【R18】陰陽の聖婚Ⅱ:銀龍のめざめ

無憂

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16 シウリンの墓

制裁*

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 何しろ、恭親王はアデライードの声が出ないことを忘れていた。侍女たちが体調の整わないアデライードを庇って恭親王から引き離しているために、二人きりではまったく過ごしていないのだ。いわば侍女たちの心遣いが仇になって、恭親王はアデライードの声が出ない状態を実感できていない。だから、さっきから一言も声を発しないアデライードに対し、なぜ問いかけに応えないのかと、ひたすら苛立ちを募らせていく。

 ぶるぶると頭を振るばかりのアデライードに業を煮やした男は、左手で細い両の手首をひとまとめに掴んで寝台の上に押し付け、右手をアデライードの腰に回し、胸の下で結んでいる金糸を編み込んだ絹の腰紐を引っ張って解くと、素早く手繰り寄せてそれでアデライードの両手首を縛ってしまう。あまりのことに硬直するアデライードを後目しりめに、恭親王は巻き付ける形式の長衣を強引にはだけ、肩口のピンを引きちぎるようにして長衣をはぎ取った。透けるほど薄い絹の肌着一枚にされたアデライードは、いっそう恐怖で縮こまり、寝台の上でガタガタと震える。

「私には言えない話をしていたのか? アデライード」

 ぶんぶんと必死に首を振るアデライードの長い白金色の髪を唇でかき分け、白いうなじに唇を当て、強く吸い上げる。

「!!」

 びくん、とアデライードが身体を仰け反らすように反応するのを、さらに歯を立てて刺激を与える。腕の中の愛しい女が、彼の口づけに硬直して恐怖に震えていることに、彼は自身の乱暴な行いを棚に上げて傷ついていた。

 なぜ、こんなに怯えているのか。やはりさっき、フエルとやましい話を――。

 うなじに唇を寄せたまま、背後から二本の腕でアデライードを抱きすくめ、大きな掌で肌着の上から身体をなぞる。柔らかい胸のふくらみをぎゅっと握って、すでに立ち上がっている頂点の蕾を摘まんで強く引っ張り上げる。

 もう一つの手で腰をまさぐり、肌着を止めている紐を解ぎ、合わせ目から手を入れる。滑らかな肌に触れて、彼の欲望が膨張する。

 素早く革のサンダルを脱がせ、自身ももどかしく長靴を脱ぎ捨てて寝台の上に上がる。荒々しく自分の肩衣をはぎ取って寝台の下に投げ捨て、アデライードの細い腰を抱えるようにして、くるりとひっくり返すと、女は為すすべもなく背中から寝台の上に落ち、柔らかな褥の上で細い体が軽くバウンドした。縛った両手首を掴んで頭上に縫いとめ、顔の脇に手を置いて動きを封じる。驚愕に翡翠色の瞳を開いた蒼白な顔を見下ろして、恭親王は冷酷そうな唇の端を少しだけ上げた。

「いい眺めだな。全裸もいいが、スケスケの肌着が着崩れているのが、ものすごく淫靡だ」

 そう言って、右手で拘束した手首を頭上の枕に押し付けたまま、左手では薄い肌着の上からアデライードの身体の線をなぞり、ゆっくりと視姦するようにそのあられもない姿を見下ろす。アデライードは恐怖で肌を粟立たせ、二つの乳首はピンと尖って、薄い絹の肌着を押し上げていた。

「ここをこんなに立たせて……触ってほしいのか?」

 言いながら親指でその突起を押しつぶすようにすると、アデライードが涙で潤んだ瞳をぎゅっとつぶっていやいやと言うように首を振る。目尻から涙が溢れ、頬に流れ落ちる。普段なら、ここを愛撫すればアデライードは甘い声を上げるはずだった。――恐怖で、声も出ないのか。それともあくまでフエルを庇って、沈黙を貫くつもりなのか。

 彼が端麗な眉を顰めた時。

 凄まじい勢いで寝室のドアが叩かれ、廊下からメイローズが呼びかけた。

「わが主よ、ここを開けてください! 乱暴はなりません!わが主よ!」
「うるさい! 取り込み中だ、下がれ!」
「下がりません! 落ち着いてください、わが主よ! 声の出ない姫君に狼藉など、君子のなさることではございません!」
「声?!」

 あ、と思って恭親王が慌ててアデライードを見下ろす。今この時まで、完全に失念していたのだ。アデライードはもはや恐怖の限界にあるのか、過呼吸を起こしてはくはくと荒い息を吐いていた。

「そうだった、すまない、アデライード、忘れていた! 声……!」

 呼吸がうまくできずに苦し気に息を吸おうとするアデライードに、恭親王は慌ててその唇を塞いで息を送り込む。うなじを抱き込んでしばらく息を吹き込んで、アデライードの呼吸がようやく落ち着いたころ。

 恭親王の寝室につながるドアから、メイローズが走り込んできた。
 両手首を縛られ、半裸に剥かれたアデライードを見て絶句する。

「何ということを! こ、この! ケダモノがっ! 本当に情けのうございますっ! このメイローズ、陰陽宮の枢機卿として、今日という今日は、わが主に怒りの鉄拳をっ!」
「わあああ! 違う、違うんだ、忘れてたんだ! 聞いても何も答えてくれないから……!」
「問答無用!」

 ぼすっと顎に一発食らって、恭親王が寝台の上に仰け反ると、その隙にメイローズがアデライードに羽毛の上掛けを被せてその姿を隠し、素早く手首の戒めを解く。

「大丈夫でございますか、姫君?」
 
 メイローズの問いかけに、アデライードは両目に涙を溜めてふるふると首を振るだけだ。
 顎を押えて態勢を立て直した恭親王が覗き込むと、怯えたように目をそらしてしまう。
 
「その、本当に忘れてたんだ、声の出ないことを!わざとじゃない!」
「声の出る出ない関係なく、こんな無体な真似が許されるわけございませんでしょう! こんなクズ皇子にお育てした覚えはございませんよ! 本当に、情けなくて情けなくて、涙が出るっ!」
「悪かったって言ってるだろう!」

 激怒したメイローズは、最後逆ギレしかかった恭親王を容赦なくアデライードの寝室から蹴り出すと、アデライードとの接触を完全に禁じたのであった。

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