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魔導書士、買い出しに行く

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 マルクを司書として雇って1週間。
 本に夢中になりやすいマルクは、図書館の仕事も一通り覚えてしまった。
 元々たいして利用者もいない図書館なので、今ではマルク一人で十分仕事が回せるようになっていた。
「これで図書館はマルクに任せられますね」
「き、恐縮です。館長は、魔導書の買い付けに、行かれるのですか?」
 館長、良い響きですね…。
「ええ、私の蔵書だけでは心もとないですからね。入門書や周辺領域の本を仕入れに行こうかと」
「し、仕入れはどこに行かれますか?王都なら、魔導アカデミーの、売店にも置いてあったかと…」
「ああ、そうなんですね。トネルコさんにも相談に行こうと思っていたので、その足で王都にも行ってみましょう。留守の間はお願いしますね」
「は、はいっ!!」
 そしてマルクに図書館を、ルルに工房を任せて、レイラさんと二人で仕入れの旅に出発した。

「これはこれはニコライ様。ようこそいらっしゃいました」
 商人ギルドに着くと、トネルコさんの出迎えで我々は奥の応接室に通された。
「いや、ニコライ様から納めていただく魔導書具、相変わらず大変な評判で。お陰様で当商会も大変な賑わいで」
 応接室にソファーに座ったトネルコさんが、ニコニコしながら話してくれる。
「いえいえ、こちらこそ、収入が確保できて大変助かっています」
「ええ、ええ、それは何よりでございます。なに、もっともっと売って見せますので!」
 トネルコさんの目が燃えている。目が硬貨の形になっているように見えた。
「とと、いけません、私ばかり話してしまって。今日はどういったご用向きでしょうか?」
「ええ、実は…」
 私は、入門用の魔導書や、周辺領域の書籍を仕入れたいことを伝えた。
「なるほどそうですか…。うちの商会でも書籍は扱っておりますが、魔導書となるとどうでしょうか?」
「取り扱いはありませんか?」
「いえいえ、全くないわけではないのですが、何せその、魔導書は元々需要がなく、商会内に詳しい者もおりませんので…。ニコライ様が魔導書具を作られるまでは、こんなに素晴らしい者とは思ってもみなかったものですので」
 トネルコさんがふむと考える。
「しかし、他ならぬニコライ様のご要望です。とりあえず、可能な限り仕入れておきましょう。先ほどの話ですと、王都にも行かれるのでしょう?その間に用意しておきますので、帰りにこちらに立ち寄って、お眼鏡にかなうものをお持ち帰りください」

 こうして、トネルコさんへの依頼を済ませた我々は、魔導アカデミーとやらがある王都へ向かった。
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