き、やっぱりするするとストッキングを脱がして、もう片方の足の親指を口に含む。

「ふっ……汚い、汚いからやめっ……んっ……んんっ」

 夫はわたしの制止も無視して、指の股をれろれろと舐めまわしている。じんわりとした刺激に、腰が揺れ、身体の奥が熱くなってジンジンする。脹脛から太ももへとゆっくりゆっくり、近づいてくる彼の熱い舌を、いつしか心待ちにしている自分にわたしは愕然とする。

「ルイーズ……ヒクヒクしてる……待ちきれないっていう風に……」
「ち、ちがっ……そんなことっ……」
「じゃあ、ここでやめる? 僕は一晩中足を舐めてあげてもいいんだよ? どうする?」

 太ももの付け根あたりを舐められ、唇で食まれて、物足りない刺激に狂いそう。

「あっ……そんな……おね、おねがい……」
「舐めて欲しい? ルイーズ?」
「おね、お願い……焦らさないでぇ!」
「ふふふ……もうすっかりグズグズだ。泉みたいに溢れてる」

 彼の唇が待ち望んだ場所に到り、最も敏感なところをべろりと舐め上げられて、脳天まで届く刺激にわたしの目の奥が真っ白になる。

「ああっ、ンぁあ―――――っ」

 腰を上げるようにして全身を硬直させ、わたしは絶頂に震える。なのに彼の舌の責めは止まなくて、舐め上げられるたびにビクンビクンと体を大きくヒクつかせてしまう。

「ああっ、ああっ、あああっ……」
「すごい、ルイーズ、こんなに溢れて……」
 
 ずる、ぴちゃぴちゃ……いやらしい音を立てながら舐めしゃぶられて、わたしの理性がグズグズに融け墜ちていく。後はただ、意味をなさない嬌声を上げながら、快感に身を捩るだけ。

 彼がわたしの脚の間から顔を上げ、手の甲で口元を拭いながらわたしを見てにやりと笑った。

「気持ちよかった? ルイーズ」
「はあっ、はっ、はあっ……ああっ……」

 彼が体を起こし、腰を進めてくる。熱いものがわたしの中心にあてがわれ、散々、舌で嬲られつくした敏感な秘芽に先端をこすりつける。腰が蕩けそうな快感に、思わず悲鳴を上げてしまう。

「あああっそれ、だめぇええ……」
「ルイーズ、どうして欲しい? 僕が欲しい? それとも……」

 こすり付けられる場所から淫靡な水音が響き、お腹の奥がぐずぐずに溶けてしまいそうに熱い。さっきの快感ですっかり蕩けたわたしの脳が、もう待てないと思う。焦らさないで、全部欲しいの……。

 わたしは身体の疼きに耐えきれず、夫にはしたなくねだっていた。

「お願い、もっとちょうだい、もっと……むちゃくちゃにして、いっそ壊して……」
「ルイーズ……君は……」

 苦しかった。全部壊して欲しかった。
 過去の苦しみも、今の迷いも。――憎んでいるのか、愛しているのか、もう、どうでもいいの……。
 
 彼はわたしの両膝の裏をそれぞれ掴み、ぐいっと胸の方に押し付け、熱く滾る屹立が一気に入ってきた。

「あああああっ」
「くっ……はあっ……ルイーズ……」

 ぎちぎちと最奥まで満たされて、圧迫感にわたしがため息を零す。つながっている場所が溶岩のように熱くて、体の奥から溶けて、脳が灼き切れていく。

「動くよ、ルイーズ……」

 ゆっくりと彼が抜け出ていく感覚に、お腹の奥が切なさで疼く。いかないで、もっと奥まで満たして。

「ああっ……」

 抜け落ちる寸前で彼が動きを止め、それから一気に最奥まで叩きつける。パンッと肌の触れ合う音がして、身体が大きく揺すぶられる。続いてもう一度。内部が擦られる刺激に結合部からぞわざわした快感が立ち上る。彼の動きが速まるごとに、快感も深くなり、奥を突かれるリズムに合わせて、お腹の奥から声が零れ落ちる。

「あっ……ああっ、……あっあっああっ……」

 わたしの中を出入りする楔は熱くて鋭くて、わたしの心と体を引き裂いていく。こんな男、愛するまいと思う心とは裏腹に、身体はすっかり、彼の与えてくれる快楽の沼に囚われて抜け出せない。

 彼が回すような動きで浅い場所を掻き回せば、新たな刺激にわたしは身を仰け反らせる。天蓋の中に響く、恥ずかしい水音とわたしの喘ぎ声。なんて浅ましい。なのに気持ちよくて抑えられない。

「ああっ……ああっ」
「気持ちいい? ルイーズ、すごく締まる……」

 わたしの中を穿ちながら、夫がわたしを見下ろしてくる。黒髪を乱し、息を荒げ、端麗な眉を顰めて――彼もまた、わたしで快感を得ていると思うと、体の中が熱くなって彼を締め付けてしまう。

「ああっあっ……んあっ……いっいい……いいのぉっ……」
「ああ、僕も、僕もすごくいい……ルイーズ……君の中、熱くて……ううっ……」

 わたしの差し出した手を夫はそれぞれ握り、指を絡めるようにしてシーツに縫い付ける。そうして上体を起こしてさらに奥深くへと腰を進めてきた。わたしは快感に翻弄され、無意識に彼の腰に両足を絡める。

「ああっいい、……あなたなんて嫌いなの、でも、気持ちいいのっ……ああっ……」
「ルイーズ……」
「お願い、壊して、お願い……」
「ああ、ルイーズ、わかってる……」

 彼は深くねじ込んだ熱い欲望でわたしの最奥を何度も突き上げ、そのたびにわたしの脳裏に真っ白な火花が散る。

「全部、僕が悪い……ルイーズ、だから今はただ感じて……」
「ああっああっああっ……」

 何度も突き上げられ、わたしの奥がぐぐっと締まって彼の楔を感じる。ふしだらな自分の身体が恨めしい。しだいに遠くから深い深い波がやってきて、いつしかわたしのすべてを飲み込んで、快楽の彼方に押し流してしまう。

「あ、ああっ……あああっ……ア―――――っ」

 今まで感じたこともないほどの高みに押し上げられ、わたしはあられもない悲鳴をあげていた。

「ルイーズ……すごい……中で、イッたんだね……ううっくっ僕も……もうっ」

 夫の動きが激しさを増し、何度か腰を叩きつけて、とうとう弾ける。注ぎ込まれる熱い命の滾りを感じ、わたしは覆いかぶさってくる夫を抱きしめた。
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