公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透

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ラカトリア学園 高等部

105 ゲームでない現実の絶望 2

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「はいはい。何でタイミングよくアンタが居るんだ?」

「話を聞いておったが……このような老いぼれにようがないんじゃな? ごふごふ」

 いかにも自分がか弱い老人ごとく、その咳が何ともわざとらしい。
 初めて会った日、俺に攻撃を仕掛けようとしていたときなんか、どうみてもまだまだ現役だろうに……。
 仮に何かしらの病気を患っている人間が、一人でこんな所にいるわけがないだろ。
 付くのならもっとマシな嘘をつけよ。

「学園長たるクソジジイが、俺のことをギルド長に話をしてくれるというのかよ」

「ごふごふ、お主は……ごふごふ、儂のような……」

「演技はもういい、学園長。はっきり言って今はかなり切羽詰まっている。この場だけは助けてくれ、頼む」

 そう言って頭を下げる。
 信用できる相手ではないのかも知れないが、こんな事をしているうちににも状況は悪くなる。

「何とも身勝手なやつじゃわい。そんな奴でも、ダンジョン攻略者としての意見を無下にはできないじゃろうて」

「なっ!?」

 学園長の口から飛び出した言葉に、ギルド長は驚きの声を上げている。
 突然そんな事を言われれば、誰だって驚くのだが……ギルド長は口角を上げ、二人して俺を見て笑っている。

「ふっ、ははは」

「ふぉふぉふぉ」

 何を企んでいるのかわからないが、この二人は絶対ろくな大人じゃないな……。
 俺のようないたいけな生徒をどうするつもりだ。

「学園長の言葉を信じないわけにはいかないな」

「そもそもなんでここにいるんだ?」

 学園長がここに来た経緯は、俺のことを相談していたらしい。
 学園の生徒にバカが居るのだがどうするべきかと……何ともひどい話だ。
 これだけの功績を残しているにも関わらず、ギルド長は俺を疑っていた。
 話を聞けば聞くほど……どれだけのことをしてきたのかを思い知らされた。

 多くの生徒が換金にやって来るものの、討伐された魔物の数は三十から百の間ぐらい。
 それを、千単位でやっているバカ。
 一回だけにとどまらず……明らかにおかしな魔物の名前。

「グレーターミノタウロス」

「何でそれを?」

 あのギルドから渡された腕輪には、どの魔物を倒したのか記録されるというものでもある。
 それは何の魔物を倒したか、何体の魔物を倒したかによって、支払われる金額も変わるためのもの。俺が何を倒していたのかというのも、当然理解されてしまう。

 話を聞くだけでここにある魔道具はオーパーツすぎる。ゲーム設定が生きてたり死んでたりと、無茶苦茶な世界だな。

「ここだけの話に留めてやる。お前は今何をしている?」

「話しなさい」

 ギルド長はともかく、学園長に何処までの権限があるのかわからない。
 だから話してしまっていいものかを考えてしまう。

「早急に金が必要なら、私が立て替えよう……とりあえず五十万あればよいか?」

「できることなら百万は欲しい」

「いいじゃろう……老後を控えた儂からむしり取るとは……ごふごふ」

 いや、さっき立て替えるって言ってたじゃねぇか!
 もうその咳をするなよ、ギルド長も何一緒になって演技に参加しているんだ!
 ムキムキがおかしいだろ!?

「スォークランダンジョンは暴走の危機にあった。その近くにある二つのダンジョンも同様だ。三階層辺りまでは殲滅したからある程度の時間は稼げている」

 俺に腕輪を外すように指示をされテーブルに置くと、それを持って部屋から出て行った。
 記録を見て俺が言っていることの証明にするつもりなのだろう。
 ダンジョンが広けばそれだけ集まる魔物の数も増えていく。
 表示される数字も……おかしなものになっている。

「信じるしかあるまい」

「そのようですね。しかし、三箇所も放置されているとは……」

「何の目的は不明のままだ。どんな理由にせよ……バセルトンは、危機的な状況だ」

 渡されたお金を受け取り、ギルドの窓を開けた。

「なぁ、爺さん……あれは何だ?」

「さぁ、のぅ。空を飛ぶ……か、やはりあやつはまともではないな」
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