無自覚最強な魔導書士が図書館を作るお話

甘夏蜜柑

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女剣士、質問する

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 私の名前はレイラ。
 ギルド所属のCランク冒険者で、若手の中では有望視されている剣士。
 今回は昇級がかかったクエスト「ビッグボア討伐」のために、
 この魔の巣窟と言われるシデ山に来たのだが…。

「くそ、こんなところでキングボアに出くわすなんて…」
 絶望的な状況だった。
 ビッグボアの上位種が、猪の王キングボア。
 巨大な体躯、すさまじい突進力、刃も通さぬ皮膚。
 シンプルながら極められたその強さは、Bランク冒険者が徒党を組んでやっと勝てる相手、
 ましてこれからBランクになろうかという私が単独で戦うには分が悪すぎる。
「ええい、誰か、誰か助けてくれ!」
 ダメもとで叫ぶ。こんな山奥に誰かいるわけもあるまいに。

「大丈夫ですか!」
 現れたそのやさ男は、ファイヤーボールを信じがたい出力で放ち、一撃でキングボアを仕留めてしまった。

~~

「ニコライ、少しいいか?」
 助けられた翌日、町に行きたいと言うニコライを連れて、山道を歩きながら尋ねた。
「はい、なんでしょうか?」
 後ろをついて歩いているニコライが、にこにこしながら返事をする。町に行くのがよほど楽しみらしい。
「なあ、君は魔導書士と言ったが、それは本当なのか」
「本当ですが、何か?」
「いや、魔導書士といえば、…最弱の魔術職と聞いたことがあるのだが」
「え!そうなんですか?…ああ、じゃあ、私の修行は一体…」

 そう、そうなのだ。最弱の魔術職なのだ。
 魔導書-魔力を流すことにより、あらかじめ刻まれた既定の魔術を発動させることができる魔術道具。形状は一枚紙の巻物スクロールから書籍まで様々で、使用できる魔術は1つの道具につき1種類。なので、使用する魔術ごとに一々魔導書を持ち替えなければいけない、持っていたとしても開いて使用するので発動まで時間がかかる、書物という有限の物質に魔術を刻むため、発動できる魔術にも限界がある等々の理由のため、戦闘においては杖を使った魔術に劣るとされ、子供や非魔術職が初級魔術の練習に利用する位のものである。
 なので、そんな魔導書を専門に使う魔導書士と言う職業も、名前としてあるにはあると聞いたことがあるが、それは現在のように杖を使った魔術体系が確立するまでの話で、今では魔導書を使わないと魔法が使えないという蔑称となっているくらいだ。ましてやそれを職業として自ら名乗る奴なんて聞いたことがない。
 しかし、先の戦闘でのニコライは、そんな魔導書士の常識からは逸脱する。キングボアクラスの魔物を一撃で倒せる魔導書なんて聞いたことがないし、既定の魔法を発動させるだけのはずなのに、あのファイヤーボールの威力は、初級魔法であるファイヤーボールのそれをはるかに上回っていた。
 つまり、この男、なにかがおかしい。

「だがしかし、君のファイヤーボールの威力は一体何なんだ?」
「何なんだといわれましても、ぐっと力を込めて出しただけですよ。猪を焼くのにはやっぱり火力が大事ですからね!」
「猪というが、キングボアだぞ?あんなものを一撃で仕留めるなんて一体…」
「キングボア?随分たいそうな名前ですね?あの猪、家の周りじゃよく見かけるので、食卓によく上がっていましたけど。ああ、それよりも、魔導書士が最弱職なんて…」
 …だめだ、この男、自分の異常さに全然気づいていない。魔導書を撫でながらよよよと泣き出す始末だ。
「…まあ、最弱と言われましても、私にできることはこれくらいですしねぇ。気を取り直して町に向かいましょう!目指すは図書館です!」
 悲しんでいたと思ったら、いきなり立ち直ってずんずんと前を歩き出した。
 仕方ないので私もそれについていく。
 しかし規格外なこの男、町に連れて行って本当に大丈夫なのだろうか…。
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