【R18】陰陽の聖婚Ⅱ:銀龍のめざめ

無憂

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3、過去の瑕

無言の拒絶

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 翌朝、目を覚ますと、アデライードは彼の腕の中にはおらず、広い寝台の隅っこでシーツにくるまり、彼に背を向けて丸くなっていた。恭親王が彼女に触れてその白い頬に口づけようとした時。

 アデライードは敷布に顔を埋めるようにして、いっそう身体を丸める。

「アデラ……イード?」
(……あれ?拒否された……? もしかして、怒ってる?)

「あ、あの、アデライード、風呂に、入らないと……その……」

 アデライードはいやいやするように首を振り、彼から逃れるように寝台の上で縮こまるだけだ。

「もしかして……その、身体が、辛いのか?」
 
 恭親王が覗き込むのを、敷布に顔を埋めて頑なに視線を合わせようとしない。その頬に涙の跡があるのを見て、恭親王は胸を突かれた。

「あー、あの。アデライード、その……せめて風呂だけでも……私の、精がついていると、アンジェリカやリリアに何かあるといけないし……」

 ぎゅ、とアデライードの眉が顰められ、眉間に皺が寄る。のろのろと起き上がろうとするのを助け起こし、昨夜のことを謝罪しようとするが、やはりアデライードは恭親王を見ようとはせず、恭親王はタイミングを計ることができない。

(うう……だが、とりあえず反応はある。……ちょっと体調が悪いだけか……?)
「その、アデライード、浴室に運ぶよ?」
 
 そっぽを向いて唇を噛んでいるアデライードを抱き上げ、浴室に運び入れる。上目遣いに表情を窺いながら、いつものように身体を洗っていくが、アデライードは普段よりも身を固くし、結局最後まで恭親王を見ることはなかった。




 恭親王は扉一つ隔てた自身の寝室に戻り、待ち構えていたシャオトーズに手伝わせて身支度を整え、その日の簡単な予定を確認する。

「明日の正午より新年の宴でございますので、本日到着予定の方のうち、大鴻廬だいこうろ卿をはじめとする萬歳爺ワンスイイエよりのお使者がたと、お夕食を共にすることになっております。それからメイローズがこの後、こちらに参る予定でございます」

 大鴻廬卿はブライエ家のリュクス、つまり恭親王の母である皇后の兄であり、要するに彼の母方の伯父である。今回は皇帝からの正使を務めるが、どうせ母親から面倒くさい伝言でも言付かっているに違いなく、恭親王は無意識に眉を顰めた。

「この他、アデライード側の客人は?」
「レイノークス辺境伯閣下ご夫妻と、エイロニア侯爵、それからヴェスタ侯爵です。いずれも本日中のご到着で、アデライード姫は今夜はその方々とご夕食を取られる予定です」
「ヴェスタ侯爵?」

 恭親王が思わず聞き返す。ヴェスタ侯爵といえば、マニ僧都の実家でアデライードの母、ユウラ女王の父親の側の家系だ。

「来るとは聞いていなかったが……」
「はい。急に連絡が入ったとかで……正傅様が慌てていらっしゃいました。ご当主である侯爵と、その妹君がいらっしゃるとか」

 妹、と聞いて恭親王は嫌な予感がした。未婚の娘であれば、かなりの確率で彼の何人目かの妻にせよと言い出すに違いない。現侯爵がマニ僧都の甥であるとすれば、その妹ともども、アデライードにとっては従兄妹にあたるはずだ。

 恭親王はメイローズが到着したら書斎に寄こすようにと言い置き、渋い顔で朝食の準備ができているはずの、夫婦の居間に向かう。先ほどのアデライードの様子が気にかかる。

(昨夜のこと、謝った方がいいよな……何て言って謝ろう……)

 ――が。その日、朝食の席にアデライードは来なかった。

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